シーメンス,血管撮影装置「ARTIS pheno」を発売,東京慈恵会医科大学で国内1号機が稼働

2017-4-4

シーメンスヘルスケア

ハイブリッド手術室


東京慈恵会医科大学附属病院が導入したARTIS pheno国内1号機

東京慈恵会医科大学附属病院が導入した
ARTIS pheno国内1号機

シーメンスヘルスケア(株)は,ハイブリッド手術室に対応した最新型の血管撮影装置「ARTIS pheno(アーティス・フィノ)」を2017年3月28日(火)に発売した。シーメンスは同日,ARTIS phenoを先行導入した東京慈恵会医科大学附属病院と共同で,「最新のハイブリッド手術について」と題したプレスセミナーを同院(東京都港区)にて開催した。

ARTIS phenoは,次世代の血管撮影装置と位置づけられ,通常のインターベンションだけでなく,経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI / TAVR)などのハイブリッド手術に最適化されている。Cアームの内径を従来機から13cm拡大。アーム内のフリースペースを95.5cm確保したことで,患者へのアクセス性を向上させた。これにより,体格の大きい患者の場合でも十分な手技のスペースを得ることができ,回転撮影も容易に行える。さらに,ARTIS pheno専用に設計された4方向傾斜機能付テーブルの耐荷重は患者体重280kg。心肺蘇生時には340kgまで対応する。加えて,トルンプ社とゲディンググループ社の手術台と組み合わせることも可能で,高度な外科的処置も行える。高感度FD“zen40HDR”とX線管“GIGALIX”により,被ばく低減を図りつつ高画質化を実現。撮影だけでなく透視でも2Kイメージングにも対応した。このほか,コーンビームCT技術の“syngo Dyna CT”も改良され,従来より造影剤量を低減でき,四肢のCO2造影も可能になった。

プレスセミナーでは,代表取締役社長兼CEOの森 秀顕氏とシーメンスヘルスケアGmbHアドバンストセラピービジネスエリアのシニアバイスプレジデントであるピーター・ザイツ氏,東京慈恵会医科大学附属病院院長の丸毛啓史氏,同院の脳神経外科教授・村山雄一氏,血管外科教授・大木隆生氏,心臓外科教授・坂東 興氏が登壇し,ARTIS phenoの使用経験の解説を行った。また,村山氏はセミナー後,ARTIS phenoを設置したハイブリッド手術室にて,実際の動作などを紹介した。

冒頭,挨拶に立った院長の丸毛氏は,「当院では,脳心血管診療を大きな柱の一つとして取り組んでいる。シーメンスの血管撮影装置は,従来機の「ARTIS zeego」を国内1号機として導入しハイブリッド手術に使用しており,ARTIS phenoについても脳心血管診療に大きな力を発揮すると期待を寄せている。今後もシーメンスと協働し,より良い医療を提供していきたい」と述べた。

次いで登壇した森氏は,ARTIS phenoについて,「より低侵襲で正確な手術を行うためのソリューションを提供でき,患者や家族の負担を軽減し,医療機関にとっては在院日数の短縮など経営に貢献する」と説明した。また,ARTIS Phenoの製品紹介を行ったザイツ氏は,「Cアームの支持装置内にケーブル類を収めたことで,周辺機器との接触を抑えフレキシブルに駆動し,安全に手技を施行できる。また,床置式のため,天井走行式と異なりHEPAフィルタの設置に制限がなく,手術室内を清潔に保つことができる」と述べた。

丸毛啓史 氏(院長)

丸毛啓史 氏
(院長)

森 秀顕 氏(代表取締役兼CEO)

森 秀顕 氏
(代表取締役兼CEO)

ピーター・ザイツ 氏(シーメンスヘルスケアGmbHアドバンストセラピービジネスエリアシニアバイスプレジデント)

ピーター・ザイツ 氏
(シーメンスヘルスケアGmbHアドバンストセラピービジネスエリアシニアバイスプレジデント)

 

