キヤノンメディカルシステムズが「Global Standard CT Symposium 2018」を開催
2018-8-22
東京会場の様子
キヤノンメディカルシステムズ(株)は2018年8月18日(土),「Global Standard CT Symposium 2018」を開催した。メイン会場であるJP TOWER Hall & Conference(東京都千代田区)での講演の様子は,札幌,仙台,大阪,福岡,沖縄に設けられたサテライト会場にも同時中継された。現社名となって初めての開催となる今回は,サブタイトルに「Area Detector CTの進化と次世代CTのスタンダード」を掲げ,Area Detector CT(ADCT)であるAquilion ONEシリーズの臨床報告に加え,2017年に発売した超高精細CT「Aquilion Precision」の臨床経験や,AIを用いたCT再構成技術「AiCE」の評価なども報告された。
冒頭に挨拶に立った同社代表取締役社長の瀧口登志夫氏は,2017年から2018年にかけて,ADCTの技術開発で第1回日本医療研究開発大賞・厚生労働大臣賞や,第7回ものづくり日本大賞・経済産業大臣賞を受賞したことについて,「技術の有用性が医療現場で認められ,活用されて,医療に実際に貢献していることが評価された」結果であるとし,感謝の思いを示した。また,同シンポジウムでは,次世代のGlobal Standard CTをめざす超高精細CT Aquilion Precisionについても継続的に発信を行っていくとし,今回は,AI技術の第一弾として製品化したAiCEも取り上げると挨拶した。
続いて,同社CT事業部CT開発部システム開発担当の秋野成臣氏が,「Deep Learning based Reconstruction AiCE(Advanced intelligent Clear-IQ Engine)」を報告した。AiCEは,1)低コントラスト検出能の改善,2)低線量領域での安定した画質改善効果,3)MBIR(Model Based Iterative Reconstruction)よりも短時間での画像再構成,などをコンセプトに開発され,Aquilion Precisionに実装されている。秋野氏は,AiCEの原理や効果を説明し,今後は適用領域の拡大(現在は腹部領域が対象)や,搭載装置の拡大を進めていくと紹介した。
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Session1は,五味達哉氏(東邦大学医療センター大橋病院放射線医学講座)を座長として4題の講演が行われた。
1題目に,村松禎久氏(国立がん研究センター東病院放射線技術部)が,「CT被ばく管理:画像診断管理加算3の背景と波及効果」と題して発表した。村松氏は,2018年度の診療報酬改定で新設された画像診断管理加算3の概要を述べた上で,その背景には医療被ばく管理への社会的要請があることを説明。同院では,キヤノンメディカルシステムズの被ばく管理ソフトウエアなどを用いて被ばく管理を行っており,村松氏は同院における被ばく管理の実際や,個人線量管理の考え方などを説明し,今後は,医療放射線の適正管理がより厳しく求められるようになることから,被ばく線量を記録,評価,保存するシステム構築と体制整備の準備が重要であることを強調した。
続いて,檜垣 徹氏(広島大学大学院医歯薬保健学研究科先進画像診断開発)が「DLR『AiCE』の物理特性の検証」を報告した。檜垣氏は,これまでに開発されてきたCT装置や画像再構成技術の変遷を述べた上で,高精細CTではMBIRを用いても,低コントラスト領域の画質を十分に改善できない課題があると指摘。AiCEでは,高品質な学習データを用いたディープラーニングの結果を再構成技術に適用することで,反復処理を要さずに短時間で高いノイズ低減効果を得ることができるとして,その原理を解説した。また,物理特性の検証結果を示し,現状では,低SNRではAiCEが有利であり,高SNRではMBIRの方が高画質が得られていると報告した。
3題目として,大村知己氏(秋田県立脳血管研究センター放射線科)が「ベイジアンアルゴリズムによる頭部血流灌流の評価」をテーマに講演した。同センターでは,2008年にAquilion ONEを導入し,脳卒中の評価を中心に活用してきた。大村氏は,頭部CT perfusionの画像解析について述べた上で,従来は解析手法により結果に相違があったことを説明。そして,キヤノンメディカルシステムズの画像解析ワークステーション「Vitrea」のベイジアンアルゴリズムを用いた検討を紹介し,同手法では安定した結果が得られたことを報告した。さらに,血行再建術の適応判断や手術支援,予後予測などの臨床応用を紹介し,同手法では核医学検査のような定量評価をできる可能性があることも示唆した。
