原作者と監修者が語るラジエーションハウスとデンスブレスト
横幕智裕 先生vs. 戸﨑光宏 先生
『乳房MRIを極める! サーベイランスからMRIガイド下生検まで』 出版記念対談
2019-10-8
2019年4月期の月9ドラマ『ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~』
は高視聴率を記録し,好評のうちに終了しました。原作は,『グランドジャンプ』(集英社発行)で連載中の人気同名コミック。写真には必ず“真実”が写ると信じている主人公の診療放射線技師・五十嵐唯織を中心に,民間総合病院の放射線科「ラジエーションハウス」で働く放射線科医や診療放射線技師たちの奮闘を描いています。一般にあまり知られていない,縁の下の力持ち的存在のラジエーションハウスが舞台となったことで,医療系ドラマの新ジャンルとして注目され,放射線科医や診療放射線技師の知名度と評価の向上に大きく貢献したドラマでした。
『ラジエーションハウス』のテレビドラマ化とほぼ同時期,医療監修を務められた戸﨑光宏先生が単行本を出版されました。ご自身のライフワークである乳房MRIとMRIガイド下生検をメインテーマにした単行本で,タイトルは『乳房MRIを極める! サーベイランスからMRIガイド下生検まで』
(インナービジョン発行)。ドラマ『ラジエーションハウス』で最も反響が大きかったのは,“デンスブレスト”を取り上げた回ということです。戸崎先生は日本におけるデンスブレストの認知度向上や,乳房MRIとMRIガイド下生検の実施に尽力されてきた乳がん診療のエキスパートです。
そこで今回,『ラジエーションハウス』のテレビドラマ化と単行本『乳房MRIを極める!』の出版を記念して,『ラジエーションハウス』 の原作者である横幕智裕先生と医療監修者で単行本の著者である戸﨑光宏先生に,それぞれの作品について本音で語り合っていただきました。
出席:横幕智裕先生(脚本・構成・マンガ原作者)
戸﨑光宏先生(相良病院放射線科部長
昭和大学医学部放射線医学講座客員教授)
司会:インナービジョン編集部
ラジエーションハウスの始まりのお話し
─きっかけとなったナンシーさんとデンスブレスト─
──本日はお忙しい中,お集まりいただきましてありがとうございます。では,まず,連載マンガ『ラジエーションハウス』のそもそもの始まりですが,どのようなきっかけで企画され,どんなふうに進んでいったのでしょうか?
横幕:最初は,僕のグランドジャンプ(集英社発行)*1での前の連載が終わるタイミングで,次の連載を考えようということになりました。前の連載は,「Smoking Gun 民間科捜研調査員 流田縁」というタイトルの科学捜査ミステリー物でしたが,幸運なことに香取慎吾さん主演でドラマ化されています(「SMOKING GUN〜決定的証拠〜」2014年4月期フジテレビ)。編集担当者からは,次は医療物はどうですか? という提案がありました。
僕は医療物はまったくやったことがなく,知識もないので自信がなくて,最初はためらいました。僕らがイメージする医療物と言えば,内科や外科,整形外科とかが中心で,すでにやりつくされていて新しい切り口もなさそうに思えたのです。その時,編集担当者に診療放射線技師(以下,技師)の友人がいるということで,とりあえず取材に行くことになりました。その友人の技師というのが,ラジエーションハウスの監修者の一人である五月女康作先生(東京大学大学院総合文化研究科進化認知科学研究センター特任助教)です。でも最初は,技師は医者ではないんでしょ? 医療物になるのかな? と半信半疑でしたが。
五月女先生にCTやMRIの画像を実際に見せていただき,さらにお話を伺ってイメージがガラッと変わりました。病変の見え方など画像についての簡単なレクチャーを受けただけですごく面白かったので,これは物語になるのではないかと思って,さっそく構想に取りかかり始めました。
そこでひとつネックになったのが,技師の仕事を描くにしても,診断するのは放射線科医であるということです。それまで,放射線科医の存在についてはまったく知らなかったので,五月女先生を介して戸﨑光宏先生を紹介してもらいました。企画が始まる前,監修を引き受けていただく前の2014年末くらいから,お会いしていろいろなお話を聞かせていただき,一から教えていただきました。
*1 グランドジャンプ:集英社が発行する青年マンガ雑誌(2011年創刊:月2回発行)。公式サイトはこちら(http://grandjump.shueisha.co.jp/ )。
戸﨑:実は僕は,それぞれの関係者に以前から接点がありました。集英社の雑誌の取材を亀田病院で受けたことがありますし,五月女さんはMRIガイド下生検を亀田病院まで見学に来たことがありました。たまたまそのお二人からお話があったので,とりあえず横幕さんに会ってみることにしました。
横幕:監修については,物語はフィクションが入るので,そこに理解がないとなかなか話が進まなかったりします。それで,監修をお願いする時は僕らも緊張するのですが,戸﨑先生は即答でしたね。
戸﨑:話を聞いたとたんに,ああ,いいんじゃない,と軽く引き受けました(笑)。
──企画がスタートし,監修者も決まって,それからどういうふうに物語を組み立てていかれたのですか?
