Case 18 総和中央病院
リハビリ部門から病棟,健診,処方せん発行まで,院内のIT化をFileMakerによるユーザーメードで実現
総合リハビリテーションセンター室長 大場耕一氏
2014-7-8
リハビリテーションセンターでの実施計画書の入力風景
茨城県古河市の総和中央病院は,病床数113床,内科,外科,整形外科,小児科,リハビリテーション科などを標榜し,維持期から慢性期を中心に地域医療に貢献している。同病院では,リハビリテーションセンターの業務支援システムをはじめ,医療相談室データベース,院内処方せん発行システム,健康診断書作成システムなどを,FileMakerによるユーザーメードで構築している。基幹システム未導入の病院で,院内のPCやネットワーク環境のIT環境整備を含めて管理するリハビリテーションセンター室長の大場耕一氏に,FileMakerを活用した診療支援システムの現状とコンセプトを取材した。
リハビリテーションを中心に維持期から慢性期の医療を提供
総和中央病院は,亜急性期25床を含む一般病棟53床,療養病床60床を持ち,デイケアセンター,訪問看護事業所を併設するほか,介護老人保健施設「境町メディカルピクニック」,小規模多機能型居宅介護施設「レーベンス古河 仁寿苑」などを運営し,茨城県の西南部にあたる古河・坂東地域で維持期および慢性期の医療を担っている。リハビリテーションセンターには,作業療法士(OT)13名,理学療法士(PT)22名,言語療法士(ST)7名など45名のスタッフが在籍し,医療から介護まで幅広いリハビリに対応している。
同病院でのFileMakerによるシステム構築は,リハビリテーション部門での日報やスケジュール管理から始まった。大場氏は2006年に同病院に赴任したが,FileMakerでの開発は以前からデイケアセンターのリハビリ部門の久保田淳氏によって進められていた。ちょうど同年の診療報酬改定でリハビリ関係の大きな変更があり,大場氏が加わることで申し送りや実施計画書作成などへの対応などシステムの拡張を図り,同時にFileMaker Serverを導入しFileMakerのバージョンを5.5から8へ更新した。「それまでは,FileMaker Proだけでファイル共有で運用していました。そのため,FileMakerで入力を行っている業務時間中にはシステムの修正や変更ができず,診療終了後の作業となって大きな負担となっていました。システムの拡張によって,リハビリ業務の中でのFileMakerシステムの重要性が増したことで,FileMaker Serverの導入とバージョンアップを図りました。これによって,作業効率が大きく向上しました」と大場氏は経緯を説明する。
リハビリテーション部門では,FileMakerによるリハビリ業務支援システムで,リハビリ患者の登録,スケジュール管理,OT,PT,STによるリハビリ実施内容の入力,日次や月次の集計,総合実施計画書や廃用症候群などの症状詳記の書類作成などを行っている。デイケアセンターでも同様のシステムが稼働しているが,送迎車スケジュール管理など通所ならではの機能が追加されている。大場氏は,FileMakerによる構築について「医療と介護両方の診療報酬改定に対応する必要があるリハビリ部門のシステムは,ベンダー製では細かい修正が難しく,現場の運用やニーズに合わせて安価で柔軟に構築できるユーザーメードのメリットが生かせます」と言う。
FileMakerによる院内処方せん発行システムで効率化とリスク管理
同病院では,医事会計システム,画像情報システム(PACS)が導入されているが,オーダリングや電子カルテなどは稼働していない。FileMakerによるシステムの構築をはじめ,院内のLAN敷設やPCの購入,設置などIT環境の整備までを含めて,大場氏と久保田氏のリハビリテーション部で対応している。大場氏は院内システムの構築について,「この4月には,Windows XPのサポート期限の問題があり,院内の70台近いPCを更新しました。院内の端末に関しても,ブラウザやソフトウエアのランチャーなどをあらかじめセッティングして,アイコンやボタンをクリックすれば,必要なソフトウエアやファイルが使えるように配慮しています」と語る。
