東京女子医科大学病院 × ARIETTA Precision(日立製作所)
ARIETTA Precisionを使用したロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術
2016-6-1
図1 ARIETTA Precision
ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術
小径腎がんに対する腎部分切除術は標準術式であり,各種ガイドラインにて明記されている1),2)。その利点は腎機能を可能なかぎり温存することで,心血管系イベントを抑制し,より長い生存期間を期待することである。腎部分切除術の方法は,当科では腎動脈をクランプして一時的に血流を遮断し,腫瘍を摘除して,切除面を縫合閉鎖し,遮断した血流を開放して出血のないことを確認する。術後の腎機能温存のためには,十分な腎実質の温存と,阻血時間の短縮が必要である。「da Vinci Surgical System(da Vinci)」(Intuitive Surgical社)の普及により,腹腔鏡下腎部分切除術の適応は広がっており,当科では2015年度に189例の腎部分切除術のうち114例(60%)をロボット支援にて行っている。2016年度より保険適用となるため,さらにその適応が広がることが予測される。
腎実質を可能なかぎり温存するためには,切除前の予定切離線の正確な選定が重要である。理想的な腎部分切除術は“minimal margin”を取ることが重要である。制がん性と腎機能温存を両立させるためには,ある程度の切除縁は必要であるが過剰な切除は腎機能を損なう可能性がある。その切離線を決めるためには,超音波にて腫瘍の位置を正確に把握することが重要である。比較的狭い手術野である腹腔鏡手術では,操作性が良好でコンパクトな体腔内超音波が必須であり,さらに高画質なアウトプットが重要である。それらを具現化した「ARIETTA Precision」(日立社製)を使用したロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術について紹介する。
ARIETTA Precisionの特長
1.コンパクト
モニタに全面タッチパネルを採用しており,操作パネルがないためスリムなデザインを実現している。da Vinciは比較的大きく,手術室を効果的に利用するためには,使用頻度の少ない超音波診断装置はコンパクトで移動性の良好なものが好まれる(図1)。
2.簡単な操作
全面タッチパネルのため,直感的に操作することができる。さらに,グローブ装着中でも操作できるため,手術室で使用するには最適である。
3.リモコン操作
オプションにてリモコンをつけることができる。リモコンは本体と無線接続されており,全面タッチパネルを採用しており,エコー画面も表示されていることから,モニタから離れて操作することが可能である。da Vinciを使用する手術では,コンソール横にリモコンを置くことで,術者が超音波診断装置の操作をすることができる。
4.清潔さ
装置本体すべてのパーツが清拭ワイプに対応しており,清潔環境が必要な手術室での運用に適している。
5.High quality image
高画質であることから,腫瘍の位置を正確に把握できる。また,簡便かつ迅速に血流をチェックできることから,動脈の遮断が十分であるかの評価がしやすい。
ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術におけるARIETTA Precision使用の実際
(1) 超音波にて腫瘍の位置を確認して切離線をマーキング(図2)
(2) 遮断前の腎血流を確認(図3)
(3) 腎動脈をクランプし遮断後の腎血流を確認(図4)
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まとめ
制がん性と腎機能温存を両立させるためには,minimal marginと阻血時間の短縮が求められる。そのためには,正確な切離線の計画と,迅速な腫瘍切離/再建が必要である。ARIETTA Precisionを使用することで,その達成の助けになると考えられる。今後普及することが予測される。
高木 敏男(東京女子医科大学病院泌尿器科)
●参考文献
1)Campbell, S.C., Novick, A.C., Belldegrun, A., et al. : Guideline for management of the clinical T1 renal mass. J. Urol., 182・4, 1271〜1279, 2009.
2)Ljungberg, B., Cowan, N.C., Hanbury, D.C., et al. : EAU guidelines on renal cell carcinoma ;
The 2010 update. Eur. Urol., 58・3, 398〜406, 2010.
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病床数:1389床