技術解説(GEヘルスケア・ジャパン)

2025年3月号

Cardiac Imaging 2025

3DStent─アンギオ画像による冠動脈ステントの3D表示とMSA計測を実現

小川 昌美[GEヘルスケアジャパン(株)Interventional & Surgery部Product Marketing Leader]

心血管インターベンションは絶えず進化している分野であり,臨床および運用の2つの観点において効率的であること,可能なかぎり低い線量で最適な画質を実現すること,といった課題は常にアップデートが求められる。「Allia IGS Pulse」(図1)は,これに応えるべく,心血管インターベンション治療に携わる医師の声を反映して設計した血管撮影装置「Allia IGS」シリーズの新製品である。Allia IGSシリーズは,医療従事者が患者の治療に集中し,より良い治療効果を得られるようサポートすることを主たるコンセプトとしている。本稿では,Allia IGS Pulseの新たな技術について述べるとともに,アンギオ画像による冠動脈ステントの3D表示と最小ステント面積(minimum stent area:MSA)計測を可能とした「3DStent」アプリケーションについて紹介する。

図1 Allia IGS Pulseの外観

図1 Allia IGS Pulseの外観

 

■いつでも快適な操作

例えば,血管撮影装置の更新後は,操作性や画質の好みに合わせた設定を探るべくしっかりと時間を確保するのが理想ではあるものの,日常診療においては,緊急患者の受け入れや術者の交代などもある中で,血管撮影を担うすべての術者が理想的な時間と環境を確保するのは困難であるのが現実ではないだろうか。このようななか,Allia IGSシリーズは,誰もがいつでも使いこなせる操作性をめざして設計された。

● カスタマイズ可能なホーム画面
Allia IGSのテーブルサイドには,本体動作用のコントロールパネルと,それ以外の多様な操作を行うタッチパネル(図2)がある。タッチパネルは「自分だけのホームパネル」がコンセプトで,血管撮影装置を使用するさまざまな診療科,術者,手技で個別に最適化された操作環境を提供するため,それぞれの術者が,自身向けにカスタマイズした条件にダイレクトにアクセスできるホーム画面にしている。術中に必要なX線条件,画質の好み,大型モニタのレイアウト選択肢などは,アイコン化されたアプリケーションの中にカスタマイズして整えられ,よく使う項目のみが表示されるようになる。これにより,術前の操作環境を迅速に立ち上げ,術中の快適性も大きく向上する。

図2 タッチパネルの「ホーム画面」

図2 タッチパネルの「ホーム画面」

 

● ダイレクト・アクセスパネル
テーブルサイドのコントローラのほか,検出器側面に配置したシンプルなデザインのボタン,ダイレクト・アクセスパネルを備えた。ファーストオペレータの立ち位置から,フラットパネルの上下動,Cアームの回転および寝台の上下動*1の操作が可能で,微調整にも適している。

■安定した高画質の提供:タフな環境でも高画質

高BMI患者への心血管インターベンションにおいては特に,X線条件の調整は悩むところではないだろうか。線量を上げれば一般的に画質は上がるものの,どこまで上げるべきか。それに合うX線条件の再調整を行った後,その条件に合わせた好みの画質の作り込みなどが必要であるが,手技を進めていく中でこれらの迷いはなるべく避けたい。また,新たな条件を作り込めば作り込むほど,保存する項目は増えていく。
大きな体格から小さな体格の患者まで安定した画質を提供するために,Allia IGS Pulseに採用した3つの技術を紹介する。

1.Allia IGS Pulseに採用したモノポーラX線管によって,心血管イメージは新たなステージへ
あらゆる体格の患者でより安定した画質を提供するために,Allia IGS Pulseには新たなモノポーラX線管(12.3MHUeff)を採用し,短いパルス幅と組み合わせて大きな体格の患者にもより優れた画質を実現した。
・透視用のパルス幅7.5 fps:より短いパルス幅で,血管やデバイスなどの動きをより鮮明に可視化
・3つの焦点(0.3,0.5,0.8 mm):透視/シネ撮影の両方のモードで使用できる3つの焦点により,細部まで詳細に可視化

