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脳外科・神経内科おのクリニック
脳神経領域に特化した良質・迅速な患者ファーストの診療にECHELON RXが貢献
地域の要望に即座に応え,1日30件超の撮像にも対応
2017-4-25
脳外科・神経内科 おのクリニックは,2016年1月,約9年稼働していた日立製作所社製の永久磁石型0.3TオープンMRI「AIRIS Ⅱ」を,同社製の超電導型1.5T MRI「ECHELON RX」に更新した。小野晃嗣院長は,開院時から一貫して脳神経領域に特化した患者ファーストの診療を行っており,即日のMRI検査を積極的に施行するなど,迅速かつ良質な医療を提供し続けている。ECHELON RXに更新したことで,さらに質の向上が図られ,近隣医療機関との連携においても有用性を発揮している。
1日30件超のMR撮像にも対応する同クリニックにおけるECHELON RXの運用の実際と有用性について,小野院長と杉崎大介技師にお話をうかがった。
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「いやしの森」のクリニックで脳神経領域に特化した医療を提供
大きなケヤキに囲まれた広い敷地に立つおのクリニックは,「いやしの森」をテーマとしたコテージ風の外観が特徴である。「一人一人の患者様に心を配り,心をいやし,病をいやす優しい医療を目指す」という同院の方針が表現された静かなたたずまいで,院内は窓からの日差しと観葉植物やフラワーアレンジメントが明るい雰囲気を醸し出している。一方,小野院長が心掛ける診療は,建物が感じさせる,ゆったりとした印象とはまさに対照的だ。「困っている人に一刻も早く医療を提供したい」という院長のポリシーは,クリニックを開業した2007年から変わることなく貫かれている。
診療は脳神経領域に特化し,迅速かつ良質な医療の提供に必要な診断機器としてMRI,CT,一般撮影装置,脳波計が稼働している。なかでも脳神経領域の診断に有用なMRIは,開業当初は0.3TオープンMRIのAIRIS Ⅱを導入し,受診当日の検査はもとより,近隣医療機関からの紹介にも即日撮像で対応してきた。現在では,診療圏は同クリニックのある新潟市中央区にとどまらず周囲約30kmにも及び,他院からの紹介も非常に多く,1日のMR撮像件数は多い時で30件以上に上る。
急性期診断の質の向上をめざしECHELON RXを導入
同クリニックでは開院以降,MRIの撮像件数は順調に増加し,2015年ごろから年間4000件を超えるようになった。開院からの数年間は,AIRIS Ⅱにて十分な画質が得られ,開放感や撮像音が静かなことが患者に喜ばれていたことから,小野院長は満足していた。しかし,近隣医療機関からの紹介や患者数の増加に伴い急性期の症例が増え,診断の際に救急病院に紹介すべきかどうか迷うことが増えていったことから,2016年1月に1.5T MRIのECHELON RXに更新した。
MRIの更新に当たり,小野院長は早期アルツハイマー型認知症診断支援システム“VSRAD”を導入したいとの思いがあり,初めから1.5T装置を導入すると決めていた。2社の装置を比較検討した上で,最終的にECHELON RXを選定した理由について,小野院長は,「1.5T MRIは,装置としてすでに十分成熟していますので,どのメーカーの装置でも私が必要とする機能や画質は問題なく得られます。そうした中でECHELON RXを選んだ理由は,メーカーへの信頼感が非常に大きかったからです」と語る。AIRIS Ⅱ稼働時に,建物や環境などの影響で十分な画質が得られなくなるトラブルが発生したことがあったが,その際に問題解決に取り組んだサービス担当者の真摯な姿勢が信頼を生み,今回の装置選定の決め手のひとつとなった。
ECHELON RXの高画質が診断の確信度を大きく向上
ECHELON RXを導入してからの1年間で,同院では約4300件の撮像が行われた。予約枠は6枠設けているが,そのほかに受診当日の検査が多く,1日平均15〜20件の撮像を行っている。主な検査対象は,頭痛,めまい,物忘れ,脳血管障害疑いで,頭痛の場合は脳出血,クモ膜下出血,脳腫瘍の除外診断,めまいでは脳梗塞の除外診断,物忘れは脳梗塞,脳腫瘍と認知症との鑑別診断が目的となる。