Session1最後の演題として,森谷浩史氏(大原綜合病院放射線科)が,「Area Detector CTによる呼吸動態撮影の臨床応用」を報告した。森谷氏は,肺がん胸壁浸潤診断の検討や呼吸位相の検出など,Aquilion ONEを用いた呼吸動態撮影に関するこれまでの検討結果を説明し,これらの検討が呼吸動態の定量評価や,肺がんの癒着領域をカラーマップで表示する画像解析機能の開発などにつながっていることを紹介。また,呼吸の安定化を図る呼吸指示法や全肺呼吸動態撮影について述べ,ADCTでは,従来の呼吸機能検査法であるスパイロメーターでは評価できない機能の評価が可能になったと述べた。そして,全肺撮影により全肺体積や関心領域の変動の計測が可能になり,新しい呼吸機能評価ができるようになる可能性に期待を示した。
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Session2は,市川智章氏(埼玉医科大学国際医療センター画像診断科)が座長を務め,4題の発表が行われた。
はじめに,五明美穂氏(杏林大学医学部放射線医学教室)が,「超高精細CTの特性を活かした中枢神経領域における当院での取り組みと臨床応用」を報告した。五明氏は,空間分解能が大きく向上したAquilion Precisionでは,従来のCTでは難しかった穿通枝や主幹動脈皮質枝,脳表・深部の静脈の描出が可能になっていることを症例画像を示して説明。また,FIRSTによりCNRと描出能が向上することも示し,これらの描出能向上が,脳外科手術の画像支援や,脳梗塞・出血の原因血管の評価に,どのように有用性を発揮するかについて解説した。そして,CT画像の高精細化により期待と需要は増加し,解剖学的知識の習得や臨床的視点の情報共有にも有用となると締めくくった。
2題目として,中村優子氏(広島大学大学院医歯薬保健学研究科放射線診断学研究室)が「DLR『AiCE』の腹部領域における初期経験」を発表した。中村氏は,肝臓領域のCT画像は低コントラストにより病変の検出能がもともと低く,線量が十分でない場合はMBIRでノイズを低減しても病変の検出能は向上しない限界があることを説明。そして,Aquilion ONEのデータでAiCEを適用させた腹部CTの画質改善の検討を紹介し,腹部造影CTの肝腫瘍検出能を向上させる可能性があることを示した。さらに,Aquilion Precisionについても,腹部領域におけるAiCEによるノイズ低減の検討結果を紹介し,今後,さらに検討を行っていくと述べて講演を終えた。
続いて,吉満研吾氏(福岡大学医学部放射線医学教室)が「ADCTによる腹部ECV(細胞外容積)解析:肝&膵」と題し,ECVによる肝線維化診断と,正常膵への応用について報告した。肝線維化診断については,先行研究に触れた上で,Aquilion ONEを用いて行った,高精度サブトラクション法によるECVを用いた肝線維化診断の検討について紹介。平衡相をdelay time4分で撮影することで,より適正なECV計算が可能になると述べた。また,ECVの正常膵への応用について自施設での検討結果を報告し,慢性C型肝炎(CHC)患者のフォローアップにおいて,膵ECVがインスリン抵抗性を表すバイオマーカーになる可能性があると述べた。
最後に森谷氏が,「超高精細CT Aquilion Precisionの胸部における有用性について」を発表した。同院は,2017年12月に民間病院として初めてAquilion Precisionを導入し,臨床に活用している。森谷氏は,Aquilion Precisionの地域一般病院における臨床実用として,使用状況や肺結節・気管支などの臨床画像を紹介。また,Aquilion Precisionでは,胸部単純写真にも迫る超高精細な画像を得られることを報告した。また,地域連携においては,超高精細CT・動態CTを用いた特殊外来などを行っており,肺がんの術前CTでは他院から高い評価を得ていることを紹介した。
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キヤノンメディカルシステムズ(株)
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