世界初三次元スキャニング照射法を採用の重粒子線治療施設「i-ROCK」が稼働開始
神奈川県立がんセンターでi-ROCKの開棟式・内覧会を開催
2015-12-8
施設外観
神奈川県立がんセンターは2015年12月5日(土),世界で初めてとなる三次元スキャニング照射法を搭載した重粒子線治療装置を有する施設「i-ROCK(ion-beam Radiation Oncology Center in Kanagawa)」の稼働を開始した。同日には,同施設の管理・研究棟(神奈川県横浜市)にてi-ROCKの開棟式・内覧会が開催された。
今回稼働するi-ROCKは,2005年より神奈川県で採択されている「がんへの挑戦・10か年戦略」で,神奈川県立がんセンターの総合整備の一環として2015年度導入をめざして建築された国内で5施設目の重粒子線施設。2010年に稼働した群馬大学,2013年に稼働した九州国際重粒子線がん治療センターと同じく小型の重粒子線治療施設であるとともに,がん専門病院併設で,治療室すべてにCT装置が整備されている国内初の施設となる。がん専門医が選択できる治療法の選択肢が増え,CTで重粒子線の治療効果の検証を即時にできるだけでなく,将来的には照射前にCTを撮影し,位置照合や治療計画の修正をその場で行うことも検討されている。
また,今回(株)東芝が開発した重粒子線装置は,世界初となる三次元スキャニング照射法を導入している。これまで建設された4施設の重粒子線治療装置では,患者の体外でビーム形状を成形し線量を投与するワブラー法(ブロードビーム法)が採用されていたが,i-ROCKでは細いビームで一筆書きに三次元形状を塗りつぶして線量を投与するスキャニング法(ペンシルビームスキャニング法)が採用されている。ワブラー法では,照射線量の制御が容易であり稼働から年数が経過しているため技術的にも成熟しているなどの利点があるが,複雑な照射野に対応することが難しく,ビームの停止位置を腫瘍の最深部形状に合わせるための補償フィルタを工場で作製するなどコストと治療開始までに時間を要する問題点がある。スキャニング法では要求される技術は高いが,ワブラー法の課題である複雑な照射野に対応が可能で,補償フィルタなどが不要のため,高精度な治療を早期に開始することが可能となっている。
開棟式では,まずi-ROCKの開棟を祝い参列者によるテープカットが行われた。続いて,神奈川県知事の黒岩祐治氏,神奈川県立病院機構理事長土屋了介氏,神奈川県議会議長土井りゅうすけ氏,横浜市医療局長城 博俊氏が,i-ROCKの開棟に伴う挨拶をし,それぞれがi-ROCKのがん対策・がん治療への貢献について期待を示した。続いて,i-ROCKの建設に協力した12社を代表し,(株)東芝代表執行役副社長綱川 智氏をはじめとした3名に感謝状の贈呈が行われた。
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次に重粒子線治療とi-ROCKの概要について,神奈川県立がんセンター放射線治療部長の中山優子氏と同部物理工学科長の簑原伸一氏より説明が行われた。両氏はi-ROCKが三次元スキャニング照射法を採用した最新の重粒子線装置を設置していること,がん専門病院に併設された国内初の重粒子線施設であること,治療室にすべてCTが整備してあることなどを挙げ,i-ROCKのがん治療に対する自信を見せた。
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今後i-ROCKでは,12月中旬より臨床試験を開始し,2017年3月までに4室の治療室が稼働する予定となっている。また,治療の適応として,すでに稼働中の4施設で報告されている前立腺がん,頭頸部がん,骨軟部腫瘍,肝臓がん,肺がんが予定されており,神奈川県立がんセンターの特徴として,肺がん,肝臓がんに加え,膵臓がんの患者が多いことから,それらの疾患での治療が特に多いのではないかと考えられている。
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●問い合わせ先
(株)東芝 広報・IR室
TEL 03-3457-2100
http://www.toshiba.co.jp/
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