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富士フイルム,膵臓がんの早期発見をサポート 膵充実性病変が疑われる領域を検出するソフトウェアを新開発AI技術を活用*1して開発された超音波内視鏡診断を支援する医療機器として日本初*2の薬事承認を取得

2025-5-20

富士フイルム(株)は,超音波内視鏡検査時に膵充実性病変*3が疑われる領域をリアルタイムに検出し,膵臓がんの早期発見をサポートする超音波内視鏡診断支援ソフトウェアを開発した。
本ソフトウェアは,AI技術を活用して開発された,超音波内視鏡診断を支援する医療機器として,日本で初めて承認された。これにより,内視鏡診断支援機能「CAD EYE」*4による病変検出の対象領域が従来の下部消化管・上部消化管から膵臓まで広がる。なお,本ソフトウェアの発売は2025年内を目指す。

膵臓がんは,5年相対生存率が8.5%と,食道がんや胃がん,大腸がんに比べて極めて低く,日本では年間4万人近くの方が膵臓がんにより命を落としている*5。一方,早期(腫瘍径1cm以下)に発見できれば5年相対生存率が80%超となるため,早期の段階で発見し,治療につなげることが重要*6。超音波内視鏡はCTなどほかの画像診断機器と比べて,特に微小な膵臓がんを発見する能力に優れ,膵臓がんの診断には超音波内視鏡を使用することが一般的だが,検査の難易度が高く,術者間で技量の差があるということが課題として挙げられている*7

今回同社が開発したソフトウェアは,超音波内視鏡画像を解析することで,膵臓が存在すると推定される領域を表示するとともに,膵充実性病変が疑われる領域をリアルタイムに検出し,その結果をモニターの超音波内視鏡画像上に表示。術者に注意喚起することで膵充実性病変の検出を支援する。

同社は,2020年に「CAD EYE」の第一弾として,大腸内視鏡検査におけるポリープなどの病変検出および鑑別を支援するソフトウェア「EW10-EC02」*8を発売した。2022年には,胃腫瘍性病変*9や食道扁平上皮癌*10が疑われる領域を検出するソフトウェア「EW10-EG01」*11を発売し,「CAD EYE」の対象領域を下部消化管から上部消化管まで拡大。さらに,AI技術を活用して開発した,下部内視鏡・上部内視鏡の検査レポート作成を支援する機能も提供している。今後も内視鏡診断のワークフロー全体を支援するAIソリューションの提供により,検査の効率化と医療の質の向上,人々の健康維持増進に貢献していく。

*1 AI(人工知能)技術のひとつであるディープラーニングを設計に用いた。導入後に自動的にシステムの性能や精度が変化することはない。
*2 AI技術を活用して開発された,膵臓領域の超音波内視鏡診断を支援する医療機器として日本初。JAAME(公益財団法人 医療機器センター)Webサイトをもとに同社調べ。2025年5月20日時点。
*3 膵充実性病変は,膵臓の腫瘍性病変のうち内部に塊が詰まったもの。膵臓がんは膵充実性病変の代表的なものである。(出典:真口宏介,小山内学,潟沼朗生,高橋邦幸. 膵腫瘍の超音波診断. Jpn J Med Ultrasonics Vol. 37 No. 4(2010))
*4 「CAD EYE」は,同社がAI技術を用いて開発した,内視鏡におけるコンピュータ自動診断支援(CAD)機能の総称。
*5 国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」 / https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/data/dl/index.html
*6 Egawa S, Toma H. OhigashiH, et al. Japan Pancreatic Cancer Registry; 30th year anniversary: Japan Pancreas Society. Pancreas 2012; 41: 985-92
*7 日本膵臓学会,膵癌診療ガイドライン改定委員会, 膵癌診療ガイドライン2022年版 / https://www.suizou.org/pdf/pancreatic_cancer_cpg-2022.pdf
*8 販売名:内視鏡検査支援プログラム EW10-EC02,承認番号:30200BZX00288000
*9 早期がんやがんの前段階(前がん病変)を含む,一般に切除する必要があると考えられる病変を腫瘍性病変という。
*10 細長い管状の臓器である食道の壁は多層構造になっており,一番内側の粘膜上皮から発生するものが扁平上皮癌。
*11 販売名:内視鏡検査支援プログラム EW10-EG01,承認番号:30400BZX00217000

1. 製品概要

販売名 超音波内視鏡画像検査支援プログラム EW10-US01
承認番号 30600BZX00269000

CAD EYE ロゴ
機能拡張ユニット「EX-1」

機能拡張ユニット「EX-1」

 

今回開発したソフトウェアは,機能拡張ユニット「EX-1」にインストールすることで,超音波観測装置「SU-1」*12と超音波内視鏡「EG-740UT」*13「EG-580UT」*14を用いた検査時に使用できる。

*12 販売名:超音波観測装置 SU-1,認証番号:226AABZX00067000
*13 販売名:超音波内視鏡 EG-740UT,認証番号:302AABZX00079000
*14 販売名:超音波内視鏡 EG-580UT,認証番号:226AABZX00141000

2. 主な特長

(1)膵臓が存在すると推定される領域・膵充実性病変が疑われる領域をリアルタイムに検出
膵臓が存在すると推定される領域を検出し,対象領域を枠(領域ボックス)で囲って表示する。同時に,膵充実性病変が疑われる領域を検出すると,リアルタイムにモニター上の対象領域を枠(検出ボックス)で囲って表示するとともに,報知音を発する。医師に対して視覚・聴覚で注意喚起することによって,膵充実性病変の検出を支援する。

超音波内視鏡検査において,富士フイルムが開発したソフトウェアが,膵臓が存在すると推定される領域および膵充実性病変が疑われる領域を検出する様子

超音波内視鏡検査を支援するイメージ

 

(2)医師の負担抑制を考慮し,内視鏡システムと一体化した操作性を追求
膵臓が存在すると推定される領域および膵充実性病変が疑われる領域の検出結果は,既設の内視鏡モニター上に表示される。「CAD EYE」専用のモニターを別途設置する必要がなく,検査中の医師の視線移動を抑制する。内視鏡システムとの連携を考慮した設計を施し,日常の検査ワークフローに溶け込む操作感を追求。医師の負担抑制を目指した。

 

●問い合わせ先
富士フイルム(株)
メディカルシステム事業部 内視鏡システム部
TEL 03-6447-1164