この後,ARTIS phenoの使用経験についての講演が行われた。

脳神経外科の村山氏は,脊髄・頸椎や胸椎,脳腫瘍などの治療における有用性を説明し,「syngo Dyna CTにより高精細なCTライク画像を撮れることは大きなブレイクスルーである。syngo Dyna CTを用いた“Navigation”によって,開頭クリッピング術の際に主要な血管を傷つけることなく処置でき,術後に麻痺が残るケースが激減した。syngo Dyna CTでは,頭頸部領域の撮影において従来20秒程度の撮影時間を要したが,それが6秒程度で可能になったことで被ばく低減を図れている。また,ARTIS zeegoではCアームの開口径が狭く,中下位頸椎と上位胸椎の撮影が困難であったが,ARTIS Phenoで13cm拡大されたことでできるようになり撮影範囲が広がった」とメリットを述べた。

村山雄一 氏(脳神経外科教授)

村山雄一 氏
(脳神経外科教授)

   

 

続いて,心臓外科の坂東氏が登壇。大動脈弁狭窄症に対するTAVI / TAVRなどへの適用を報告した。坂東氏は,「TAVRでの経大腿アプローチ,経心尖アプローチともに,ARTIS phenoの透視ガイド下で手技を進めることで,正確に生体弁を留置できる」と述べた。その上で坂東氏は,小切開で行う低侵襲心臓手術での大動脈弁置換術(MICS−AVR)や心房細動合併症患者に対するハイブリッド手術を解説し,ARTIS phenoが役に立つとの可能性を示唆した。

坂東 興 氏(心臓外科教授)

坂東 興 氏
(心臓外科教授)

   

 

最後に,血管外科の大木氏は,閉塞性動脈硬化症のステント治療などへの応用について講演した。「従来の頸動脈内膜剥離術では12cmほどの大きな切開痕が生じるが,ARTIS phenoを使えば術前に頸動脈プラークの位置を正確に把握でき,皮切の位置決めが容易に行え,3cmほどの傷ですむようになった。また,syngo Dyna CTによって狭窄度の同定にも有用である。腹部大動脈瘤のステントグラフト挿入術においても,ARTIS phenoのフュージョン機能により,術前に撮影したCT画像を透視画像と重ねて表示したり,造影剤なしで処置を進めることができる。これらの技術により,ARTIS phenoは高度なハイブリッド手術を安全かつ高い精度で行える」と解説した。

大木隆生 氏(血管外科教授)

大木隆生 氏
(血管外科教授)

   

 

プレスセミナー後は,東京慈恵会医科大学附属病院のハイブリッド手術室内で,ARTIS Phenoの実機を使ったデモンストレーションが行われ,アームの可動範囲や患者・術者への接近を知らせるアラーム機能などが紹介された。
解説を行った村山氏によれば,「当院には,ハイブリッド手術室が3室(脳神経外科,血管外科,整形外科,および他科)存在し,イメージガイドサージェリング(医用画像を必要とする複合的な手術)などの先進的な治療に用いられる。3室のうち2室では毎日手術が行われており,残り1室に関しても,各科の優先日や急患用の予定を定めて常に運用している。心臓外科や血管外科では,TAVIだけでなくほかの手術への利用も多く,建設予定の新外来棟にもARTIS Phenoを導入したハイブリッド手術室の増設を予定している」とのこと。

ケーブルの露出を抑えたCアーム

ケーブルの露出を抑えたCアーム

95.5cmのフリースペースを確保したARTIS phenoのアーム

95.5cmのフリースペースを確保した
ARTIS phenoのアーム

 

シーメンスヘルスケアは,ARTIS phenoを2017国際医用画像総合展[2017年4月14日(金)~16日(日),パシフィコ横浜]に出展する。

 

●問い合わせ先
慈恵大学
法人事務局
TEL 03-5400-1280
koho@jikei.ac.jp

シーメンスヘルスケア(株)
MSC本部 コミュニケーション部
TEL 03-3493-7616
http://www.siemens.co.jp/healthineers

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