2018-12-13
「植込み型補助人工心臓システムHVAD™」
(承認番号:23000BZX00373000)
日本メドトロニック(株)は,重症心不全の治療に用いられる「植込み型補助人工心臓システムHVAD™」の製造販売承認を2018年12月6日に取得した。
植込み型補助人工心臓は重症心不全の治療選択肢のひとつで,心不全症状の改善,退院,そして社会生活への復帰を目指す治療に用いられる。植込み型補助人工心臓による治療は,適応する患者さんの命を延ばすことができると期待されている。国内では心臓移植までの橋渡しの治療として保険収載されている。国内における心臓移植の待機患者数は増えており,実際の移植数の伸びを上回ることから,待機期間が約3年と,諸外国よりも長い傾向にある。そのため,植込み型補助人工心臓の需要も増えている。
「植込み型補助人工心臓システムHVAD™」(以下,HVAD)は米国,ヨーロッパ他,47の国において累計17,000例以上の患者さんに使用された実績がある磁気浮上型の遠心ポンプによる補助人工心臓。ポンプ内部のインペラ(羽根車)は磁気および流体動圧浮上原理により軸部と非接触であるため,血球成分へのダメージが低減されると期待されている。大きな特長として,容積50立方センチメートル1,重さ160グラム(ドライブラインを除く)と小型の補助人工心臓でありながら,10リットル/分までの流量の循環補助が可能。この小型で心膜内に植え込むことが可能なデザインは植込み手技を容易にし,同時に患者さんの身体への負担の軽減を目指している。
植込み後は,専用モニタによりポンプのリアルタイムの流量と消費電力を波形グラフで表示できるため,患者さんの状況変化の察知に役立てることができる。また,直近30日間の作動状況の推移を解析レポートとして出すことができ,医療機関でのフォローアップ時の情報として利用することが可能。
大阪大学大学院医学系研究科心臓血管外科の澤芳樹教授は「欧米で広く普及しているHVADが国内でも使えるようになり,小柄な体型の方が多い日本人の患者さんには朗報です。HVADは小型なポンプであること,および通常,手術時間が比較的短いため,患者さんの体への負担を減らすことが期待できます。また,モニタにより作動状況を視覚的に確認できることは,植込み後の患者さんのフォローアップに非常に役立つと考えています」と述べている。
【植込み型補助人工心臓とは】
心不全患者さんの心臓を温存する形で心臓のポンプ機能を補う,または代替する医療機器。左心室に植え込んだポンプを体外のバッテリーで稼動させることで心機能の一部を補助する。心臓移植の待機患者さんに対して移植するまでの橋渡しに使われることは,BTT(BridgeToTransplantation,心臓移植へのブリッジ)と呼ばれる。日本では2011年4月から保険診療が可能になった。
【心臓移植について】
日本での臨床第1例目となった1968年のいわゆる「和田心臓移植」以後,日本においては臓器移植法(正式名称は「臓器の移植に関する法律」。1997年10月施行)まで心臓移植は行われず,本格的に心臓移植が始まったのは1999年になってからのこと。改正臓器移植法(2010年)の施行以降,増加傾向にあり,2017年は年間56件の心臓移植が実施2されている。一方で,現在700人以上の方が心臓移植希望の待機患者として登録されている3。
1 植込み後,心室外に占めるポンプ容積
2 臓器提供数/移植数(2017年)(公社)日本臓器移植ネットワーク
http://www.jotnw.or.jp/datafile/offer/2017.html
3 移植希望登録者数(2018年11月30日現在)(公社)日本臓器移植ネットワーク
https://www.jotnw.or.jp/datafile/index.html
●問い合わせ先
日本メドトロニック(株)
http://www.medtronic.co.jp/