横幕:物語を作るときは必ず,これをいまやる意味があるのか,を考えるんです。それで戸﨑先生に,いま一番やりたいこと,気になっていることを質問した時に,ナンシーさん*2の話,デンスブレスト*3の話を聞きました。ナンシーさんが来日するタイミングで講演会*4があるから聞きに来ないかと誘われ,僕と漫画家のモリタイシさんで聞きに行ったんです。ナンシーさんの講演を聞いてすごく心に響くものがありまして,これはいまやるべきことだと意見が一致し,実際に企画が動き出したのです。あれが分岐点ですね。
*2 ナンシーさん:Nancy M Cappelloさん。米国のNPO法人「Are you dence?」 創設者,常任理事。自身の乳がん経験から,デンスブレストの啓発活動に取り組む。乳がん検診でデンスブレストと判定された場合,マンモグラフィの感度低下の通知と超音波などの追加検査の必要性を検討するという法律が2009年,ナンシーさんの出身地であるコネチカット州で初めて制定され,2018年現在,全米36の州で整備されている。2018年12月に逝去。
*3 デンスブレスト:高濃度乳房と不均一高濃度乳房を「デンスブレスト」と定義。乳腺濃度が高いためにマンモグラフィで「白く」写る乳腺のこと。一般に日本人は欧米人と比べて,デンスブレストの比率が高いと言われている。デンスブレストの問題点は,マンモグラフィの感度低下と乳がんの発症リスクの増加の2点が挙げられる。
*4 講演会:2015年7月に開催された第23回日本乳癌学会学術総会にナンシーさんを招聘した際,NPO法人乳がん画像診断ネットワーク (BCIN:理事長・戸﨑光宏先生)が主催する「アカデミックセミナー」を企画し,ナンシーさんが講演した。講演のタイトルは,「マンモグラフィで発見されなかった進行性乳がんが世界的な社会運動を巻き起こすまで」(https://bcin.jp/topics/52.html )。ナンシーさんは,米国のNPO法人「Are you dence?」の活動を報告。100名以上の参加者が意見交換を行った。
──じゃあ,そもそもの企画のきっかけとなったのがデンスブレストだったんですね。
横幕:もしかしたら,あの講演を聞かなければ違う形になっていたかもしれないですね。もっとコメディ色が強くなったりとか。社会的問題提起と言うか,僕らが伝えたいことがあったことが,この企画が進んだきっかけだったわけです。
戸﨑:ストーリーの前半に,乳がんの画像診断やデンスブレストの話しが入って,ナンシーさんの写真が使われたりしています。ナンシーさん本人にはもちろん許可をもらって,マンガも送って見てもらいましたが,日本のマンガにも出ていると喜んでいたようです。その後,テレビドラマ化された時は,デンスブレスト編は反響が大きかったですね。
横幕:マンガの時も反響があったのですが,テレビドラマはやはり見ている人の数が圧倒的に多いので,一般の視聴者からのネットなどでの反響が大きかったですね。最初の方に一番伝えないといけないと思っていたのがデンスブレストでしたし,それをやらなければ企画を進める意味がないと思っていましたので,やって良かったと思います。
──乳がんのほかにもいろいろな病気やシチュエーションが出てきますが,それらはプロットを提案して,監修の戸﨑先生に専門的なアドバイスをいただくという流れですか?
