2025-7-1

左室駆出率(LVEF)は心機能を反映する重要な指標である。これまでの予測モデルは,主に心エコー動画を入力に用いるものだったが,計算資源が限られる場では,モデルの利用が難しかった。この課題に対し,米Mayo Clinicらの研究チームは,心エコーの単一静止画(フレーム)からLVEFを推定する高精度なAIモデルを発表した。同研究はLancet Digital Healthに掲載されている。
本研究では,19,627人の患者の心エコー動画から得た473,803枚のフレームを用いて,2次元畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の一つであるResNet の学習を行った。動画データは,経胸壁エコーデータとポータブルエコーデータの2種があり,学習用フレームは,各患者の動画複数本から最大8枚のフレーム(オリジナルおよびデータ拡張したもの)をランダムに抽出したものを用いた。本モデルでLVEF推定タスクを行った結果,患者の各心エコー動画から1フレームのみを選択し,それぞれ算出したLVEF推定値をまとめて平均化することで,経胸壁エコーデータではAUCが0.90超,ポータブルエコーデータではAUCが0.85超という高い精度を示した。また,収縮末期時点のフレームを用いた際,より正確な推定値となることも明らかとなった。
研究者らは「データ削減をしてもなお,十分な精度が出ると示すことができた。また,計算負荷の高いビデオ処理のハードルが大幅に低減されることで,ポータブルエコーの有用性はさらに増していくだろう。迅速かつ正確な診断が求められるpoint-of-careの場で,本研究のようなモデルが普及すれば,患者ケアはより向上するはずだ」と述べている。今後はpoint-of-careの場でのコホートを用いた外部検証を行っていくことが求められる。
【参照論文】
Snapshot artificial intelligence—determination of ejection fraction from a single frame still image: a multi-institutional, retrospective model development and validation study