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第6回「Rise Up CT Conference」が開催,CTモーションコレクション技術やフォトンカウンティングCTの最新動向などを共有

2025-7-28

会場(国立がん研究センター中央病院研究棟大会議室)とオンデマンド配信で開催

会場(国立がん研究センター中央病院研究棟大会議室)と
オンデマンド配信で開催

第6回Rise Up CT Conferenceが,2025年6月14日(土)に開催された。キヤノンメディカルシステムズ(株)の共催で代表世話人は石原敏裕氏(国立成育医療研究センター)が務め,会場(国立がん研究センター中央病院研究棟大会議室)とオンデマンド配信(配信期間:5月22日〜6月9日)で行われた。プログラムは,「CT装置情報提供」が2題,,「画論からのトピックス」3題,「アプリケーションソフトセッション」4題,「装置性能に関するセッション」3題,「Rise Up Lecture」が設けられた。開催の挨拶で石原氏は,「Rise Up CT Conferenceは,キヤノンメディカルシステムズのCTについて,そのハードウエアやアプリケーションのさらなる活用,臨床応用を目的に情報共有を行う場であり,最新の情報や工夫を共有して臨床に生かしてほしい」と述べた。

代表世話人:石原敏裕 氏(国立成育医療研究センター)

代表世話人:石原敏裕 氏
(国立成育医療研究センター)

 

最初にCT装置情報提供として,キヤノンメディカルシステムズの野口ひかり氏から「ITEM2025CT展示報告」があり,初出展されたマルチポジションCT「Aquilion Rise」や320列CT「Aquilion ONE / INSIGHT Edition」に搭載された「CLEAR Motion(Cardiac)」などが紹介された。続いて庄司友和氏(東京慈恵会医科大学葛飾医療センター)が,「小児CT被ばく低減プロジェクト(Part2:頭部領域)出荷条件の見直し」について,CT装置の出荷条件をDRLs2020の中央値を参考に設定することで線量低減を図ることと,その画質についての検証結果などが報告された。

野口ひかり 氏(キヤノンメディカルシステムズ)

野口ひかり 氏(キヤノンメディカルシステムズ)

 

庄司友和 氏(東京慈恵会医科大学葛飾医療センター)

庄司友和 氏(東京慈恵会医科大学葛飾医療センター)

 

画論からのトピックスでは,辻岡勝美氏(藤田医科大学)と瓜倉厚志氏(茨城県立医療大学)が座長を務め,「画論 32nd The Best Image」CT部門の入賞施設から3施設が講演した。上釜秀一朗氏(福岡リハビリテーション病院)は,「変形性股関節症に対する人工股関節置換術」として80列CT「Aquilion Serve」の3D Landmark Scanを人工股関節置換術の骨角度の計測などに適用した例を紹介した。西川秀仁氏(自治医科大学附属さいたま医療センター)は,「カテーテルアブレーション術前の心筋遅延造影が筋強直性ジストロフィーの心筋障害検出の契機となった症例」としてTime MIPのTimeAverage画像を用いて心筋遅延造影CT(LIE)の視認性を向上させたテクニックを紹介した。最後に,田北 諭氏(佐賀大学医学部附属病院)が,「4D bolus tracking法を用いたEndoleak評価」と題して造影剤の至適タイミングで撮影を行う技術として開発した4D bolus tracking法について解説した。

座長:辻岡勝美 氏(藤田医科大学)と瓜倉厚志 氏(茨城県立医療大学)

座長:辻岡勝美 氏(藤田医科大学)と
瓜倉厚志 氏(茨城県立医療大学)

 

上釜秀一朗 氏(福岡リハビリテーション病院)

上釜秀一朗 氏(福岡リハビリテーション病院)

 

西川秀仁 氏(自治医科大学附属さいたま医療センター)

西川秀仁 氏
(自治医科大学附属さいたま医療センター)

 

田北 諭 氏(佐賀大学医学部附属病院)

田北 諭 氏(佐賀大学医学部附属病院)

 

アプリケーションソフトセッションは,根宜典行氏(神戸大学医学部附属病院)と遠藤和之氏(東海大学医学部付属八王子病院)が座長を務めた。「CTEPH攻略! Subtraction Lungで見抜く新たな一手!」を講演した吉川健太氏(札幌医科大学附属病院)は,CTEPH(慢性血栓塞栓性肺高血圧症)に対してSURESubtractionを用いたヨードマップのサブトラクションを行うことで,経皮的肺動脈形成術(BPA)の治療効果予測や治療部位の選定が可能になることを紹介した。吉川氏は,肺血流ヨードマップの早期相と後期相をサブトラクションすることで描出される「仮想ペナンブラ」(BPAで肺血流の改善が期待できる領域)を用いることで,治療部位の選択が容易に行えると述べた。続いて,「救急医療におけるキヤノンアプリの活用とその実践例」を講演した三村尚輝氏(福山市民病院)は,Non-linear windowによるBone removal画像による不顕性骨折の描出,Mix-Addを使った造影不良症例への対応などのテクニックを紹介した。Non-linear windowでは,Bone removal画像のほかvirtual non calcium image(VNCa)などをdual energy CTではなく汎用装置で利用できること,また,Mix-Add(キヤノンのCTのアプリケーションであるAdd/Subを使った複数画像の加算)によるCE BoostのIodine Mappingの造影効果を増強する手法を解説した。次に田原琢朗氏(戸畑共立病院)が「闇雲を超えて:Spectral Scanが引き出す真価」を講演し,Aquilion ONE /INSIGHT Editionのrapid kV switching方式を用いたdual energy 撮影によるSpectral Scanの可能性を報告した。田原氏は,Spectral Scanの導入に当たって放射線科医との相談の上,領域と検査目的を明確にしてルーチン化することでdual energy撮影の本来の価値を診療科に提供できていることを症例を交えて報告した。最後に,「急性期脳梗塞診療におけるCTPfirst の臨床運用~時間短縮& 被ばく低減を目指して~」を講演した安達卓哉氏(杏林大学医学部付属病院)は,ベイズ推定法を用いた3Dワークステーション「Vitrea」の4D Brain Perfusionの有用性について解説した。安達氏は,同院におけるCTP firstの急性期脳梗塞診療のワークフローを紹介し,専用の撮影プロトコールや再構成条件を設定することでアクセスルートの把握まで含めた画像情報を短時間で提供できていることや,ベイズ推定法の特徴を生かした解析の方法について概説した。

