高精細イメージングとその先へ 〜画像の高精細化とさらなる被ばく低減への取り組み 
瀧口 登志夫(キヤノンメディカルシステムズ株式会社 代表取締役社長)

2024-11-25


瀧口 登志夫(キヤノンメディカルシステムズ株式会社 代表取締役社長)

「Global Standard CT Symposium 2024」は,320列Area Detector CT(ADCT)「Aquilion ONE」をグローバルスタンダードCTとして世界に普及させ,新たに切り開かれる臨床知見を共有するとともに,われわれが取り組んでいる国内CT医療被ばく半減プロジェクトの成果を報告することを主たる目的として開催してきました。第13回目となる今回は,「高精細イメージングとその先へ」をテーマに掲げ,完全オンラインで開催します。今後の10年を見据えた新たなグローバルスタンダードCTの開発によって,「画像の高精細化」と「さらなる被ばく低減」に向けた取り組みを進めており,本シンポジウムではその実際をご報告いただきます。

Deep Learning画像再構成の標準搭載を実現

逐次近似応用再構成「Adaptive Iterative Dose Reduction 3D(AIDR 3D)」の標準搭載については,2011年に開催した第1回シンポジウムからその進捗を報告してきましたが,2024年7月現在,国内ではのべ8500台のCTに搭載されています。また,Deep Learningを用いて設計した次世代の画像再構成技術「Advanced intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)」は,CTをはじめMRI,PET-CTにも搭載を進めています。
AiCEは,これまでの被ばく低減技術の課題となっていた被ばく低減と画質のバランスにおいて,AIDR 3Dと比較して新たな効果を発揮していることが多くの研究発表で報告されています。2023年のシンポジウムで宣言したとおり,2024年から,販売するすべてのCTのセグメントにAiCEの標準搭載を実現しました。2024年7月現在,国内では約1500台に搭載され,急速に普及しつつあります。われわれは,この次世代の被ばく低減技術であるAiCEを搭載したCTの普及を通じて,さらなる医療被ばくの低減に努めてまいります。

高精細化を実現する超解像画像再構成技術の進化

新たなグローバルスタンダードCTが実現する画像の高精細化の取り組みとして,Deep Learningを応用した超解像画像再構成技術「Precise IQ Engine(PIQE)」の進化が挙げられます。PIQEは,高精細CT「Aquilion Precision」によってもたらされた高精細CT画像を,320列ADCT「Aquilion ONE」で実現する技術です。2024国際医用画像総合展(ITEM 2024)で国内初展示した新世代の320列ADCT「Aquilion ONE / INSIGHT Edition」には,適応部位を拡大したPIQEの搭載を進めており,より幅広い領域でPIQEの臨床応用が可能となっています。

広島大学との共同臨床研究を開始したPhoton Counting検出器搭載型X線CT

キヤノンメディカルシステムズでは,画像の高精細化とさらなる被ばく低減を可能にする次世代CTとして期待されるPhoton Counting検出器搭載型X線CTの開発を進めており(図1),2024年3月には広島大学と,世界で3台目となる当社製装置を用いた共同臨床研究を開始しました。その進捗を多くの方にご報告できるよう,当社ホームページに特設ページを設けて紹介していく予定です。われわれは,この共同臨床研究で得られた意見や評価を開発にフィードバックし,開発を加速するとともに,これまでに培ってきた数々の技術を結集した当社ならではの次世代Photon Counting検出器搭載型X線CTの早期実用化を通じて,画像診断技術のさらなる発展に寄与してまいります。

図1 Photon Counting検出器搭載型X線CT開発の歴史

図1 Photon Counting検出器搭載型X線CT開発の歴史

 

*本記事中のAI技術については設計の段階で用いたものであり,本システムが自己学習することはありません。

 

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