リハビリ部門から始まったFileMakerシステムは,その利便性が院内に評価されて徐々にさまざまな部門に広がっていった。その1つが病棟の処方せん発行システムである。同病院では,外来は院外処方だが,入院患者については院内処方を行っている。院内処方せんは手書きで発行されていたが,字が読めない,一般名称と商品名の混在などの問題があり,病棟業務の効率化とリスクマネジメントの観点からシステム化の要望があった。しかし,患者マスタや薬剤マスタなどベースとなるデータベースがなかったため,合わせて医療相談室の相談内容データベースと薬剤部の薬品登録システムを構築していった。大場氏は,「病院情報システムがないため,そのデータが最初に必要とされる部署はどこかを考えました。患者基本情報は,当院は紹介での入院が多く,その最初の窓口が医療相談室であり,相談者(紹介患者)に関するデータベースを構築することで解決しました。同様に,薬剤マスタについては,薬剤部の在庫管理のための薬品登録システムを作成し薬剤データベースを整備しました。これらのデータを利用して院内処方せん発行システムの運用をスタートしました」と述べる。
健康診断書の作成からレセプトの病名コード変換まで自作
院内処方せん発行システムでは,薬剤名は最初の3文字を入力することで検索されるようにしており,患者名についてもIDだけでなく入力したい患者の頭文字から検索できるようにした。「医師からは,IDでなく患者名で検索したいという要望があり,50音から絞り込めるようにしました。システムに不慣れなスタッフが多いので,できるだけ簡単に必要な情報に辿り着けるように工夫しています」(大場氏)。
また,レセプト電算化では診断病名にICD10のコードを入力が求められるが,その変換についてもFileMakerで対応し,業者への外注分のコストダウンを図った。「業者の見積では数百万円の金額でしたが,FileMakerとICD10変換のフリーソフトを使って自作しました。FileMakerから外部のソフトを呼び出すためワンクッション必要ですが,ほぼコストをかけずに同じ機能を実現しました」(大場氏)。
そのほか,健康診断業務の“健康診断書作成システム”を作成した。健診受診者の受付から結果データの入力・管理を行い,受診者への結果報告を過去の健診結果を含めた健康診断書を作成して提供できる。
FileMakerでのシステム構築のポイントについて大場氏は次のように語る。
「システムを作るときには,必要なデータベースの全体像を確認した上で,実際に入力する担当者に何がしたいのかをヒアリングするところから始めます。業務の際のユーザーの思考の流れを,システムに具現化することが使いやすいシステムの第1歩だからです。医師の処方のタイミングや,前回処方と同じ内容で良い場合と,1から処方を立てた方が使いやすい場面など,現場の意見を聞いて手直ししながら構築を進めています。出来上がったシステムについては,説明なしで最初から使ってもらえますね」
電子カルテや地域包括ケアを視野に入れた開発を進める
大場氏は,現在,茨城県作業療法士会の会長を務める。その立場から,地域でのリハビリの連携システムにFileMakerを活用できないか検討していると言う。
「地域の医療機関が連携して患者さんの医療・介護サービスを提供する地域包括ケアシステムの運用が求められていますが,この地域ではITを利用した連携システムの構築は今後の課題です。リハビリテーションは,患者さんが病状によって医療機関を移ったり,医療と介護の両方で行われるなど,地域の中で情報を把握することが求められます。地域での連携システムとして,何が求められているのか,要望をヒアリングして,これから検討していきたいと考えています」
将来的には,FileMakerによる電子カルテまで発展させたいと大場氏は言う。
「現在は,紙カルテとの併用のため,FileMakerとカルテとの双方に情報を残す必要があります。いずれはリハビリ部門の日報や予定表をもとに,さまざまな診療録や医療文書の作成がFileMakerの入力だけで行えるように発展させていきたいと思います」
リハビリテーションを中心に地域を支える同病院の医療をFileMakerのユーザーメードが支えていく。
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