横幕:病気のことはある程度調べて,ストーリーや人間関係とかを組み立ててから戸﨑先生に意見を求めて,アドバイスをいただくというのが監修のパターンです。こういう病気がいいとか,こういう症状が出るとか,このストーリーに使えるとか,検査の種類や選択,診断のタイミングなどの実践的なアドバイスをいただきます。検査の技術的な解説は五月女先生に聞くという感じです。
戸﨑:監修の際には,画像診断は放射線科医のレポートがあって成り立っているという,裏方としての存在意義を一般の方々に知ってもらいたいという思いがありました。放射線科のあり方や技師さんとの関係とか,基本的には放射線科医としての自分の歴史や考え方が反映されていると思います。
──マンガのタイトルである「ラジエーションハウス」の由来を教えてください。
横幕:タイトルは僕らが決めた造語です。取材に行った時に,検査室の裏側で技師や医師が仕事をしている空間を何と呼んでいるんですか? と聞いたら特にないということだったので,何か名前をつけて,それをタイトルにしようということになりました。最初,ラジエーションルームとかラジエーションエリアとかを考えたのですが,みんなで集まる「家」のようなところにしたいという思いで,「ラジエーションハウス」としました。
戸﨑:普通は,放射線部とか,操作室とかですよね。ラジエーションハウスという名前が今では医療現場でも広まってきて,特に,技師の方たちには浸透していると思います。
──ドラマやマンガの中では,技師の仕事や放射線科医の仕事の説明をする台詞がしっかり入っていますが,それは意識して入れるようにしたのですか?
横幕:ドラマのシナリオには意識して入れてもらうようにしました。特に,医療用語とかは言葉では伝わりにくいので省きがちですが,なるべく間違いがないように入れてもらっていました。僕が最終回を書いた時,出演者に「難しい言葉は入れないでください」と冗談で言われたりしたので,みなさん,大変だったと思います(笑)。
戸﨑:僕は逆に省く方でしたね。台詞をしゃべっているところを想定して,長いとしゃべりづらいだろうから短くするようにチェックしていました。
横幕:それで,戸﨑先生は感謝されて,僕は恨まれるという図式ですね(笑)。
──登場人物のキャラクターはどのように決めていかれたんですか? いかにも現実にいそうな感じですが。
横幕:漫画家のモリさんと,年齢やビジュアルはなるべく特徴が出るように考えました。実際の取材時に,専門学校を卒業しても用語がまるでわかっていない新人がいるという話を聞いて,新人のキャラはそういう子にしようとか,機械のパーツを見ながらご飯を食べるようなマニアックな人もいると聞いて,そういうキャラも作りました。技師長さんも,昔は禁煙の張り紙の前でタバコを吸っている人がいたという話を聞いて,そういう設定にしたらお叱りを受けたり。医療関係者でタバコを吸ってるのはあり得ない!とか。そこはマンガだから許してくださいという感じです。
マンガでは診療部長の放射線科医・鏑木安富先生が骨軟部領域が専門なんですが,これも戸﨑先生のアドバイスなんです。
戸﨑:甘春病院は放射線科医が2,3人の放射線科という設定なので,若手の杏ちゃんに指導できて,腹部やIVRではないちょっとニッチな専門分野がいいと思ったんです。
──マンガでもテレビドラマでも最初,放射線科医の杏ちゃんが技師に対して,「余計なことしなくていいから。マニュアル通りに撮ってくれさえすれば」ときついことを言いますが,意図的にそういう設定にしたのですか?
横幕:杏ちゃんには理由があってそうなっているという背景を作りました。お父さんが倒れてしまって,自分が病院を背負わなければならないという思いから一人で頑張りすぎていて,周囲に辛く当たっているという設定にしたのです。
戸﨑:テレビドラマでは,五十嵐くんのことを最後まで思い出さなかったですね。
横幕:マンガはドラマと違うストーリーになると思います。楽しみにしていただければと(笑)。
──テレビドラマ化の話が出たのはいつ頃ですか?
横幕:フジテレビさんから打診があったのは,去年(2018年)の夏くらいと聞いています。編集部にお任せしていましたが,10月くらいから話が具体的になっていきました。「月9? マジか!?」って感じでした(笑)。
──キャストの選定はどのように行われたのですか?
横幕:キャスティングはフジテレビさんにお任せでした。出演者が決まるたびに,モリさんも僕もワクワクしていました(笑)。
戸﨑:漫画家のモリさんがイメージしていた主人公の五十嵐唯織役は窪田正孝さんだったので,イメージどおりのキャスティングだったようです。
横幕:ドラマの最終回は僕が脚本を書きました。オリジナルストーリーだったので,取材の中で知った脳脊髄液減少症のエピソードを使いました。この病気は,いずれマンガでも取り上げたいと思っています。
テレビドラマでも注目されたデンスブレストと乳がん診療
─MRIガイド下生検はいま─
──ラジエーションハウスの企画の最初のきっかけにもなったデンスブレストは,テレビドラマでも一番反響が大きかった回でした。戸﨑先生は当時,どのような思いでデンスブレストのお話をされたのですか?
