富士通Japan,「医療DX令和ビジョン2023」を見据えた中小規模病院向け新クラウド型電子カルテを発表
2025-8-26

電子カルテを中心に医療の課題解決に向けた
ソリューションを展示した富士通Japanブース
富士通Japanは,「医療をと取り巻くすべての人と,ともにさらなる進化と変革を〜新たな患者体験・働き方の改革・時速可能な経営の実現」を展示テーマとして,大規模病院向けから中小規模病院,診療所向けまで電子カルテシステムや生成AIを活用した文章作成,問診システムなど多彩なソリューションを展示した。
ブースの中でも注目されたのが,近日リリース予定の注目製品と題された「中小規模病院向け新クラウド型電子カルテ」だ。医療DX令和ビジョン2023では,標準型電子カルテの開発と2030年までに電子カルテの普及率100%の目標が掲げられている。新しいクラウド型電子カルテは,富士通Japanがこれまで培ってきた電子カルテの稼働実績を分析し,運用を定型化してシステム設定やマスタ類などをすべて搭載した状態で提供する。これによって医療機関側では一から作り上げる必要がなくなり,専門スキルを持ったスタッフがいなくても短期間で簡単に導入が可能になる。また,導入支援ポータルという導入施設向けの電子カルテ導入支援サイトが用意される。画面上のガイダンスに沿って,マスタ作成や操作学習などの作業が進められ,進捗状況も確認しならがシステム稼働を進めることができる。

電子カルテ普及100%に向けたラストピースとなる「中小規模病院向け新クラウド型電子カルテ」を発表
診療所および小規模病院向けの電子カルテとして,「HOPE LifeMark-TX Simple type」と「HOPE LifeMark-TX Hybrid type」が展示された。
HOPE LifeMark-TX Simple type(TX Simple type)は,製品名の通り,これから電子カルテを導入する無床診療所向けに機能を絞り,シンプルにリーズナブルな価格で導入しやすいクラウド型のシステムとなっている。電子カルテに医事会計の機能が統合されており,1つのシステムでカルテ入力から受付,診察明細,領収書の発行までが行える。カルテの記載に関しても,AIによる自動学習機能で入力する場所(所見かオーダかなど)に合わせて必要なメニューが展開されるようになっており,入力の手間を削減している。
また,HOPE LifeMark-TX Hybrid type(TX Hybrid type)は,電子カルテ・医事一体型で100床以下の小規模病院向けの電子カルテ。TX Hybrid typeは,オンプレミスタイプでTX Simple typeのシンプルな操作性をベースに入院業務にも対応している。どちらの製品も,オンライン資格確認や電子処方箋などにも対応しているほか,患者の予約や会計など快適な通院をサポートする患者向け総合ソリューション「HOPE LifeMark-コンシェルジュ」に対応しているのが特徴だ。

クラウド型のHOPE LifeMark-TX Simple typeの画面

シェーマなどシンプルで使いやすい機能を用意

HOPE LifeMark-コンシェルジュにも対応
大規模病院に向けた「持続可能な病院経営」のソリューションとして,「HealthCare Management Platform(仮称)」を紹介した。急性期医療では,多くの重症患者を受け入れ,高度な治療を適正な期間で提供することが求められており,患者フローのマネジメントが重要になっている。HealthCare Management Platformは,電子カルテや医事会計システムに蓄積されたデータを中心に,経営層の意思決定をサポートする「Dashboard360」,そこで見つけ出された経営課題を改善するため日常の診療業務をサポートするContentsと呼ばれるさまざまな機能を提供する。これらのサイクルを回すことで,持続可能な医療体制の実現をめざす。
Dashboard360は,病院の経営状況や課題を可視化することでデータドリブンな経営をサポートする。院内だけでなく,同規模の病院とのベンチマークなども可能になる。また,Contentsとしては,「ベッドコントロール支援」ち「「手術マネジメント支援」(どちらも仮称)が紹介された。ベッドコントロール支援コンテンツ」は,退院予測AIでベッドコントロールの適正化を可能にする。
手術マネジメント支援コンテンツは,効率的な運用が病院の収益増に直結するものの,イレギュラーなイベントが多く適正な管理が難しい手術室の運用に関して,手術スケジュールのAIによる自動作成と,見える化による手術稼働率の向上を可能にする。Contentsの特徴は,電子カルテベンダーとして目の前にある端末をタッチポイントとして情報を提供できることだ。日々使う端末にこれらの情報が表示されることで,日常の診療の中での行動変容につながっていくことが期待される。HealthCare Management Platformは,「HOPE LifeMark-HX」での提供を予定している。

「HealthCare Management Platform(仮称)」の構成図

Dashboard360
大規模病院に向けた「働き方改革・業務効率化」のコーナーでは,勤務管理支援システム「HOPE タイムリフォーマー」が紹介された。HOPE タイムリフォーマーは,電子カルテの情報と連携することで,医師やコメディカルを含めた病院職員の労働状況を把握し,データに基づいた勤務管理を支援する。特徴は,特許を取得した統計ダッシュボードとタイムスケールの機能だ。統計ダッシュボードは,部署や職員単位で労働状況データ(時間外,年休取得数,連続勤務状況など)をグラフなどで可視化する。これによって,全体の傾向や個人の働き方が把握しやすくなり,労働状況の分析と対策を支援する。タイムスケールは,職員ごとの勤務情報と電子カルテの情報(利用時間や使用場所,オーダの内容など)を基に,ガントチャート(横棒グラフの工程表)で可視化し,働き方や業務分担の見直しにつなげることができる。

HOPE タイムリフォーマーの統計ダッシュボード

HOPE タイムリフォーマーのタイムスケール
同じく大規模病院に向けた「働き方改革・業務効率化」のコーナーでは,生成AIを活用した医療文章作成支援サービスも紹介された。電子カルテに入力された二尾の診療記録などのデータを基に生成AIが医療文章の下書きを作成する。富士通Japanのサービスの特徴は,電子カルテに一体化されていることで,生成に必要なデータを選んだり,別のソフトウエアやウィンドウを開くことなく電子カルテの画面上で操作ができることだ。現在は退院サマリの作成のサービスが提供されており,生成AIの参照元のカルテデータを表示して,確認・修正を行うことができる。

生成AIを活用した医療文章作成支援サービス

AI要約結果を見ながら修正や削除して文章を作成可能