同クリニックでは,より多くのMRI検査が行えるよう疾患ごとにプロトコールを固定せず,FLAIRを中心に撮像を行い,症例によっては小野院長が画像を見てから撮像を追加している。具体的には,出血の場合はT1かT2*強調画像を追加,脳梗塞ではT2強調画像と拡散強調画像(DWI)を追加し,急性期脳梗塞や一過性脳虚血発作であればさらにMRAを追加,認知症はVSRADで評価し,クモ膜下出血ではMRAを追加,椎骨動脈解離疑いではBPAS(basi-parallel anatomical scanning)を追加する。
小野院長は,ECHELON RXの有用性について,「画質は非常にきれいです。特に,高齢者の撮像では,体動アーチファクトを補正する“RADAR”が大変有用で,当院では最も頻用するFLAIRにルーチンでRADARを適用しています。DWIの空間分解能も向上しており,特に急性期脳梗塞の診断の際には他院への紹介も自信を持って行えるようになりました。T2*強調画像は微小な出血も描出可能となり,MRAでは血管が末梢まで良好に描出できます。また,BPASが可能となったことで,MRAで評価困難な椎骨動脈解離の診断が可能になりました」と高く評価する。
ECHELON RXは,いまや小野院長にとって大きな武器となっている。
■症例1:クモ膜下出血
■症例2:認知症
患者の負担軽減とワークフローの向上を両立
実際の撮像について,杉崎技師は,「以前よりも撮像時間が短縮した分,FLAIRに加えてT2強調画像を撮像することが増えています。以前のFLAIR 1回分の撮像時間で,FLAIRとT2強調画像あるいはDWIなど,ほかの撮像が可能です」と話す。さらに,撮像時間が短縮したことで,腰痛を持つ患者が検査中に痛みを訴えることが減っており,患者の負担軽減にもつながっている。
また,ECHELON RXでは,患者セッティングが容易なコイルシステムや,寝台の上下・前後動作が可能なフットスイッチの採用,操作性に優れたWindowsベースのコンソールなどにより,ワークフローの向上が追究されている。これらの使い勝手について,杉崎技師は次のように語る。
「フットスイッチが採用されたことで,両手で患者さんのケアができるようになったことは,大きなメリットです。また,位置決めサポート機能の“AutoPose”により,特に経過観察の症例では,一度の処理で簡単に前回と同じ位置にスライスラインが設定されるので,とても楽になりました。MIP画像も,元画像の画質と操作性が向上したことで,以前よりも簡単に作成できます」
このほか,ヘッドコイルが以前のかぶせるタイプから,コイル上部をスライドさせるタイプに変更されたことで,患者の耳や髪を挟む心配がなくなったことも,杉崎技師は高く評価している。
地域に根を張り患者第一の医療に邁進
同クリニックでは,電子カルテやPACSを導入して院内の電子化も積極的に進めており,MR撮像に当たっては,患者・オーダ情報をMWM(modality worklist management)接続で取得して,ヒューマンエラーの低減に努めている。また,診断の際には,ルーチンで作成されるMIP画像に加えて,小野院長自身が診察室でPACS端末を用いてVR画像を作成し,さまざまな角度から見落としのない診断を行っているほか,患者に画像を見せながら説得力のある患者説明を心掛けている。
小野院長は,MRIを活用した診療の今後について,「自分の学術的な興味を満たすよりも,目の前にいる患者さんの“今すぐに解決してほしい”という要望を,これからも最優先していきたい」と話す。
おのクリニックは,脳神経領域の専門クリニックとして地域にしっかりと根を張り,今後も“患者第一の医療”に邁進していく。
(2017年2月1日取材)
〒950-0911
新潟県新潟市中央区笹口3-21
TEL 025-290-3131
http://www.onoclinic.net/
診療科目:脳神経外科,神経内科
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