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AIによる心臓弁膜症・逆流症の評価とリスク層別化:DELINEATE-Regurgitation研究(2025/4/26)

2025-6-2

AIによる心臓弁膜症・逆流症の評価とリスク層別化:DELINEATE-Regurgitation研究(2025/4/26)

弁膜症の一つである閉鎖不全症/逆流症は,診断の複雑さと患者の転帰への影響から,正確な診断および重症度判定が必要とされるが,その精度には現状ばらつきがある。この課題に対し,米コロンビア大学アービング医療センターらの研究チームは,経胸壁心エコー(TTE)画像を用いた深層学習システムで,逆流症の分類および僧帽弁逆流症(MR)の進行リスクの層別化が良好に行えるとの研究成果を発表した。本研究はEuropean Heart Journalに掲載されている。
本研究では,71,660件のTTE検査から得た1,203,980件のカラードプラ動画を用いて,時空間畳み込みニューラルネットワーク(Spatiotemporal Convolutional Neural Networks)の学習を行った。まず逆流症の分類予測において最適な動画抽出法を検討した結果,「単一ビューよりも複数ビュー」を用いて,「重度の逆流を示唆する上位3動画より,全動画について各々行った予測に動的な重み付けをして統合する」方が,総じて精度が高いことが明らかとなった。特に三尖弁逆流症においては,複数ビューによる精度向上が顕著であった。また,別のタスクとして,僧帽弁逆流症患者における2年以内の疾患進行リスク予測を行ったところ,正確なリスク層別化が可能であることが示された。本研究で作成したDELINEATE-MR-Progressionモデルによるリスクスコアに関して,内部テストセットのハザード比は4.1,外部テストセットでは2.1となった。
研究チームは「本モデルで各患者の進行リスクを予測することで,心エコー検査の間隔に関する臨床意思決定支援に役立てることが出来る。例えば,フォローアップの頻度を個別化することが可能となるだろう。また,近年研究が進むAIエコーと組み合わせることで,一貫した検査を実現したい」と述べている。

【参照論文】
Deep learning for echocardiographic assessment and risk stratification of aortic, mitral, and tricuspid regurgitation: the DELINEATE-Regurgitation study