2022年:CT新時代の到来。世界初のフォトンカウンティングCTが登場し,従来CTの限界を超える次世代CTとして期待が高まる
2025-3-31
従来CTの限界を超える次世代のCTとして,各社がフォトンカウンティングCTの開発を進める中,シーメンス社はいち早く,RSNA 2021において世界初のフォトンカウンティングCT「NAEOTOM Alpha」を発表した。ITEM 2022が国内初披露とあって,高解像度化や被ばく低減,撮影時間の高速化などにおける従来CTとの違いなどに大きな期待が寄せられた。このほか各社からは,さまざまな自動化技術なども紹介された。
シーメンス社は,NAEOTOM Alphaを「CTを再定義する」システムと位置づけている。従来CTと比べて高解像度化,大幅な被ばくの低減,全検査でのスペクトラルイメージングの実現などが大きな特長であり,それを可能にするのが新開発のフォトンカウンティング検出器「QuantaMax detector」である。従来CTに搭載された固体シンチレーション検出器では,シンチレータでX線エネルギーに比例した強度の可視光を発生させ,フォトダイオードで可視光を電流に変換するという2段階の間接変換が行われる。そのため,変換によってノイズが発生したり,個々のX線フォトンのエネルギー情報が失われたりといったデメリットが生じるほか,シンチレータを区切る隔壁で空間分解能が決められるといった限界があった。これに対してテルル化カドミウム(CdTe)半導体を用いたフォトンカウンティング検出器では,半導体でX線フォトンがエネルギーに比例した多数の電子正孔対を発生させ,電子をピクセル化された陽極へ引き寄せてエネルギーごとに個々にカウントする。この仕組みにより,X線は電流に直接変換されるためノイズが生じず,フォトンごとのエネルギー値を計測でき,かつ隔壁が不要なため空間分解能を向上させることが可能となっている。
フォトンカウンティング検出器は,2012年に子会社化した日本の(株)アクロラド(沖縄県うるま市)との共同開発により実用化に至った。アクロラド社は,検出素子の開発だけでなく素子の原料であるカドミウムとテルルの開発・製造から手掛ける唯一の半導体メーカーで,CdTeを用いたフォトンカウンティングCTの製品化をめざすシーメンス社と2005年から共同研究を開始。原料高純度化技術と結晶成長技術の改良で,CTのX線環境で検出感度が低下する出力ドリフトの低減に成功し,シリコン半導体検出器よりも検出感度の高いCdTe検出器を実用化した。2014年から米国国立衛生研究所(NIH)などに第一世代のプロトタイプを導入,2019年からは改良した第二世代のプロトタイプをメイヨークリニックなどに導入し,全世界で6台のプロトタイプで研究を推進。100編を超える学術論文に支えられたエビデンスを得て,満を持しての上市となった。すでに欧米で20以上(取材当時)のシステムがインストールされ,臨床での活用が始まっている。
NAEOTOM Alphaは,体軸方向6cm幅のQuantaMax detector を搭載し,最大ピッチ3.2,66msの時間分解能(ハーフ再構成)を有するDSCTである。X線管には,最大1300mAの管電流出力が可能な「Vectron」を搭載し,被ばく低減技術「Tin filter technology」も採用されている。ガントリ開口径は82cmと大きく,耐荷重最大307kgの寝台は低い位置まで下げられるなど,ペイシェント・エクスペリエンスにも配慮されている。
フォトンカウンティングによる恩恵の一つである高解像度化においては,標準スキャンモードでスライス厚0.4mm,面内分解能0.24mm,高解像度スキャンモードでスライス厚0.2mm,面内分解能0.11mmを実現している。展示では,幅1.2mm程度のアブミ骨の骨折評価や蝸牛の先端までの描出,ステントの編み目形状の描出などの可能性について画像を供覧して紹介した。また,X線から電流への直接変換によりノイズが生じず,高い線量利用効率を有するため,従来CTと比べて線量を最大45%低減できる。一般的な副鼻腔撮影は,自然放射線による被ばく1日分と同等の超低線量(0.0063mSv)で撮影可能なことなどが紹介された。
従来CTではX線を光に変換する時点でエネルギー情報が失われていたが,NAEOTOM AlphaではX線フォトンのエネルギーレベルを計測することで,すべての検査でレトロスペクティブにスペクトラルイメージングが可能になる。骨折の評価では,カルシウムを抑制することで浮腫や出血を検出でき,新鮮骨折か否かを評価することができる。また,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のフォローアップにNAEOTOM Alphaを用いた例を提示し,低線量・高分解能画像による肺炎評価だけでなく,スペクトラルイメージングによる血流評価もでき,1回の撮影でより多くの情報を得て評価できることを紹介した。
NAEOTOM Alphaによるスペクトラルイメージングは,dual energy CTによるスペクトラルイメージングと比べて高画質化が可能なことに加え,Dual Sourceを用いた66ms(ハーフ再構成)の高時間分解能を実現している点も臨床上大きな意味を持つ。秒間72cmの広範囲CTAや息止め不可患者,高心拍,小児などのスペクトラルイメージングを実現し,診療における意思決定を支援する。展示では,スペクトラルイメージングと高時間分解能を生かした活用法として,冠動脈の石灰化部分を表現しない画像を再構成するPURE Lumen(純粋な内腔)を紹介し,重度石灰化症例でも冠動脈CTAが可能なことをアピールした。
先進技術を臨床で活用するためには使いやすさが重要だが,NAEOTOM Alphaにはシーメンス社がこれまでに開発してきたユーザー・エクスペリエンスを高める数々の機能が実装される。「myExam Companion」は,AI技術を用いて開発された検査ガイド機能で,オペレータが患者や検査に関する質問に答えると自動的に最適な撮影プロトコルが提案され,オペレータの経験によらずに適切な検査と一貫性のある結果の提供を可能にする。また,天井に設置する「FAST 3D Camera」は,赤外線カメラで患者を立体的にスキャンしてAIアルゴリズムで解析することで,撮影部位が中心となるように自動でポジショニングを行う。“GO technologies”は,ガントリ前面に備え付けられたタブレットやコンソールからアクセスでき,検査の一連の流れをサポートする技術。患者のセットアップから撮影,画像再構成,後処理・配信までのプロセスを標準化・簡素化することで,ワークフロー向上に貢献する。

