CT50th Anniversary X線CT 国内臨床稼働50年 ~ITEMで振り返るCTの進化

X線CTが国内で臨床稼働を開始してから,今年(2025年)で50年を迎える。X線CTは,英国のレコード会社であったEMI社の技術者Godfrey Hounsfieldが1967年から開発を開始し,1972年には世界初の臨床機として「EMI Scanner」が発売された。その後,わが国においては東芝社がEMI社とX線CTの販売契約を締結し,1975年8月,国内第1号機が東京女子医科大学に設置され,臨床稼働を開始した1)。EMI Scannerの開発や,国内への導入に至る経緯,東京女子医科大学にてEMI Scannerで撮影を行った最初の症例などについては参考文献2),3)に詳しいので,ぜひ参照されたい。
インナービジョン誌では,長年にわたりCTの技術的な最新動向を取り上げてきたが,2005年からはインナビネットにおいて国際医用画像総合展(ITEM)の特集を企画し,各社CT装置の最先端技術に迫ってきた。そこで今回,X線CTの国内臨床稼働50年を記念し,インナビネットのITEM取材レポートを再編して,この20年のCTの進化を振り返る。
【参考文献】
1)日本画像医療システム工業会,医用画像電子博物館,CT 詳細年表.
https://www.jira-net.or.jp/vm/chronology_xrayct_01.html
2)牧野純夫:EMIのCT導入余話.
*日本画像医療システム工業会, 医用画像電子博物館より
https://www.jira-net.or.jp/vm/data/1975060102/1975060102_01.pdf
3)小野由子, 他:日本でのCT 1号機―EMI Scannerと当時の神経放射線画像診断.
*日本画像医療システム工業会, 医用画像電子博物館より
https://www.jira-net.or.jp/vm/data/1975080101/1975080101_01.pdf
- 2005年:64マルチスライスCT(MSCT / MDCT)時代の到来によって,心臓CTの臨床活用への期待が高まる
- 2006年:世界初のDual Source CT(DSCT)が登場し,CT開発は新たな局面へ
- 2007年:CTに対する臨床ニーズの多様化に応える製品ラインアップやアプリケーションを展開
- 2008年:320列Area Detector CT(ADCT)の衝撃。四次元情報の収集によって動態診断が可能に
- 2009年:HDCTやDSCTの新機種などが登場し,画像の高分解能化,dual energyなどが開発の焦点に
- 2010年:低被ばくと高画質の両立をめざした逐次近似応用再構成法による被ばく低減技術が各社より登場
- 2011年:東日本大震災によりITEM中止。インナビネット・インナービジョンでは「Spring of 2011―モダリティWeb展示会 & 誌上展示会」を企画
- 2012年:コンパクト設計のCTの新製品が各社から発表されたほか,逐次近似応用再構成法の進化にも注目
- 2013年:ハードウエアの設計の見直しなどが進み,ハイエンド装置の技術を取り入れたコンパクトな装置が多数登場
- 2014年:高分解CTが進化を遂げ,最高レベルの分解能,回転速度,カバレッジを有する次世代CTが登場
- 2015年:逐次近似再構成技術の進化や,開発中の検出器など将来性を感じさせる技術に注目
- 2016年:dual energy imagingに革新をもたらす,常時スペクトラルイメージングを取得可能な二層検出器搭載装置が登場
- 2017年:空間分解能0.15mmを実現。従来の半分となる最小0.25mmスライス厚の新検出器を搭載した高精細CTが登場
- 2018年:ディープラーニングを応用した画像再構成技術が登場し,CT画像再構成は人工知能(AI)を活用する時代へ
- 2019年:画質改善や高精度なポジショニングなど,AIを活用した技術を前面に打ち出す展示が増加
- 2020年:新型コロナウイルス感染症の感染拡大によりITEM中止
- 2021年:AIを活用した撮影の自動化機能などが登場。CTへのAI技術の実装が進む
- 2022年:CT新時代の到来。世界初のフォトンカウンティングCTが登場し,従来CTの限界を超える次世代CTとして期待が高まる
- 2023年:ガントリ回転速度0.23s/rotを実現したCTが登場。AIを活用した自動化技術の進化にも注目
- 2024年:AI技術の搭載による臨床価値の向上をアピールするCTの新製品が多数登場