第16回 マルチモダリティシンポジウム Versusが開催
——「心臓Update」をテーマに約300人が参加
2018-6-4
「心臓Update」をテーマに約300人が参加
第16回 マルチモダリティシンポジウム Versusが2018年6月2日(土),KFC Hall(東京都墨田区)において開催された。共催は富士製薬工業(株)。当番世話人は對間博之氏(茨城県立医療大学)が務め,テーマには,「心臓Update」が掲げられた。開会に当たり挨拶した對間氏は,Versusでは毎回,特定の臓器や病変に焦点を当てているが,今回は2009年以来9年ぶりに心臓をテーマにしたと述べた。そして,開催地の近くに大相撲の聖地,両国国技館があることについて触れ,相撲は『心・技・体』が大切であり,今回のテーマ『心臓』にふさわしいとまとめた。そのプログラムは,シンポジウム,教育講演,ディスカッションをメインに3部構成で組まれた。総合司会は,石風呂 実氏(広島大学病院)が務めた。
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對間氏の開会挨拶後に,富士製薬工業からの情報提供が行われ,最初のセッションとなるシンポジウムへと進んだ。テーマは「我々はここをみている,心の像」。井田義宏氏(藤田保健衛生大学病院)と西出裕子氏(岐阜医療科学大学)が座長となり,「エコー」「CT」「MRI」「核医学」「IVR」の各モダリティのエキスパートが登壇した。まず,「エコー」については,心臓超音波検査の基礎と最新動向,利点・欠点などを北川敬康氏(藤枝市立総合病院)が発表した。北川氏は,心臓超音波検査は,ファーストチョイスとなる検査であり,心臓の動き,大きさ・形,血流動態を観察できる説明。拡張障害・右心不全評価,ストレイン解析などについて解説したほか,3D wall motion trackingや4D超音波,フュージョン機能,ポケット型装置によるPOCUSといった最新動向を紹介した。その上で,北川氏は,心臓超音波は人体への侵襲性が低く繰り返し検査ができ,機動性やリアルタイム性に優れるといったメリットを説明。一方で,肺や肋骨により描出不良となることや検査者の技術により得られる画像に差があるという欠点を指摘した。
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2番目に登壇した木暮陽介氏(順天堂大学医学部附属順天堂医院)は,まず心臓分野におけるCT技術の発展について説明し,高分解能データによる三次元画像再構成での形態評価ができることが最も大きな特長であると述べた。その上で,木暮氏は,キヤノンメディカルシステムズ(株)の“SURESubtraction”による石灰化の除去,プラークの性状評価について解説。さらに,キヤノンメディカルシステムズの超高精細CT「Aquilion Precision」や(株)フィリップス・ジャパンの2層検出器搭載CT「IQon Elite Spectral CT」 といった最新ハードウエア,冠血流予備量比(FFR)を測定できる米国HeartFlowの“FFRCT”やキヤノンメディカルシステムズの“CT-FFR”についても紹介した。次いで「MRI」の発表を行った吉田学誉氏(東京警察病院)は,心臓MRIの概略として,T1強調,T2強調,心筋遅延造影MRIなどのシーケンスや,動きに弱く,コントラスト分解能が高いという特性を説明した。さらに,吉田氏は,心筋遅延造影MRIにおけるLook-Locker法などについて解説を行ったほか,不整脈症例における撮像法にも言及した。
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続いて,「核医学」に関して,須田匡也氏(日本医科大学付属病院)が発表した。須田氏は,負荷心筋SPECTの読影について解説した上で,99mTc,123I-BMIPPといった核種での心筋シンチグラフィの説明を行った。また,CTのVR画像とフュージョンして,責任血管の支配領域と心筋量を観察できるアプリケ−ションを紹介。さらに,13N-アンモニアPET/CTによる虚血性心疾患の評価や,18F-FDG PET/CT,半導体検出器搭載SPECTといった,近年の核医学のトピックスについて解説した。シンポジウムの最後は,「IVR」について高尾由範氏(大阪市立大学医学部附属病院)が発表した。高尾氏は,IVRは従来の血管内治療だけでなく近年,心構造疾患(SHD)に対する適応が進んでいるとして,ハイブリッド手術室でのTAVIについて紹介した。高尾氏は,TAVIにおける画像支援では「シンプル」「スピーディ」「効果的」「効率的」であることが重要であると指摘。術前には外科的手術かTAVIか治療法(戦術)の決定を支援し,術中はワーキングアングルなどの操作を行うのが診療放射線技師の役割であると述べた。その上で,TAVIでは,術前CTの解析画像やカンファレンスといった治療前に得られる情報の活用が大切であるとまとめた。
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この後,休憩を挟み,對間氏が座長を務め教育講演が行われた。望月輝一氏(愛媛大学大学院医学系研究科放射線医学)が登壇し,「循環器疾患の治療につながる画像診断」をテーマに講演した。望月氏は虚血性心疾患の診療の流れとCT,MRI,核医学などの検査の位置づけについて解説。急性冠症候群のリスクを画像で評価し治療戦略を立てる上で,これらのモダリティでの検査は臨床的に意義があると述べた。さらに,望月氏は,半導体検出器搭載SPECTや13N-アンモニアPET/CT,超高精細CT,CTによるFFR測定,CTパーフュージョン,圧縮センシングを用いた心臓MRIなどの説明も行った。講演の最後には,自身の経験を踏まえ,検査や診断につながるアイデアは遊び心から生まれると,参加者に語りかけた。
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さらに,休憩後,Versusが監修する書籍『超実践マニュアル』シリーズ(医療科学社)の抽選会を経て,シンポジウム登壇者によるディスカッションが行われた。井田氏,西出氏が座長を務め,バイアビリティの評価について各モダリティの有用性や課題などの意見が出されたほか,定量化や再現性などに関し,参加者からの意見も交えて話し合われた。
すべてのプログラム終了後には,代表世話人の小倉明夫氏(群馬県立県民健康科学大学)が挨拶し,Versusは,参加者がモダリティと臓器という2つの専門性を持つことを目的としており,今後もシンポジウムや書籍などを通じて情報を発信していきたいとまとめて閉会した。なお,次回は船橋正夫氏(大阪急性期・総合医療センター)が当番世話人となり,「肝胆膵脾」をテーマに2019年6月上旬に開催される予定である。
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●問い合わせ先
Versus
http://versus.kenkyuukai.jp