2020-4-20
“AIR Coils”“AIR Image Quality”“AIR Workflow”の
3つの技術でMRIに革新をもたらす“AIR”
●被検者の負担を軽減,画質・ワークフローの向上をもたらす“AIR”
2019年4月に日本国内でも発表されたMRI技術の“AIR Technology”。RSNA 2016でブランケットタイプの“AIR Anterior Arrayコイル”が参考展示されていた当初から大きな話題となっていたが,日本で発表されてからも事前の評判に違わず,臨床現場にメリットをもたらしている。世界各国から得ている高い評価に甘んじることなく,さらに臨床現場に革新をもたらすために,GEでは,検査・診断の質と効率を高め,生産性を向上するMRI製品・技術にAIRというブランド名を冠して開発,製品搭載を進めている。
AIRの技術は3つに大別される。被検者の負担を軽減する“AIR Coils”,画像のクオリティを改善する“AIR Image Quality”,ワークフローを向上する“AIR Workflow”の3つだ。このAIRのベースとなるのが新たなRF技術である第2世代のデジタル伝送技術“TDI(Total Digital Imaging)”と“AIRコイル”である。TDIは,受信信号チャンネルごとにA/D変換を行う。多チャンネルでの高効率の変換が可能で,アナログ伝送に比べてSNRを最大59%向上することが可能である。また,AIRコイルは,従来のフェイズドアレイコイルとまったく異なる素材である“INCAワイヤー”を採用。さらに,低電力の“e-Modeプリアンプモジュール”を組み合わせた。これによりコイル素子同士の干渉を抑えることができるため,コイルの配置にも自由度が生まれて,柔軟な設計が可能になった。このAIRコイルとして登場したのが,AIR Anterior Arrayコイルや“AIR Headコイル”である。
これらのAIRの技術により,GEのMRIは被検者の負担を軽減する。被検者の体格や撮像部位に応じたコイルセッティングが可能となり,従来検査が困難だった被検者でも撮像できるようになるなど,適応を拡大する。例えば,AIR Headコイルは,3cmのスペーサーを挿入することで,コイルの内径を拡張。顎の上がった被検者や酸素マスクを装着した被検者の撮像を行える。また,AIR Anterior Arrayコイルでは,体幹部・四肢関節などの部位や,小児から大柄な成人までといった体格にかかわらず,コイルを体に密着させて最適なセッティングが可能。重量も従来コイルと比較して60%以上の大幅な軽量化を実現した。
さらに,AIRコイルは,コイル素子同士の干渉を抑えたことによって,従来よりも大径のコイルを高密度に配置できるようになった。深部方向の均一性を保持して撮像するため,分解能とSNRの優れた画像を得ることが可能。空間分解能は従来コイルよりも約6倍向上し,また高い時間分解能によって,撮像時間を約50%短縮できる。加えて,画像再構成法の"AIR Recon"により,画像ノイズやFOV外からのさまざまなアーチファクトを低減。さらに,コイルを体に密着してセッティングできるため,広い感度領域を実現し,広範囲の撮像が可能となる。このほかにも,エレメント数の増加とgファクターの低減によって,パラレルイメージングファクターを高く設定できるようになり,拡散強調画像の歪みを抑えられる。
検査効率を向上するAIR Workflowの技術としては,GEの人工知能(AI)開発のプラットフォームである“Edison Platform”で開発された自動位置値決め機能“AIR x”がある。術前から術後のフォローアップまで,複数回にわたる検査においても再現性の高い撮像を容易に行える。また,セッティングをサポートする“AIR Touch”では,撮像範囲やパラレルイメージングファクターを考慮して最適なコイルエレメントを自動選択。セッティング作業の効率化と時間短縮を図れる。
●“SIGNA Works”の先進的なアプリケーションや高速撮像技術を搭載した「SIGNA Pioneer」
AIRコイルに対応するのが,3T MRIのSIGNA Pioneerである。SIGNA Pioneerは高いSNRを得られるRF技術のTDIのほか,画質均一性とSNR向上を実現する“DST(Digital Surround Technology)”,静磁場均一性0.27ppmにより広範囲撮像を可能にしたマグネット,超高効率グラジェントシステム“IGC(Intelligent Gradient Control Plus)”といった先進的なハードウエア技術を採用。これらの技術をベースにして実現した,アプリケーションや撮像技術などの共通プラットフォームSIGNA Worksを搭載している。
SIGNA Worksはアプリケーション,高速撮像技術,検査効率の3つの柱で構成される。アプリケーションとしては,動き補正,コントラスト拡張を行う“PROPELLER MB”,静音化技術“SILENT SCAN”,安定した脂肪抑制が可能な“FSE Flex”,非造影パーフュージョン撮像を行う“3D ASL”,均一なRF送信と感度補正が可能な“reFINE”,金属アーチフェクトを低減する“MAVRIC-SL”,肝硬度の評価を行う“MR Touch”,肝内脂肪の定量マッピングが可能な“IDEAL IQ”がある。
また,高速撮像技術については,圧縮センシングの“HyperSense”,局所撮像技術“HyperCube”,マルチバンドRF励起技術を用いて拡散強調画像・拡散テンソル画像を撮像する“HyperBand”を用意。オプションとして,1回の撮像で複数のコントラスト画像を得る“MAGiC”,MRAの撮像時間を短縮する“Zero TE MRA”を提供する。
検査効率のための技術としては,1秒間に6万2000枚を処理する超高速再構成前人の搭載や,コンソール上でVRやマッピング,フュージョンなどの解析処理を簡単に行える“READYView”がある。
これらの先進的な技術に加え,SIGNA Pioneerは被検者に優しい設計となっており,ガントリ開口径は70cm,寝台は56cmという広さを確保。さらに,設置面積は従来装置と比べ約25%の省スペース化となる29m2と,コンパクトな筐体に仕上げた。ほかにも,77kVAという電源容量や,スリープモード搭載による消費電力量最大50%削減など,経済性にも優れており,医療機関経営にも寄与する装置となっている。
(文責・編集部)
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