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アボット,経皮的僧帽弁接合不全修復システム「MitraClip® NTシステム」適応拡大

2020-4-20

アボットメディカルジャパン合同会社は,僧帽弁閉鎖不全症の治療を目的とした「MitraClip® NTシステム」について,厚生労働省より適応拡大の承認を取得したことを発表した。
「MitraClip® NTシステム」は,日本で初めての低侵襲性の経皮的僧帽弁接合不全修復システムとして2017年10月に承認され,2018年4月より保険適用となっている。

今回の適応拡大は,2018年9月に心臓血管カテーテル学会議で発表され,The New England Journal of Medicine誌に同時掲載された,MitraClipの有効性と安全性を評価する無作為化比較対照臨床試験であるCOAPT試験の結果を受けて承認されたもの。

COAPT試験では,ニューヨーク心臓協会(NYHA)分類でクラスⅢ〜Ⅳの,高度または中等度~高度の機能性僧帽弁閉鎖不全症を有する心不全患者614名を対象に,至適薬物療法単独群と比較して,MitraClip+至適薬物療法群の有効性と安全性が評価された1。そのサブグループ解析において,左室駆出率が20%以上30%未満のMitraClip治療群は,左室駆出率が30%以上のMitraClip治療群と同様に,24ヵ月時点での生存率と心不全による入院率,生活の質(QOL)の有意な改善を示し,かつ客観的性能目標の88%を上回る安全性も示した。特に患者のQOLを示すKCCQスコアと運動機能を示す6分間歩行試験において,左室駆出率20%以上30%未満の患者群は,左室駆出率30%以上の患者群と比較して,より良好な改善を示した2

富山大学大学院医学薬学研究部 内科学第二講座教授の絹川弘一郎氏は次のように述べている。「MitraClipの対象患者が高度左室機能低下患者に広がった意義は非常に大きいと感じています。通常,開心術による僧帽弁治療は術直後に左室駆出率が10~15%程度低下することが知られており,術前の駆出率が30%未満では術後の機械的補助の必要性なども検討せざるを得ず,多くの場合躊躇されてきました。機能性MRの患者様はそもそも左室機能の低下が原因であるということから考えても当然ですが,左室駆出率が30%を下回るころからMR重症度も上がり,心不全入院を繰り返す大きな要因となっており,何とかMR治療をしたいと考える一方で,開心術に踏み切れないというジレンマがありました。その意味で30%未満の患者様におけるMR治療というのはまさにunmet needsと言えると思います。 COAPT試験のサブ解析において今回適応拡大となる左室駆出率20〜30%の患者群と左室駆出率30〜50%の患者群における結果が比較検討され,MitraClipは左室駆出率にかかわらず同等の安全性と有効性を有することが明らかとなりました。適応拡大により,より多くの患者様のunmet needsに応えることが可能となったことは大変画期的なことと感じており,ますますこの分野での治療が進むことを期待します。」

●僧帽弁閉鎖不全症について
僧帽弁閉鎖不全症(Mitral Regurgitation = MR)は,心臓の僧帽弁が完全に閉じないために左心室から左心房へ血液が逆流する進行性の心臓病で,息切れや呼吸困難といった症状を呈し,重症化すると心不全を引き起こす可能性があり,最悪の場合死に至る恐れがある3,4,5。世界での患者数が400万人と推定6される心臓弁膜症の中で最も多い疾患の一つ。

●COAPT試験について
COAPT(Cardiovascular Outcomes Assessment of the MitraClip Percutaneous Therapy for Heart Failure Patients with Functional Mitral Regurgitation)試験では,米国およびカナダにおける78施設の高度または中等度~高度の機能性僧帽弁閉鎖不全症を有する心不全患者614名が,MitraClip留置とガイドラインに基づく至適薬物療法を併用する治療群と,ガイドラインに基づく至適薬物療法のみを受ける対照群に無作為に割り付けられた。被験者の平均年齢は72.2歳,男性の割合は64.0%であった。主要有効性評価項目は,2年目までの心不全による全入院,主要安全性評価項目は,性能目標88.0%と比較した1年目の機器関連合併症回避率であった。副次的評価項目は,2年目の全死因死亡率,1年目のQOLの変化,1年目の機能的能力(6分間歩行距離)の変化,1年目のMR重症度,1年目の左室サイズであった。
●MitraClipについて
MitraClipは,2008年に欧州でCEマークを取得し,2013年に米国で開胸手術の適応とならない器質性僧帽弁閉鎖不全症患者の治療用として米国食品医薬品局(FDA)の承認を取得した。カテーテルによる低侵襲性のデバイスで,カテーテル先端にあるクリップで僧帽弁の弁尖を留め,逆流を軽減することにより高度のMR症状を改善し,患者のQOLの改善が期待される。僧帽弁閉鎖不全症患者は,高齢,虚弱,複数の併存疾患,その他の複合的な要因によって,標準治療である外科手術が適応とならない場合が多いため7,8,MitraClipによる治療は低侵襲の代替的治療選択肢となる。この経皮的僧帽弁接合不全修復術は,現在は4世代まで製品の改良を重ねており,現在までに世界中の約10万人のMR患者さんの治療に使用されてきた。

1 G.W. Stone, et al. Transcatheter Mitral-Valve Repair in Patients with Heart Failure. New England Journal of Medicine. 2018; 24:2307-2318
2 Data on Abbott
3 Cioffi G, et al. Functional mitral regurgitation predicts 1-year mortality in elderly patients with systolic chronic heart failure.European Journal of Heart Failure 2005 Dec;7(7):1112-7.
4 Grigioni F, Tribouilloy C, Avierinos JF, et al; MIDA Investigators. Outcomes in mitral regurgitation due to flail leaflets: a multicenter European study. JACC Cardiovasc Imaging. 2008;1(2):133-141.
5 Enriquez-Sarano M, Avierinos JF, Messika-Zeitoun D, et al. Quantitative determinants of the outcome of asymptomatic mitral regurgitation. N Engl J Med. 2005;352(9):875-883.
6 Millennium Research Group. US Markets for Heart Valve Devices 2014. 2013; RPUS12HV13:151. *Calculations made based on data.
7 Lung B, et al. Eur Heart J. 2003;24:1231-1243.
8 Mirabel M, et al. Eur Heart J. 2007;28:1358-1365.

 

●問い合わせ先
アボット
https://www.abbott.co.jp/