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富士フイルム和光純薬,新型コロナウイルス感染症重症化危険因子の可能性のある遺伝子を検出「α1-アンチトリプシン遺伝子変異(PiS,PiZ)検出キット」 新発売独自技術を応用したPCR法により簡易・高感度検出を実現

2021-4-26

α1-アンチトリプシン遺伝子変異(PiS,PiZ)検出キット

α1-アンチトリプシン遺伝子変異(PiS,PiZ)検出キット

富士フイルム和光純薬(株)は,独自技術を応用したインターカレーター色素を用いたリアルタイムPCR※1により,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化危険因子の可能性が報告されているα1-アンチトリプシンの遺伝子変異を簡易かつ高感度に検出する研究用試薬「α1-アンチトリプシン遺伝子変異(PiS,PiZ※2)検出キット」を4月26日より発売する。

α1-アンチトリプシン(以下,AAT)は,肝臓で合成される糖タンパク質で,血流を介して肺内に拡散され,肺胞壁の障害を防ぐ作用がある。血中のAATの欠乏は,AATの遺伝子変異によって引き起こされ,慢性閉塞性肺疾患の発症につながる。AATの代表的な遺伝子変異は「PiS」,「PiZ」の2種類で,いずれもCOVID-19の重症化危険因子の1つである可能性が報告されており※3,AATの遺伝子変異の有無を確認することは,COVID-19感染症の疫学調査の一助になると考えられている。

AATの遺伝子変異は,従来ゲノムシークエンス※4や蛍光標識プローブを使用したリアルタイムPCR※5で検出することができるが,試験プロセスが煩雑で結果判定までに時間がかかったり,試薬が高額であったり,などの課題があった。

今回発売する「α1-アンチトリプシン遺伝子変異(PiS,PiZ)検出キット」は,インターカレーター色素を用いたリアルタイムPCRに同社が新たに開発した独自技術を採用し,簡易かつ高感度にAATの2種類の遺伝子変異を検出する遺伝子検出キット。従来,インターカレータ.法は試薬コストを抑えられるというメリットの一方で,ノイズが多くターゲット以外の遺伝子が検出されてしまうという課題があり,遺伝子変異の検出には不向きであったが,同社は独自設計のプライマー※6と最適なDNA増幅酵素を組み合わせることで,ノイズを低減し,高感度検出を実現した。本検査キットは,「PiS」と「PiZ」を検出するためのDNA増幅酵素とプライマー,インターカレーター色素をセットにしたキット。唾液や,口腔粘膜,鼻咽頭ぬぐい液を直接検体に用いることができ,同一検体から2種類のAAT遺伝子変異の有無を検出可能である。汎用のPCR装置で検体採取後約100分で判定結果が得られる。

同社は,「次の科学のチカラとなり,人々の幸せの源を創造する」という理念のもと,本キットを供給することで,新型コロナウイルス感染症の実態調査や治療法の研究のための疫学調査に貢献する。

※1 2本鎖核酸に結合して強い蛍光を発する色素(インターカレーター色素)を用いて,PCR反応により増幅した核酸をリアルタイムに蛍光検出する技術。今回の同社独自の変異検出技術は特許出願中。
※2 PiS,PiZはいずれもAAT欠乏症引き起こす代表的な遺伝子変異で,それぞれ点変異の箇所が異なる。これらの変異の保因率は欧米諸国に多いとされている。
※3 Shapira.G,et al.:FASEB J.,34(11),14160( 2020).
※4 ゲノムDNA配列を解読する方法。
※5 ターゲットとなる鋳型DNAに結合し,PCR反応により蛍光を発するようにデザインされたプローブ(蛍光プローブ)を用いて,PCR反応により増幅した核酸をリアルタイムに蛍光検出する技術。
※6 PCR反応時にターゲットとなる鋳型DNAに結合し核酸増幅の起点となる短鎖DNA

 

●問い合わせ先
富士フイルム和光純薬(株)営業推進課
TEL 0120-052-099
Email:ffwk-labchem-tec@fujifilm.com