2025-7-1

豪メルボルンの研究チームの研究で,脳卒中後に行う通常のMRI画像に人工知能(AI)を活用することで,無症候性の心房細動(AF)を非侵襲的に高精度で検出できる可能性が示された。AFは不整脈の一種で,脳卒中リスクを5倍も高めるとされる。AFは初期症状が現れずに脳卒中が発生するまで診断されない場合がよくあり,長時間の心拍モニタリングなどの従来のAF診断方法は費用や時間がかかるという課題があった。今回の研究成果はこの課題の解決策となり得る。
脳血管疾患ジャーナル「Cerebrovascular Diseases」に掲載された本研究では,電子カルテと各種検査結果からすでに脳卒中の確定診断を受けた235例(AF患者97例,非AF患者138例)の拡散強調画像(DWI)を用い,3D畳み込みニューラルネットワーク(ConvNeXt)を訓練させた。このAIモデルは高いパフォーマンススコアを示し(AUC0.81),このAIモデルがAFによる脳卒中と動脈硬化による脳卒中を区別する「妥当な分類能」を持つことを示した。さらに,Grad-CAM技術による可視化により,AIが脳梗塞病変部を的確に注視して判別していることも確認された。
「MRIはほとんど全ての脳卒中患者で取得されるため,追加負担なくAFの早期検出に役立ちうる」と著者は述べている。今後は多施設共同研究による外部検証が不可欠だが,本手法が実用化されれば,従来の心電図検査では見逃されがちだった無症候性AF患者の早期治療開始が可能となり,脳卒中再発予防や個別化医療の実現に大きく貢献すると期待される。
【参照論文】
Detecting Atrial Fibrillation by Artificial Intelligence-Enabled Neuroimaging Examination