2.AI技術を用いて開発された画像最適化技術:AutoRight PLUS
X線条件設定の自由度が上がると同時に,画質と線量の適切なバランスの組み合わせも増える。Allia IGS Pulseでは,画質と線量をリアルタイムで自動的に最適化する独自の機能「AutoRight PLUS」を備えた。患者の体格によらず,優れた画質を提供することができる。
AutoRight PLUSは,AI機能を搭載したイメージチェーンである。患者の体格や対象臓器,角度によって変わる等価患者厚をベースに,X線条件を決める7つのパラメータで,適切な線量における適切な画質を自動で調整する。
手技中にこれらのパラメータをそれぞれ調整する必要がなくなり,オペレータはタッチパネル上で強弱の選択だけですむようになった。

3.心臓に最適化された新しい画像
処理:MyIQ
適切なX線条件をコントロールした後,ユーザーは,手技のシチュエーションに合わせて画質の好みを設定するが,画質を決めるのにも複数の調整項目(造影剤のコントラスト調整,バックグラウンドの分離・抑制,ノイズ感度・低減,スムージングなど)があるのはご存じのとおりである。Allia IGS Pulseでは,これらを考慮した4種類のプリセットを用意し,手技中にワンタッチで変更できるようになった。この選択はタッチパネル上でワンタッチでコントロールでき,撮影,透視,DSAに対応している。

■ステント視覚化の新しい視点:3DStent

心血管インターベンションにおいて,術中のステント形状の評価にはアンギオ画像によるステント強調表示のほか,血管内イメージングが広く普及している。
3DStentは,Cアーム・モーション補正CT(C-arm motion compensated CT:CMCT)撮影技術によって,アンギオ画像から冠動脈ステントの3D表示とMSA計測を実現する。CMCT再構成には,2点マーカーとワイヤを認識することで,呼吸や拍動によるステントの動き補正が含まれる。この技術によって,手技中に回転撮影を追加するだけで,追加のデバイスや造影剤を使わずに,ステントの視覚化情報を追加する。
再構成画像は,「アドバンテージ・ワークステーション」を利用してわかりやすい画像表示と,画像上での計測機能を提供する。例えば,ステントの縦方向の拡張や,スライス断面ごとの測定,cross-sectionの描出などである(図3,4)。また,3D画像を立体的に評価することで,石灰化部位がステント拡張を妨げている状態も視認しやすくなる。これらの画面を大型モニタに表示することで,操作室内のチーム全員も視認しやすくなる。3DStentによるステント内腔計測値と光干渉断層(OFDI)による計測値の相関関係については,Brugalettaらによる報告がある1)

図3 3DStentの表示

図3 3DStentの表示

 

図4 3DStentによる計測

図4 3DStentによる計測

 

● 3DStentの運用
これまでのアンギオ画像による術中ステント評価は,一定方向からの二次元的な情報でしかなかった。3DStentは,アンギオ装置において初めて冠動脈ステントの3D評価を可能とした。すでに普及している血管内イメージングに代わるものではないが,海外ユーザーの声を
届けつつ,国内での臨床経験を積み上げていきたい。

*1 ダイレクト・アクセスパネルによるテーブル動作機能は20センチパネルシリーズには搭載していません。

販売名称:多目的X線撮影システム INNOVA
医療機器認証番号:21500BZY00327000
販売名称:アドバンテージ ワークステーション
医療機器認証番号:20600BZY00483000

●参考文献
1)Ruberti, A., Rinaldi, R., Occhipinti, G., et al. : Agreement and reproducibility between 3DStent vs. Optical Coherence Tomography for evaluation of stent area and diameter. Int. J. Cardiovasc. Imaging, 40(12): 2581-2589, 2024.

 

●問い合わせ先
GEヘルスケア・ジャパン株式会社
〒191-8503
東京都日野市旭が丘4-7-127
TEL:0120-202-021(コールセンター)
gehealthcare.co.jp

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