座長:根宜典行氏(神戸大学医学部附属病院)と遠藤和之氏(東海大学医学部付属八王子病院)

座長:根宜典行氏(神戸大学医学部附属病院)と
遠藤和之氏(東海大学医学部付属八王子病院)

 

吉川健太 氏(札幌医科大学附属病院)

吉川健太 氏(札幌医科大学附属病院)

 

三村尚輝 氏(福山市民病院)

三村尚輝 氏(福山市民病院)

 

田原琢朗 氏(戸畑共立病院)

田原琢朗 氏(戸畑共立病院)

 

安達卓哉 氏(杏林大学医学部付属病院)

安達卓哉 氏(杏林大学医学部付属病院)

 

装置性能に関するセッションでは,長澤宏文氏(国立成育医療研究センター)と片岡由美氏(藤田医科大学)が座長を務めた。
最初に「新たに開発されたCLEAR Motion 技術によるモーションアーチファクト低減効果」を,桐生和馬氏(愛知医科大学病院)が講演。桐生氏は,ディープラーニングを用いたモーションアーチファクト低減技術であるCLEAR Motion(Lung)について,呼吸動作制御システムを用いた物理特性の検証結果を中心に報告した。検証の結果,CLEAR Motion(Lung)は胸部領域,心血管領域でモーションアーチファクトの低減効果が認められ,対象物の形状が静止状態に近づくことが検証された。一方でアーチファクトの低減率は対象物の大きさや移動距離,速度に依存することなども報告された。続いて「動く臓器への挑戦! Motion Correction 戦国時代を制せよ!」と題して講演した芳賀喜裕氏(仙台厚生病院)は,CLEAR MotionのLungとCardiacについて,物理特性や実際の臨床での活用例を含めて概説した。芳賀氏は,心電図同期のCLEAR Motion(Cardiac)では,βブロッカー使用の減少が期待でき,ハーフ再構成での対応が可能なため被ばく低減が可能になること,さらに0.275秒/回転や0.35秒/回転でも効果を発揮することから上位機種のみならず対応できると述べた。最後に,「高精細CT 時代の幕開け~ Aquilion PrecisionとPCD-CT の可能性と実力」について,石川和希氏(神戸大学医学部附属病院)が講演し,CTの進化における高分解能・高精細化に注目してAquilion PrecisionとフォトンカウンティングCT(PCD-CT)の課題と可能性について臨床例を含めて紹介した。CTに高精細化をもたらしたAquilion Precisionでは検出器素子の狭小化が課題となっている。PCD-CTでは,電気ノイズや幾何学的効率といった高精細CTでの問題をクリアしているが,一方でPulse Pile-upやCharge sharingなどの新たな技術的課題が生じている。石川氏は同院に導入されているAquilion PrecisionとPCD-CT(dual souce)でのATF,MTF,ノイズ特性などの結果を示して課題と可能性について言及した。

座長:長澤宏文氏(国立成育医療研究センター)と片岡由美氏(藤田医科大学)

座長:長澤宏文氏(国立成育医療研究センター)と
片岡由美氏(藤田医科大学)

 

桐生和馬 氏(愛知医科大学病院)

桐生和馬 氏(愛知医科大学病院)

 

芳賀喜裕 氏(仙台厚生病院)

芳賀喜裕 氏(仙台厚生病院)

 

石川和希 氏(神戸大学医学部附属病院)

石川和希 氏(神戸大学医学部附属病院)

 

Rise Up Lectureは,石原氏と宮下宗治氏(イーメディカル東京あかつきクリニック)が座長を務め,「Canon製 CZT-based PCD-CTの可能性」について中村優子氏(広島大学大学院 医系科学研究科 放射線医診断研究室)が講演した。中村氏は,同院で稼働しているプロタイプのCZT-based PCD-CT(キヤノンメディカルシステムズ)の評価を中心に,従来CT(EID-CT)との違いやPCDの特性,PCD-CTを用いた撮影の実際とEID-CTとの比較画像などを示して,CZT-based PCD-CTの現状を報告した。PCD-CTはEID-CTに比べて,その特性から空間分解能やエネルギー分解能の向上が期待できる。しかし,フォトンカウンティングディテクタでは,その特性からCrosstalk,Pulse Pile-up,Polarizationなどへの対応が必要であり,そのために検出器の素材を含めて特性を生かしたさまざまな開発が進められているのが現状だ。中村氏は,同院でのCZT-based PCD-CTの物理特性の検証結果や腹部や心臓などの臨床画像を提示し,課題はあるものの画質の改善や被ばく線量の低減などが期待できると述べた。

座長:石原氏と宮下宗治氏(イーメディカル東京あかつきクリニック)

座長:石原氏と宮下宗治氏
(イーメディカル東京あかつきクリニック)

 

中村優子 氏(広島大学大学院)

中村優子 氏(広島大学大学院)

 

●問い合わせ先
Rise up CT Conference事務局
http://riseupct.kenkyuukai.jp/