世界初のフォトンカウンティングCT「NAEOTOM Alpha」

130万以上の検出素子を備えたQuantaMax detectorを世界で初めて展示

NAEOTOM Alphaではアブミ骨や蝸牛も明瞭に描出
フィリップス社は,2021年7月に国内で発売した「Spectral CT 7500」と64列128スライスCT「Incisive CT Premium」を展示した。Spectral CT 7500は2層検出器を搭載したスペクトラルCTで,循環器,救急,小児,高体重患者,オンコロジー,インターベンションなどのすべての領域で超高速スペクトラル検査を可能にする。2層検出器は,2016年発売の「IQon Spectral CT」から搭載され,Spectral CT 7500では新たに散乱線を低減するAnti-scatter gridを搭載したほか,2層構造の最適化による低被ばくや検出器幅の拡大による超高速撮影を実現した。また,ハードウエアも進化しており,秒間400mm以上の撮影が可能になったほか,寝台の耐荷重を307kg,ガントリ開口径を80cmとしたことで,あらゆる体型の患者や救急撮影に迅速に対応する。Incisive CT Premiumは,2019年に国内で発売した128マルチスライスCT「Incisive CT」に,新たにAIをベースとした4つの新機能を持つ「Precise Suite」を搭載した。AI画像再構成機能「Precise Image」は,最大80%の線量低減や85%のノイズ低減,60%の低コントラスト検出性の改善を実現する。また,心臓専用のモーションフリー画像再構成機能「Precise Cardiac」や,AIカメラを使用した自動ポジショニング機能「Precise Position」,自動ニードルガイダンスが搭載された先進インターベンションツール「Precise Intervention」により,画質や検査ワークフローを大幅に向上させる。なお,Precise CardiacはSpectral CT 7500にも搭載されている。

「Spectral CT 7500」の進化したハードウエア

「Precise Suite」の一つである心臓画像再構成機能「Precise Cardiac」
キヤノンメディカルシステムズ社は,2022年4月から販売を開始した80列CTの「Aquilion Serve」と,ADCTの「Aquilion ONE / PRISM Edition」を実機展示した。なかでも来場者の関心を集めていたのが,先進の自動化技術を搭載したAquilion Serveだ。キヤノン本社とのシナジーを生かして開発されたAquilion Serveでは,ガントリ内蔵カメラ,タッチパネルなどを用いた「Automatic Camera Positioning」,SilverBeam Filterを用いた「Automatic Scan Planning」,撮影後の画像表示レイアウトをプリセットできる「Automatic Hanging Layout」によって,一貫して安定した検査の提供をサポートする。これまでの80列CTと同様にディープラーニングを用いて設計した画像再構成技術「Advanced intelligent Clear-IQ Engine-integrated(AiCE-i)」を搭載して高画質で低被ばく検査が行えるほか,新開発の陽極熱容量5MHUのX線管球によって救急検査や心臓CT検査にも対応でき,コストパフォーマンスにも優れた装置となっている。Automatic Camera Positioningでは,患者が寝台に寝た後,ガントリのタッチパネルで撮影部位を選択。ガントリ内蔵カメラの映像を基に寝台の患者体位を検出し,撮影部位に適切なポジショニング位置を自動算出する。タッチパネル下のボタンを押すだけで寝台が撮影開始位置へ移動しポジショニングが終了する。また,Automatic Scan Planningでは,SilverBeam Filterを用いた低線量の「3D Landmark Scan」を行い,三次元データを含んだ位置決め画像を取得,このデータを基に撮影範囲を自動設定する。さらに,Automatic Hanging Layoutでは,部位や検査種別ごとに,MPR画像や3D画像などのレイアウトをあらかじめプリセットしておくことで,検査後に画像を自動で表示することができる。また,Aquilion ONE / PRISM Editionは,2021年11月にディープラーニングを応用した超解像画像再構成技術「Precise IQ Engine(PIQE)」やSilverBeam Filterによる新たな被ばく低減技術などを搭載してバージョンアップされた。ブースでは,高精細CT「Aquilion Precision」の画像を教師データにしたPIQEによってADCTの画像を高精細化できることを,臨床画像を含めて来場者にアピールした。

