放射線医学総合研究所と東芝が世界初の重粒子線がん治療用の回転ガントリを開発
放医研の新治療研究棟にて完成発表会を開催
2016-1-14
開発された重粒子線がん治療用回転ガントリ外観
国立研究開発法人放射線医学総合研究所(以下,放医研)と株式会社東芝は,世界初の超伝導技術を用いた重粒子線がん治療用回転ガントリを開発した。放医研の新治療研究棟(千葉県千葉市)に設置され,2016年1月8日(金)には完成発表会が行われた。
今回開発されたガントリは,X線治療装置や陽子線治療装置では標準とされてきた360°任意の方向からの照射を重粒子線がん治療装置で実現したもの。重粒子線がん治療は,腫瘍への効果が高く正常組織の被ばく量が小さい有効な放射線治療法であるが,バックヤードの装置が非常に大型となるため,固定照射が標準とされてきた。固定照射では,最適な部位に照射するためには患者に回ってもらう必要があるなど身体的な負担や適応の限界があり,重粒子線がん治療普及への大きな課題となっていた。この解決に向けて,ドイツのハイデルベルグイオンビームセラピーセンターで世界初の重粒子線がん治療装置の回転ガントリが開発・設置されたが,搭載する電磁石が大きく,ガントリ全体が大型化してしまったため,その後普及しなかったという経緯がある。今回開発された回転ガントリはこの大型化した電磁石を超伝導技術により小型化したことにより,陽子線ガントリと同程度の普及可能なサイズを実現した。また,この装置が設置されている治療室には,腫瘍に線量を集中できる三次元スキャニング照射装置と画像処理で腫瘍周辺の動きを追跡するX線呼吸同期装置も併せて設置されており,正常組織を取り囲む腫瘍にも正確に線量を集中させることができるようになっている。
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発表会では,まず,放医研重粒子医科学センター長の鎌田 正氏が開発した回転ガントリについて,超伝導開発で最先端を誇る東芝社の技術力と放医研が20年培った重粒子線治療のノウハウが合わさってはじめて実現できた重粒子線治療におけるエポックメイキングであるとし,これからの重粒子線治療が大きく変わるのではないかと自信をにじませた。
次に,東芝代表取締役副社長である綱川 智氏が挨拶した。綱川氏は,今回の回転ガントリが海外の研究者からも興味を持たれており,今後より普及しやすいシステムを開発し,世界に供給することで医療に貢献したいと展望を述べた。
続いて,東芝電力システム社原子力事業部長の畠澤 守氏が,原子力事業部が持つ超伝導や加速器などの先端技術と原子力発電所の建築技術などを取り入れることで今回の回転ガントリの開発が実現できたと語った。
最後に,放医研重粒子医科学センター次世代重粒子治療研究プログラムリーダーの白井敏之氏が,今回開発された重粒子線がん治療用の回転ガントリに関する技術的な説明を行い,今後重粒子線がん治療の普及が促進されるだろうと期待を示した。
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