戸﨑:当時はデンスブレストの啓発にものすごく熱くなっていて,記憶がないくらいです。デンスブレストに世の中の人がやっと気づいて,認識し始めたのが2014〜2015年頃でしたが,そこまでもっていくのにかなり労力を使いましたね。
──その後,乳がん診療の関係者はじめ関連の学会や行政などでも,デンスブレストの重要性を認識し,対策について検討するような流れになってきたかと思います。
戸﨑:僕は,本人に知らせるべきだという考えは一貫しています。しかし,気づいてみたら,対策型検診のマンモグラフィでデンスブレストだった場合,受診者本人に告げるかどうかについて,学会や厚生労働省等で検討するという流れになっていました。2017年3月,関連学会・団体からなるデンスブレスト対応ワーキンググループ(WG)から,「対策型乳がん検診における「高濃度乳房」問題の対応に関する提言」が出されました*5。対策型検診において乳房の構成を一律に通知することは,今後検討が進み,対象者に検診後の対策(十分な説明や検査法等)を明示できる体制が整ってから実施されることが望ましいということで,一律通知は時期尚早という内容です。一方,任意型乳がん検診は個人の自己責任で受診するので,通知してもかまわないとされました。
*5:日本乳癌検診学会,日本乳癌学会,日本医学放射線学会,日本乳がん検診精度管理中央機構で構成されたWG。報告書はこちら(https://www.qabcs.or.jp/archives/001/201703/170321_1.pdf )。
──米国では,ナンシーさんたちの10年を超える活動により,多くの州で乳腺濃度に関する法律が制定されました。2019年3月には,スクリーニング検査でデンスブレストが見つかった場合,乳がんリスクが高いことを本人に通知することを義務化するというような新しいルールを盛り込む案を米食品医薬品局(FDA)が発表したそうです。
戸﨑:日本では思うように前進しないですね。NPO法人乳がん画像診断ネットワーク(BCIN)などでも厚生労働省に働きかけはしていますが,なかなか壁は厚いです。
横幕:デンスブレストは患者さんに知らせる義務がないと聞いて,僕らは率直になぜだろう? と不思議でした。医療関係者だけが知っていて一般の人は知らない事実だったので,それを知らせる手助けをするためにもマンガで伝えたいと思いました。それがテレビドラマ化されて,デンスブレストが広く知られるきっかけになったので,手応えは感じています。
──マンガやテレビドラマは,女性自身が情報を得て気づいていく初めの一歩になったと思います。乳がん検診を受診した女性自身からデンスブレストについて,私はどうなんでしょうか? と問いかけるきっかけにもなるのではないでしょうか。乳がんの診断と治療に話題を広げると,戸﨑先生が今回の単行本で伝えたいことはなんでしょうか?
戸﨑:2018年4月にMRIガイド下生検が保険収載されたことが,執筆のひとつのきっかけです。昭和大学の講座で後輩に教える時に,良い教科書・教材がないことを痛感していたので,乳房MRIとMRIガイド下生検の手引きとなるような書籍が必要だと思いました。それに,ドイツに留学してからいままでに蓄積してきたスライドや資料もあるし,2013年にBI-RADS-MRIの編集委員に加わって貴重な体験もしたので,自分がこれまで行ってきたことの証をつくらなければと思いました。
──現在の乳房MRIとMRIガイド下生検の状況はどうなんでしょうか?
戸﨑:MRIガイド下生検は保険収載されてから1年半くらいですが,実施している施設は予想していたよりは少ないですね。この間,北海道で初めて立ち上がって,北海道がんセンターでのMRIガイド下生検1例目をサポートしてきたところです。必要な手技なんですが,いままで行ったことがないということ,装置的なこと,放射線科のMR室での生検ということ,実施時間が1時間ほどかかること,保険点数のことなど,いろいろなハードルがあります。
──それらを突破するにはどうしたらいいでしょうか?