自動化技術を搭載した80列CTの新製品「Aquilion Serve」を展示

ガントリに設置されたタッチパネルパネル。
ガントリに内蔵されたカメラと組み合わせてポジショニングを自動化

バージョンアップされたADCT「Aquilion ONE / PRISM Edition」
GE社は,ITEM 2022に合わせて「Revolution Ascend」を発表した。日本のユーザーの意見を反映して,国内チームが開発を主導。製造も本社(東京都日野市)で行われており,日本の医療機関向けに最適化されたガントリ開口径75cmの64列CTである。ハイエンド装置のRevolution CTに採用された技術が惜しみなく投入されており,「Effortless Workflow」と呼ばれる検査の自動化技術や,Edisonプラットフォームで開発されたディープラーニング画像再構成アルゴリズムのTFIを搭載している。Effortless Workflowは,検査前から検査後の画像解析までをAI技術ならびに自動化技術でサポートする。検査前には,寝台上の天井に設置したAI技術を用いた「Deep Learningカメラユニット」により,目的の撮影部位がアイソセンタになるよう自動で高精度のポジショニングを行い,スカウト画像を基に患者個々に合わせた最適な撮影パラメータを提案してくれる。これにより画質の向上も図れる。また,撮影前に画像解析を設定しておくことで,スキャン後には自動で処理が行われる。検査時の作業工程を簡略化し,業務の効率化が図れ,ワークフローを向上。放射線部門のスタッフの業務負荷を抑え,検査を標準化して,常に質の高い画像の提供が可能となる。また,広いガントリと検査時間の短縮は被検者の負担軽減にもつながる。さらに,TFIにより,低線量でも高画質を得られるようになったことも,被検者のメリットである。加えて,TFIはノイズ低減により診断しやすい画像を得られるため,放射線科医の負担軽減にもなる。

日本のユーザーの声を取り入れて開発した「Revolution Ascend」

ポジショニングの自動化などを行うための「AI Deep Learning カメラユニット」

「SnapShot Freeze 2」はSHD治療に有用な情報を提供可能
富士フイルムヘルスケア社(現・富士フイルムメディカル社)は,ITEM直前に発売されたSCENARIAファミリーの最上位機種「SCENARIA View Plus」と,2021年12月にリリースされたSupriaファミリーの最上位機種「Supria Optica」の64列CT 2機種を展示した。両機種とも,AI技術を活用して開発された画像処理機能「IPV」,検査効率向上技術である「SynergyDrive」が搭載され,高画質で低被ばく検査が最適なワークフローの下で提供できる製品となっている。また,富士フイルムのAI技術である「REiLI」の適用によって,さまざまな機能がさらに強化されていることをアピールした。SCENARIA View Plusは,2018年に発売されたSCENARIA ViewにGPU搭載型コンソールを搭載したモデル。従来はCPUベースで処理されていた解析をGPUで行うことで,処理のスピードが向上し,解析機能が大きく向上した。GPUを活用した演算ユニットとして「FOCUS Engine」を搭載することで,IPV使用時の画像処理速度が従来の演算ユニットに比べて最大で2倍となっている。それを生かしたのが心臓CTにおける拍動によるブレを低減する技術「Cardio StillShot」である(オプション)。Cardio StillShotでは,RawDataで心臓全体の動きを四次元的に推定した「4D動きベクトルフィールド」を用いて,収集したデータの動きを補正することで,動きによる影響を抑えて高分解能の再構成画像が得られる。これによって,高心拍や心拍が不規則な患者でも動きのアーチファクトを低減した画像を得ることができる。Cardio StillShotを適用した場合,SCENARIA View Plusの0.35 s/rotで実効時間分解能は28msとなる。IPVを適用することでより低被ばくで高画質の画像データの取得が可能で,冠動脈だけでなく心臓の弁の描出なども期待される。Supria Opticaは,Supriaファミリーのオープン&コンパクトというコンセプトはそのままに,富士フイルムのAI技術であるREiLIで強化されたIPVやSynergyDriveといった機能を搭載した64列CTだ。IPVの適用で従来のFBPの画像処理に比べて最大83%の被ばく低減,90%の画像ノイズ低減を実現した。Supria Opticaでは,16列CTと同等の2MHUのX線管装置と電源容量30kVAが搭載されているが,IPVと組み合わせることで,換算値で最大12MHU相当の性能が得られ,ランニングコストを抑えながら幅広い検査に対応が可能になっている。

AI技術を活用した画像処理機能を搭載した「SCENARIA View Plus」

「Cardio StillShot」は心臓の動きを四次元的に推定して補正することで時間分解能の高い画像を提供

オープンでコンパクトな装置に先進のAI技術を搭載した「Supria Optica」