聖隷浜松病院

GEヘルスケア・ジャパンは2013年10月5日（土），社会福祉法人聖隷福祉事業団聖隷浜松病院（静岡県浜松市）において，音のしないMRI検査を実現する技術「SILENT SCAN」の報道関係者向け体験会を行った。

SILENT SCANは，同社が9月10日に発表した新技術。この技術を搭載した「Discovery MR750w 3.0T」と「Optima MR450w 1.5T」が9月18日から発売されている。SILENT SCANは，“Humanizing MR”というコンセプトの下に，「やさしさと快適さ」をもたらす画期的な技術として，RSNA 2012や今春の2013国際医用画像総合展でも紹介された。SILENT SCANは，3つの新しい技術が組み合わされて実現した。1つは新開発のソフトウエアである「Silenz」で，傾斜磁場コイルを振動させずに撮像できるようになった。さらに，Silenzに対応するハードウエア技術として，高速かつ安定性の高い電源システム，高速に送受信を切り替える“Ultra-fast RF switching”搭載コイルが開発されたことで可能となった。現在，この“Ultra-fast RF switching”搭載コイルは，ヘッドコイルとフレックスコイルが用意されている。また，SILENT SCANが行えるシーケンスは，いまのところ，位置決め，T1WI，MRA（Discovery MR750w 3.0Tのみ）となっている。

SILENT SCANを搭載したDiscovery MR750w 3.0Tと検査を担当した放射線部放射線課の杉村正義係長

今回の体験会は，臨床評価を行うため8月にDiscovery MR750w 3.0TへSILENT SCANを搭載させた聖隷浜松病院が会場となった。取材記者ごとに実際に寝台に横になり，ガントリ内でSILENT SCANと従来の撮像音を聞き比べるという形がとられた。撮像は，まず位置決めスキャンを行った上で，SILENT SCANによるT1WI，もしくはMRA，次いで従来の方式での撮像という流れで行われた。通常の検査では，耳栓を装着するが，体験会では騒音を比較するため，何もつけない状態で進められた。SILENT SCANでは，撮像音がかすかに聞こえるだけで，むしろコンプレッサーの音の方が聞こえるレベルであり，工事現場の削岩機やドリルのような通常の撮像音とは比較にならないくらい静かである。耳栓をしていれば，ほとんど気にならないであろう。同社では，撮像していないときの環境音に対して3dB以下という音量とアナウンスしているが，その言葉を実感することができた。さらに，驚くのは，通常撮像時に発生する振動がSilenzによって解消され，寝台ごと揺すぶられることなく，検査を受けることができることである。この撮像音と振動をなくすことで，被検者が感じる安心感は大きい。これまで閉所恐怖症などにより検査を受けることができなかった被検者へのMRI検査の適応を広げる可能性がある。また，今年5月に日本小児科学会，日本小児麻酔学会，日本小児放射線学会が提言をまとめるなど，小児MRI検査での鎮静剤の使用が問題となっているが，SILENT SCANによって鎮静剤の量を減らすといった，より安全性の高い検査の施行にもつなげられる可能性を持っている。

体験会のあった10月5日の時点で，聖隷浜松病院ではSILENT SCANの臨床評価を継続しているが，画質についても高い評価が得られている。同院放射線科部長の増井孝之氏は，「T1WIはコントラストが非常に高く，また3D撮像でも高精細に描出できています」と述べている。また，MRAでは，Ultra-fast RF switchingによってTEを0にできるので，高い信号均一性を持つ画像を得られる。こうした画質面での優位性もあることから，増井氏は，今後T2WIにも対応できれば検査の適応が広がるとして，「フォローアップなど複数回検査を行うような症例や，脳ドックなどの検診では，さらに有用性を発揮すると思います」と語っていた。

GEヘルスケア・ジャパンとしても，今後さらにSILENT SCANに対応するシーケンスを増やすことをめざしているという。そう遠くない将来，「音のしないMRI」による被検者に優しいルーチン検査が可能になることが期待される。

Ultra-fast RF switchingを搭載した ヘッドコイル

SILENT SCANで撮像したT1WI画像