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2020-6-9

イメージング質量顕微鏡「iMScope QT」

島津製作所は，6月9日にイメージング質量顕微鏡「iMScope QT」を国内外で発売する。光学顕微鏡を搭載し，世界最高クラスの分析速度とイメージング性能を併せ持ち，液体クロマトグラフ質量分析計としても使えるという革新的な製品。現行機種「iMScope TRIO」以来6年ぶりとなる，同分野での新製品となる。

イメージング質量顕微鏡とは，質量顕微プローブと光学顕微鏡を併せ持つ質量分析計。「顕微鏡による画像」と「質量分析計で取得できる成分分布情報」を合わせて解析することで，微小領域において対象成分の分布を可視化できる。例えば，光学顕微鏡でがんの患部を観察して，質量分析計で調べた抗がん剤の定量情報と組み合わせれば，がん部に抗がん剤が適切に届いているのかどうかが確認できる。速く高精度な質量分析イメージング技術に対する世界的な需要は，創薬・医学を中心に農業や食品分野などでも伸びてきた。イメージング質量顕微鏡「iMScope QT」は，このような期待にお応えする新製品となる。

「iMScope QT」は高精度ステージと高安定紫外レーザーおよび四重極飛行時間型（Q-TOF型）質量分析計の採用により，世界最高水準の空間分解能5umと，従来比で3倍の質量分解能および5倍のイメージング画像取得速度を実現した。例えば，従来4時間かかっていたマウス脳切片全体（14mm × 7mm，分解能20umピッチ）のイメージングが，「iMScope QT」では50分程度に短縮できる。

質量分析計部と顕微鏡部はユーザー自身での着脱が可能。顕微鏡部を取り外し，液体クロマトグラフを装着することにより，Q-TOF型の液体クロマトグラフ質量分析計「LCMS-9030」システムとしても使用できる。「LCMS-9030」を既にお持ちの場合は，顕微鏡部をご購入いただくとイメージング質量顕微鏡として使用できる。

また，同じく6月9日にイメージング質量顕微鏡の前処理工程「マトリックス塗布」^※を自動化する，イメージング質量分析用スプレー装置「iMLayer AERO」を発売する。本装置を使用することで従来の手作業で生じていた塗布ムラが抑えられ，再現性の高い分析結果が得られる。同社は質量分析イメージングを用いた研究開発において，前処理から分析，解析までを高い技術と性能でカバーし最先端研究を支援していく。

^{※マトリクスを塗布することで従来イオン化できずに測定できなかったタンパク質などの高分子を安定的にイオン化させられる。2002年に当社エグゼクティブ・リサーチフェロー田中耕一がノーベル化学賞を受賞した技術「ソフトレーザーイオン化法」に不可欠な工程。}

メージング質量分析用スプレー装置
「iMLayer AERO」

●新製品の特長

1. 光学観察像と対比した高空間分解能の質量分析イメージング
照射径（直径）を5µmまで絞ることができる紫外レーザーにより，高い空間分解能を実現するとともに，高解像度の光学顕微鏡による画像と正確に対比したイメージング画像を取得できる。顕微鏡で観察した情報を利用して，皮膚や網膜といった薄層など組織中の微小領域の分析に威力を発揮する。

2. MS/MSイメージングによる特異性の高いイメージング
高機能の「LCMS-9030」により，精度の高い分子情報を特異性の高いイメージング画像として取得できる。加えて，光学画像による組織情報を合わせることで，質量分析イメージングの情報だけでは得られない複合的な解析が可能になる。

3. 迅速・高速分析
顕微鏡と高周波（20ｋHz）のレーザーを搭載したイオン化部を新たに開発し，高機能な「LCMS-9030」と組み合わせたことで，従来の1/5以下の時間でイメージング画像を取得できる。多数のサンプルを処理するスクリーニング等の用途に最適。

4. 簡単着脱による一台二役
質量分析部と顕微鏡部は簡単に着脱できる。質量分析部に顕微鏡を接続したイメージング質量顕微鏡としての利用の他，液体クロマトグラフ（別途準備必要）を接続したLCMSシステムとしての利用も可能。共通機器室などでの高い稼働率が期待できる。

質量分析計部と顕微鏡部はユーザー自身での着脱可能（イメージ）

「iMScope QT」の詳しい製品説明についてはこちら
「iMLayer AERO」の詳しい製品説明についてはこちら