innavi net画像とITの医療情報ポータルサイト

ホーム

東京都立小児総合医療センターで小児用新型ドクターカーの運用を開始——遠隔医療システムを用いた病院との情報連携でスムーズな搬送体制を確立

2025-8-7

小児用新型ドクターカー(手前)を報道陣に披露(奥は新生児用ドクターカー)

小児用新型ドクターカー(手前)を
報道陣に披露(奥は新生児用ドクターカー)

東京都立小児総合医療センター(東京都府中市)は小児用新型ドクターカーを導入し,2025年8月1日(金)より運用を開始した。これに先立ち,7月31日(木)に報道関係者向けに説明会を行った。説明会には,山岸敬幸院長,救命・集中治療部集中治療科の齊藤 修部長,ウィーメックス(株)ヘルスケアIT事業部病院ソリューション部部長の小暮武男氏,女子美術大学アート・デザイン表現学科ヒーリング表現領域4年の沖津菜奈子氏と熊倉ひろ氏が登壇した。

2025年で開設15年を迎えた東京都立小児総合医療センターは,救命救急医療,高度専門医療,周産期医療を提供している。救急医療は北米型ERであらゆる患児を受け入れて診療を行っており,NICU,GCU(継続保育室),PICUなどを整えるほか,都内に4つある東京都こども救命センターの多摩ブロック(年少人口約48万人)指定施設として他施設から小児重篤患者の受け入れを行っており,小児用ドクターカーや新生児用ドクターカーを運用している。小児用ドクターカーは多摩地域の医療機関からの搬送だけでなく,航空機・新幹線を利用した患児搬送における空港・駅と病院間の搬送や,関東一円や中部・関西地域からも含めたECMO装着下の重症患児の搬送などに用いられている。
今回新たに導入された新型ドクターカーは,搬送リスクを軽減するため「Mobile PICU」をコンセプトに,重症患児の可搬性向上や負荷軽減,高度な医療処置が可能な環境,基地局との容易な連携が可能な機能・環境が整えられた。車両には,ストレチャースライド機構やエアサスペンション,10時間超のECMO搬送も可能なリチウムイオンバッテリーを搭載している。また,従来は搬送中のバイタル情報は紙で記録していたが,新型ドクターカーには生体情報モニタと連携した重症部門電子カルテ「ACSYS GO」(フィリップス)を搭載し,バイタル情報の電子化によりトレンドの把握が可能になった。さらに,遠隔医療システム「Teladoc HEALTH」(ウィーメックス)を搭載し,病院(基地局)とのリアルタイムの情報共有を可能とする。基地局側から操作可能な高性能カメラを車内に設置し,患児の容体や医療スタッフの処置状況など車内の様子を遠隔で把握できるほか,生体情報モニタや超音波診断装置と接続し,バイタル情報や超音波画像をリアルタイムに共有することができる。これにより,受け入れのための迅速かつ的確な準備・対応が可能になり,ドクターカーに同乗する医療スタッフの負担軽減にもつながると期待される。
また,車両外装のデザインは,同院と連携して院内の壁画やキャラクターデザインを制作している女子美術大学(東京都杉並区)の学生が担当した。同院のキャラクター「どんぐりくん」や動物のイラストをあしらい,患児が少しでも安心できるように配慮されている。

説明会で挨拶した山岸院長は,「当院は『すべての子ども達が笑顔になれるよう,最善の医療を行う』を理念に,24時間365日断らない診療をモットーに医療を提供し,適応外を除けばほぼ100%の救急車応需率を維持している。加えて,医療機関からの要請に応じてドクターカーで出向いて患者さんを搬送,こちらで治療するドクターカーを運用することで,東京都の小児医療の拠点としての役割を果たしてきた。本日,さまざまな機能を実装した新しいドクターカーをお披露目できることを嬉しく思うと同時に,子ども達の笑顔を守るという使命を改めて胸に刻みたい」と述べた。
齊藤部長は,同院における救急医療の状況やドクターカーの運用状況について説明し,ドクターカーに求められる性能・機能と従来のドクターカーの課題などについて述べた。そして,「Mobile PICU」をコンセプトに構築された新型ドクターカーの特徴を紹介し,そこに寄せる期待について語った。Teladoc HEALTHについて齊藤部長は,「画面を表示するモニタを前方と右側面に設置することで,どの向きで座っている医療スタッフもバイタル情報を確認しやすくなっている。また,従来は搬送時の情報伝達は携帯電話だけで,病院との情報連携は十分とは言えず,特に急変時など大変な時ほど病院との情報共有はできなかった。Teladoc HEALTHという革新的な情報伝達の仕組みが整えられたことで,診療の質の向上が促進されると期待している」と述べた。
説明会では,ウィーメックスの小暮氏によるTeladoc HEALTHの紹介,女子美術大学の沖津氏,熊倉氏によるデザインの紹介の後,新型ドクターカーのお披露目とデモンストレーションが行われた。

山岸敬幸 院長

山岸敬幸 院長

 

齊藤 修 部長(救命・集中治療部集中治療科)

齊藤 修 部長(救命・集中治療部集中治療科)

 

新型ドクターカーお披露目会の様子(左がウィーメックス・小暮武男氏,右2人が女子美術大学の沖津菜奈子氏と熊倉ひろ氏)

新型ドクターカーお披露目会の様子
(左がウィーメックス・小暮武男氏,右2人が女子美術大学の沖津菜奈子氏と熊倉ひろ氏)

 

さまざまな機器が搭載されたドクターカー車内。医療スタッフが6名まで乗車可能。

さまざまな機器が搭載されたドクターカー車内。医療スタッフが6名まで乗車可能。

 

車内天井に設置されたTeladoc HEALTHの高性能カメラ

車内天井に設置されたTeladoc HEALTHの高性能カメラ

 

Teladoc HEALTHのモニタは車内2面に設置され,どの向きに座ったスタッフからも見やすくなっている。

Teladoc HEALTHのモニタは車内2面に設置され,どの向きに座ったスタッフからも見やすくなっている。

 

デモンストレーションにおける基地局での表示イメージ。バイタル情報や超音波画像も表示でき,質の高い情報共有を実現する。

デモンストレーションにおける基地局での表示イメージ。バイタル情報や超音波画像も表示でき,質の高い情報共有を実現する。

 

車両外装には病院のキャラクターや動物のイラストをデザイン

車両外装には病院のキャラクターや動物のイラストをデザイン

 

 

●問い合わせ先
ウィーメックス(株)
https://www.wemex.com/