ITEM2025 東洋メディック ブースレポート
新たに提供を開始した医療用リニアック装置を用いた電離箱校正サービスや自社開発のX線骨密度測定装置を中心に,幅広い製品をアピール
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2025-5-9

東洋メディックブース
東洋メディックは,自社開発の製品をはじめ,放射線治療の安全管理や,放射線診断・治療の安全・正確な実施に寄与する数多くの製品を取り扱っている。今回のITEMでも,見て,触れて,ニーズに合った製品を選択できるブースを展開したほか,ホームページにITEM2025特設サイトを設け,来場者が展示を見ながらより詳細な製品情報に簡単にアクセスできる環境を整えていた。
実際の展示では,ブース正面に放射線治療の患者固定具のコーナーが大きく設けられた。米国・CIVCO Radiotherapy社と米国・Qfix社がCQ Medical社としてブランド統合したことに伴い,東洋メディックでは,従来取り扱ってきたCIVCO Radiotherapy社製品に加え,2024年からQfix社製品の販売も引き継いでいる。CQ Medical社の製品としては,放射線治療用患者固定プラットフォーム「Alta」や,頭頸部固定システム「Encompass」などが展示された。これらのほか,放射線治療に関してはQAソリューションとして,米国・Sun Nuclear社とドイツ・IBA Dosimetry社の製品が展示され,実際に触れながらそれぞれの特長を体感できるようになっていた。
さらに,今回のITEMでは,東洋メディックが今年4月より,医療用リニアック装置を用いた電離箱校正サービスの提供を開始することが発表された。新たに定められた手法に沿って電離箱の校正を行うことで,水吸収線量校正定数の不確かさを低減することが可能となる。このほか,自社開発の製品としては,前回のITEMで新製品として紹介されたリファレンス線量計「RAMTEC Pro」や,3色のカラーバリエーションで展示されたX線骨密度測定装置「B-Cube plus」などがアピールされた。

ブース正面で存在感を示したCQ Medical社のコーナー

医療用リニアック装置を用いた電離箱校正サービスの提供を開始
●自社の新サービスとして,今年4月から「医療用リニアック装置を用いた電離箱校正サービス」の提供を開始することを発表
今回のITEMでは,今年4月から提供を開始した「医療用リニアック装置を用いた電離箱校正サービス」が紹介された。
電離箱による水吸収線量の計測について,従来は『外部放射線治療における水吸収線量の標準計測法:標準計測法12』(日本医学物理学会,2012年刊行)に則って,60Coガンマ線水吸収線量標準で校正が行われてきた。本手法では,校正深水吸収線量計測の相対拡張不確かさ(k=2)は,高エネルギー光子線で2.9%,高エネルギー電子線で平行平板形電離箱を用いた場合は3.4%と見積もられている。これは,電離箱を校正する基準線質が60Coガンマ線であるのに対し,ユーザー線質は医療用リニアック装置からの高エネルギー光子線および電子線と異なっているためであり,電離箱線量計の応答の違いは線質変換係数kQで補正する必要がある。一方,線質変換係数kQの相対標準不確かさは,光子線で1%,電子線(平行平板形電離箱を用いた場合)では1.2%であり,不確かさの最も大きな要因となっている。
こうした状況を受け,2024年には,日本医学物理学会によって新たに「医療用リニアック装置によって校正された放射線治療用線量計による水吸収線量の標準計測法(リニアック標準計測法24)」が定められた。リニアック標準計測法24では,医療用リニアック装置によって高エネルギー光子線・電子線で値付けされた電離箱線量計を用いて水吸収線量標準に基づいた計測を行えるため,線質変換係数kQによる補正が不要となり,ユーザーの校正深水吸収線量値の相対拡張不確かさ(k=2)が低減することが見込まれる。
東洋メディックは,リニアック標準計測法24に沿った光子線・電子線測定器のうち,線量測定用検出器の校正について,2025年2月に計量法校正事業登録制度(JCSS)/国際MRA(Mutual Recognition Arrangement)の認定を取得し,4月より医療用リニアック装置を用いた電離箱校正サービスを開始するに至った。本サービスでは,医療用リニアック装置を用いて水吸収線量校正定数を提供するため,高エネルギー光子線・電子線の水吸収線量計測において線質変換係数kQでの補正が不要となり,ユーザーの水吸収線量計測値の相対拡張不確かさ(k=2)が光子線で1.9%,電子線(平行平板形電離箱を用いた場合)で2.3%にまで低減される。これにより,放射線治療における患者への投与線量の不確かさの低減が見込まれ,安全性の向上が期待される。本サービスで提供される校正証明書には,不確かさの詳細や,線質指標ごとの水吸収線量校正定数の詳細が記載されたExcelシートが添付される。また,標準計測法12では,不確かさを低減するために平行平板形電離箱と高エネルギー電子線によるファーマー形電離箱との相互校正を推奨しているが,本サービスでは平行平板形電離箱を高エネルギー電子線で直接校正するため,ユーザーによる相互校正が不要となる。
なお,上記サービスと併せて,前回のITEMで発表された,温度気圧計を搭載したオールインワンのリファレンス線量計「RAMTEC Pro」と放射線治療用チェンバー(電離箱)が紹介された。従来機種では別途温度気圧計が必要だったが,RAMTEC Pro では電位計としての計測結果と,温度,気圧の値を1台で取得することができる。独立したアンプを2台搭載して2ch同時測定に対応し,水吸収線量計測において外部モニタ電離箱を用いながらの相互校正を1台で行えるほか,従来よりも軽量化・コンパクト化が図られ,持ち運びしやすく,より省スペースでの設置が可能となった。放射線治療用チェンバーは複数用意されており,大きいものはリファレンス用,小さいものは位置精度などピンポイントの測定用と使い分けることができる。また,専用のアドインソフトウエア「RAMTEC Link Pro」を用いてExcelファイル上で線量計の操作や測定データを取り込めるため,データ管理も簡単に行うことができる。

