2025-4-28

ヘルスケア領域のソブリンAI開発事例などを共有した
「NVIDIAソブリンAIヘルスケアDay with Macnica」
「NVIDIAソブリンAIヘルスケアDay with Macnica」〔主催:(株)マクニカ,協力:エヌビディア(同)〕が2025年4月17日(木)にマクニカ品川オフィス(東京都港区)にて開催された。ヘルスケア分野のパートナーなどを対象としたイベントで,自国内にデータ処理の基盤を持ち,国内のデータを使ってAIを開発・運用するソブリンAIをテーマに,エヌビディアの取り組みや医療向けソブリンAIの開発,医療機関での構築事例,また,パートナー企業の取り組みなどの講演が行われた。
開会に当たって,マクニカの森 裕介氏が挨拶に立ち,同社の会社概要とエヌビディアとの取り組みについて紹介した。1972年に創業したマクニカは,多くのエンジニアを擁し,技術リソースを強みに半導体やセキュリティ,ネットワーク製品を主軸に,VDA(Value-Added Distribution)モデルとサービス・ソリューションモデルの2つのモデルで事業を展開している。エヌビディアの国内一次代理店として,ほぼすべてのハードウエア・ソフトウエアの製品を取り扱っており,近年は新規事業領域としてヘルスケアにも取り組み,エヌビディアとの連携を強化しつつAIヘルスケア事業に力を入れている。推論から学習までのトータルソリューションをワンストップで提供している点が特徴であり,独自のサービスとして,AIトライアルプログラムや構築サポート,ローカルLLM導入伴走サービスが紹介された。

森 裕介 氏(マクニカ)
続いて,NVIDIAのヘルスケア担当バイスプレジデントのキンバリー パウエル(Kimberly Powell)氏が「Digital and Physical AI Helps Write a New Chapter in Medicine—AIと医療の未来:デジタルとフィジカルの融合—」と題して,エヌビディアのヘルスケアにおける取り組みについてプレゼンテーションした。エヌビディアは,日本国内の医療機関や企業と連携し,国内のデータ,モデル,インフラを活用した医療ソブリンAIの実臨床への展開を推進している。パウエル氏は,AIエージェントやフィジカルAIの活用が,日本における高齢化の進行や医療従事者の減少といった課題の解決に貢献する可能性があると述べ,国内外の事例を交えてヘルスケアAIの取り組みについて解説した。AIエージェントは術後ケアや医療文書作成など,さまざまな業務の支援をめざして開発されており,医師の負担軽減につながっていることを韓国での成功例などを踏まえて紹介。またフィジカルAIについては,「NVIDIA Isaac for Healthcare」プラットフォーム,医用画像処理のための「NVIDIA MONAI」,医療機器にAIアプリケーションを実装する「NVIDIA Holoscan」の3つのソリューションを組み合わせることで実現すると述べ,パートナーが開発した多彩な実例を紹介した。

キンバリー パウエル 氏(NVIDIA)
続いて,国立情報学研究所所長の黒橋禎夫氏が「透明性の高いソブリン日本語医療LLMの開発」と題し,大規模言語モデル研究開発センター(LLMC)の概要やこれまでの成果を紹介した上で,戦略的イノベーション創造プログラム(SPI)で構築した基盤型日本医療LLMについて詳述した。オープンモデルとの性能比較の検証結果などを示し,開発過程が透明化された精度の高いLLMを構築できたと述べ,コーパスのライセンスに応じて構築した3モデルの社会実装,公開を進めていることを紹介した。

黒橋禎夫 氏(国立情報学研究所)
次いで,「オンプレミス型生成AIサーバーによる院内業務手順の簡素化」と題して,那須赤十字病院医療情報管理課課長の宮内昭広氏が講演した。同院では,患者と向き合う時間を生み出すために生成AIの活用をめざし,オンプレミスでAIサーバを構築。オープンソースを活用することでランニングコストを抑制し,AI環境構築手順を習得,ノウハウを院内に展開した経験を紹介し,漏洩リスクがなく,自然対話型で汎用性が高く使いやすい生成AIを構築できたことを報告した。
このあと休憩を挟みパートナーによる講演が行われ,富士通(株)(AIエージェント),SyntheticGestalt(分子基盤モデル),(株)ヒューマノーム研究所(遺伝子発現量基盤モデル),(株)EQUES(薬学分野・製薬業務特化型LLM),マクニカ(ローカルLLM)が開発事例を紹介した。

宮内昭広 氏(那須赤十字病院)

会場では機器展示も行われた
●問い合わせ先
エヌビディア合同会社
https://nvj-inquiry.jp/