戸﨑:まずは,MRIガイド下生検の必要性をわかってもらうしかないと思います。MRIガイド下生検で小さな乳がんが見つかることに乳腺外科の先生が気づくと,必要性がわかってもらえてオーダーが出るようになります。最初の第1例のきっかけが大事です。1例目は全国どこにでもサポートに行っているのですが,いまでは昭和大学でも毎週のように症例があります。欧米ではMRIガイド下生検が当たり前のように行われていますが,日本人女性の11人に1人が乳がんを患うというメジャーな疾患にもかかわらず,日本ではいまだに普及していません。しかし今後,ハイリスク女性のサーベイランスなどが外来で増えていくと思われるので,乳房MRIとMRIガイド下生検はこれからどんどん必要になってくると思います。引き続き,告知や教育用の動画を制作したり,実施時のお手伝いをしたりという,普及活動は続けていくつもりです。
これからのラジエーションハウスは? そして,その先は?
──いまマンガの単行本『ラジエーションハウス』は8巻まで出版されていますが,どこまで続きそうですか?
横幕:どうでしょう。僕が教えてほしいくらいです(笑)。
──現在,8巻までで何部くらい売れているのでしょうか?
横幕:紙版と電子版合わせて,累計110万部を超えたと聞いています。
──大ヒットですね! ラジエーションハウスで今後,MRIガイド下生検をテーマとして扱う可能性はありますか?
戸﨑:可能性はあるかもしれないですが,あまり乳がんばかり出てくると,ひんしゅくを買うかもしれませんね(笑)。
横幕:第二弾の可能性は十分あると思います。人工知能(AI)についても詳しくやりたいです。戸﨑先生は世界に目を向けていて,画像診断に国境はないというお話しを伺ったので,そういう視点からの世界で活躍する話なども面白そうですよね。それとは別に,放射線科医を主人公にしたスピンオフもできますね,という話も出ています。
──AIの話はこれから必須だと思います。AIが放射線科医の仕事を奪うのではないかというような刺激的なテーマも考えられますか?
戸﨑:基本的にAIとは共存すると思っているので,いろいろ紆余曲折があっても共存していくようなお話しになると思います。放射線科は,医療の中でもAIが入ることで働き方や存在意義が劇的に変わる,一番影響を受ける領域だと思います。例えば,MRIやCTなどはリモート撮像できるので,救急現場とかで有効利用したりとか。そうなると,技師の領域でも面白い出来事が起こると思います。いまAIは,話題になっている割には現実的にはなっていないので,逆にマンガで先取りして,理想論的な予想ができれば面白そうですね。
──放射線科医はもちろんですが,技師の仕事も自動化されて仕事が奪われるとか,AIで変わってくる可能性も考えられます。
戸﨑:放射線科医と同じように,自分の居場所を再確認することになるかもしれません。世界的に見てレベルが非常に高い日本の技師が,AI時代に海外にはない形で希望が持てる方向性を打ち出せたらいいかなと思っています。
──技師と放射線科医が協力し合う理想のラジエーションハウスになっていくという展開を楽しみにしていますし,テレビドラマの第二弾にも期待しています。本日はありがとうございました。
(2019年9月10日 東京・恵比寿にて)
<ご略歴>
横幕智裕 先生
(脚本家・構成作家・マンガ原作者)
北海道出身。シナリオ作家協会シナリオ講座研修科43期修了。
2012年,『明日をあきらめない…がれきの中の新聞社~河北新報のいちばん長い日~』(テレビ東京)で,東京ドラマアワード2012単発ドラマ部門グランプリ・第8回日本民間放送連盟日本放送文化大賞グランプリを受賞。
現在,集英社グランドジャンプにて『ラジエーションハウス』を連載中。
戸﨑光宏 先生
(相良病院放射線科 部長
昭和大学医学部放射線医学講座 客員教授)
1993年 東京慈恵会医科大学卒業。同年 東京都立駒込病院外科。1995年 東京慈恵会医科大学放射線科。2005年 イエナ大学放射線科(ドイツ)に留学。2006年 亀田総合病院乳腺科部長。2015年〜相良病院附属ブレストセンター放射線科部長。2018年〜昭和大学医学部放射線医学講座客員教授を兼務。
2009年に米国のBI-RADS (Breast Imaging Reporting and Data System)- MRI の編集メンバーに選出。現在,画像診断医としてハイリスク外来を開設し,リスクに合わせた個別化検診およびMRI ガイド下生検を実施している。
【関連リンク】
グランドジャンプ(集英社)
連載マンガ『ラジエーションハウス』
月9ドラマ『ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~』(フジテレビ)
米国NPO法人「Are you dence?」
NPO法人乳がん画像診断ネットワーク(BCIN)
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