2025-5-7

アトックスブース
アトックスは,原子力関連施設のメンテナンスを草創期から手がけ,福島第一原子力発電所の復興事業に携わるなど,原子力施設のメンテナンスサービスの総合エンジニアリング企業として活動している。近年は,長年培われた技術を活用してライフサイエンス事業にも進出し,量子科学技術研究開発機構(QST)と共同開発を行った世界初の頭部専用ヘルメット型PET装置「Vrain」が2022年2月に販売が開始された。2023年の早期アルツハイマー型認知症の疾患修飾薬承認を受けてアミロイドPET検査が保険適用となり,新たな治療薬の開発も進む中,アミロイドPET検査はさらなるニーズの増加が予想される。Vrainは半球型ガントリを採用し,コンパクト設計で高精度な撮像を実現。着座姿勢でかつ圧迫感なく検査を受けられるなど,被検者の負担も軽減する革新的な装置で,今後の普及が期待される。ブースでは,Vrainのほかに2024年2月に発売開始したRayence社(韓国)のワイヤレスFPD「デジタルラジオグラフィAX-α」シリーズや68Ge/68Gaジェネレータ「Galli Eo」が展示された(Galli Eoは参考展示)。
●性能・コンセプトともに新しい頭部専用ヘルメット型PET装置「Vrain」
アトックスがQSTと共同開発したVrainは,直径28cmの半球型ガントリに54個の半導体検出器を配置する。検出器を近接させることで,従来の円筒型検出配置と比較して放射線計測感度を約1.5倍向上(半径・高さが同じ場合)させつつ,検出器数を1/4〜1/5程度に減らしてコストを抑制している。半導体検出器にはシリコン光電子増倍管(Silicon Photomultiplier:SiPM)を採用,229ピコ秒というtime-of-flight(TOF)時間分解能を実現し,高精細撮像を可能にした。
装置サイズは945mm(W)×2150mm(D)×1820mm(H)のコンパクト設計で,既存の検査スペースを最大限に活用できる。さらに,頭部専用設計のため着座姿勢で検査を受けることができ,被検者が椅子に座ると電動で検出器が配置され,傍らで技師がポジショニングをチェックする。ポジショニング後も顔の下半分は装置の外側に出ているため,閉所恐怖症などの被検者でも圧迫感を感じることがない。
すでに研究用としての施設導入は進んでおり,臨床現場では脳神経内科や精神科,放射線科など複数の診療科から注目されている。認知症の診断・治療の進展に伴う全身用PET装置の不足を新たに頭部専用装置で補うという観点からプロモーションを行っており,すでに全身用PET/CT装置やPET/MRI装置などを導入している大学病院や大規模病院などの導入を想定している。

世界初の頭部専用ヘルメット型PET装置「Vrain」

54個の半導体検出器を配置した半球型ガントリ

Vrainのコンソール画面。日本語表記の見やすいインターフェイスとなっている。
●使い勝手が良い韓国・Rayence社製デジタルラジオグラフィAX-αシリーズを展開
2024年2月に販売開始したデジタルラジオグラフィAX-αシリーズは,韓国のRayence社の製品で,既存3社による国内市場への参入となる。韓国の医療現場はデジタル化が進んでおり,X線撮影領域においても高い技術力がある。また,Rayence社は設計から製造までを自社で行っており,製造コストを抑えられていることから価格面でのメリットが大きく,日本ではクリニックをメインに展開を図っている。10×12インチ(AX-1012α),14×17インチ(AX-1417α),17×17インチ(AX-1717α)の3サイズをラインアップし,長尺撮影も可能で,小児科での胸部撮影などにも用いられている。シンチレータの素材はヨウ化セシウム結晶(CsI)を採用し,高感度・高画質な画像が得られる。また,Grid ON機能(仮想グリッド)を搭載し,散乱線の影響を低減する。筐体は軽量な上に全面の耐荷重300kgと堅牢性が高く,側面エッジ加工やグリップ感の向上,スリップ防止表面処理など人間工学を考慮したデザインで,持ち運びしやすいのが特長である。軽くてコンパクトな専用バッテリーは最大約2000枚の連続撮影が可能で,最大2枚のバッテリーを同時に充電できる専用バッテリーチャージャーが付属する。なお,ワイヤレス接続・有線撮影のいずれにも対応する。画像の取得・参照には専用ソフトウエア「Xmaru Viewer」が3ライセンス付与され,撮影後は約2秒で画像が確認でき,撮影の待ち時間を軽減する。コントロールPCはデスクトップ,ノート型のいずれにも対応し,施設ごとのスペースに適応が可能である。

韓国・Rayence社のデジタルラジオグラフィAX-αシリーズ

コンパクトな専用バッテリーを搭載

専用バッテリーチャージャーで2枚同時に充電が可能(充電時間は約3時間)
●小型で68Gaを製造可能な68Ge/68Gaジェネレータ「Galli Eo」を参考展示
そのほかに,PET核種の68Gaを製造可能なIRE ELiT社(ベルギー)の68Ge/68Gaジェネレータ「Galli Eo」(薬機法未承認)も参考展示された。近年,ソマトスタチン受容体に高い親和性を持つ68Ga-DOTA-TOCやPSMAに特異的に集約する68Ga-PSMA-11がそれぞれ神経内分泌腫瘍診断薬や前立腺がん診断薬として開発されたことを受け,欧米を中心に68Gaを利用したPET製剤の開発が進んでいる。Galli Eoは,本体サイズ210mm(W)×220mm(D)×230mm(H)のコンパクト設計で,原子炉や加速器などの大型設備を用いることなく,ポジトロン放出核種である68Gaを産生できる。北海道大学などとの共同研究として品質の長期保証など検証が行われている。

68Ge/68Gaジェネレータ「Galli Eo」(薬機法未承認,参考展示)
●お問い合わせ先
社名:株式会社アトックス
住所:東京都港区芝4丁目11番3号
TEL:03-6758-9004
URL:https://www.atox.co.jp/