医療用リニアック装置を用いた電離箱校正サービスの校正証明書

温度気圧計を搭載したオールインワンのリファレンス線量計「RAMTEC Pro」

放射線治療用チェンバー(電離箱)
●施設のニーズに合わせた選択が可能なX線骨密度測定装置「B-Cube plus」や超音波骨密度測定装置「EchoSシステム」を紹介
骨密度測定装置は,自社製品である前腕骨専用のX線骨密度測定装置B-Cube plusと,超音波骨密度測定装置EchoSシステム(イタリア・Echolight社)の2機種が展示された。
B-Cube plusは,場所を取らないコンパクト設計とシンプルな操作性,短時間での骨密度測定が可能なスループットの良さが特長である。被検者が椅子に座って前腕を測定部に置き,グリップユニットを握った状態で,検査担当者がPCモニタ上の測定ボタンをクリックすると15秒で骨密度の測定が終了する。グリップユニットは測定部の左右どちらにも設置できるため,どちらの腕でも測定可能。グリップユニットとアームベースを用いることで,測定部位の安定化とポジショニングの再現性の高さを実現している。測定には2種類の特性の異なるセンサーを利用したdual energy X-ray absorptiometry(DXA)法が採用されており,胸部X線撮影の約1/10の低線量で測定可能である。測定結果は測定後すぐにソフトウエア上に表示され,サーバへの保存やCD-Rへの出力,プリンタに接続してレポートとして出力,なども可能である。なお,以前の「B-Cube」はパープルのみのカラー展開であったが,B-Cube plusでは新たにベージュとブルーが追加され,施設のインテリアなどに合わせて選択することが可能となった。
EchoSシステムは,超音波を用いてガイドラインが推奨する腰椎および大腿骨の測定が可能な装置。骨粗鬆症診断のゴールドスタンダードであるDXA法との相関性の高いREMS(radiofrequency echographic multi-spectrometry)法を用いて,信頼性の高い測定結果を得ることができる。X線を使用しないため管理区域のない施設にも設置可能で,被ばくリスクがないためX線検査を避けたい妊婦の検査や健診などにも用いることができる。測定は非常に簡単で,専用のコンベックスプローブを用いて,腰椎は約80秒,大腿骨は約40秒走査するだけで骨密度を測定可能。医師や診療放射線技師はもとより,臨床検査技師や看護師が検査を行えることも利点である。さらに,EchoSシステムでは新たに,超音波検査オプション「EchoSK」の搭載が可能となった。専用ソフトウエアを追加することで,骨密度測定装置としてだけではなく,通常の超音波診断装置としても使用することができる。なお,EchoSシステムは,スタンドに搭載して院内で使用するパネルPCタイプの「EchoStation」と,専用カートに収納し持ち運びも可能なモバイルタイプの「EchoS」,EchoStationとEchoSを組み合わせた「EchoStationモバイルハイブリッド」の3タイプがラインアップされている。

前腕専用のX線骨密度測定装置「B-Cube plus」
(左からパープル,ベージュ,ブルー)

グリップユニットとアームベースを用いて再現性の高いポジショニングが可能

超音波骨密度測定装置「EchoSシステム」
●放射線治療関連では,CQ Medical社としては初出展の製品などを中心に展示
放射線治療関連の製品も多数展示されたが,今回はCIVCO Radiotherapy社とQfix社がCQ Medical社へとブランド統合後,初出展となったこともあって,ブース前面に大きくCQ Medical社の展示スペースが設けられ,存在感を示していた。放射線治療用患者固定プラットフォーム「Alta」は,ITEM初出品。サーモプラスチックマスクや「FlexLokニーサポット&フットサポート」などのAltaに対応する患者固定具を,治療ニーズに合わせて手早くセットアップ可能なオールインワンソリューションである。患者ごとに異なる固定具をシームレスに組み替えて使用可能で,異なる装置や環境で使用しても再現性高く患者をセットアップすることができる。頭頸部固定システム「Encompass」は,「SRS Fibreplastシステム」と組み合わせることで,定位放射線治療におけるサブミリメートル精度の位置決めや固定を簡単に行うことができる。患者固定用バキュームクッション「VacQfix」は,固くなるまでコンプレッサーで中の空気を抜くことで患者を固定し,治療期間中の患者の体位や位置精度および再現性を保つことができる。表面の素材を滑りの良いものにすることで,微調整のために移動しやすいのも特長である。患者固定クッション「Vac-Lok」も同様に使用できるが,こちらは表面に滑りづらい素材が使用されており,ニーズに応じて選択することができる。

放射線治療用患者固定プラットフォーム「Alta」にさまざまな固定具をセットアップ

頭頂部固定システム「Encompass」と「SRS Fibreplastシステム」(黄色のメッシュ部分)

患者固定用バキュームクッション「VacQfix」

患者固定クッション「Vac-Lok」
これらのほか,放射線診断関連の製品として,Pearl Technology社の「ProFoamテーブルマット」と「CTテーブルカバー」が展示された。ProFoamテーブルマットは,画像診断時の患者の位置決めや固定に使用でき,再現性のある位置決めをサポートする。ニーズに合わせて,滑りやすいスライド仕様と滑り止め仕様を選べるほか,患者の位置調整を行う際につかみやすいグリップ付きとグリップなしを選択できる。
●お問い合わせ先
社名:東洋メディック株式会社
住所:〒102-0072 東京都千代田区飯田橋3-8-5
TEL:03-6825-1645
URL:https://www.toyo-medic.co.jp/