東京大学医学部附属病院が22世紀医療センター内に寄付講座 医療AI開発学講座を開設

2018-11-15

AI(人工知能)


寄付講座 医療AI開発学講座の開設を記念して講演会を開催

寄付講座 医療AI開発学講座の開設を記念して
講演会を開催

東京大学医学部附属病院は,2018年8月に22世紀医療センターに寄付講座 医療AI開発学講座を開設した。AIとICTをベースに,高度情報社会における新たな医療・医薬サービスの開発と社会実装をめざすとしており,講座長は特任准教授の河添悦昌氏が務める。22世紀医療センターは,産学連携による最先端の臨床医学・医療関連サービスの研究を行う組織として2006年4月から本格稼働を開始。2018年11月の時点で,寄付講座13,社会連携講座3が運営されている。新設された医療AI開発学講座は,阪神調剤ホールディング(株)と(株)EMシステムズの寄付を受け,5年間の予定で活動していく。

講座長:河添悦昌 氏(東京大学)

講座長:河添悦昌 氏
(東京大学)

   

 

10月29日には同院入院棟A15階大会議室(東京都文京区)において,開設記念講演会「AIとICTが変える医療」が開催された。開会に当たり,医療AI開発学講座の協力講座である同院企画情報運営部部長(東京大学大学院医学系研究科社会医学専攻医療情報学分野教授)の大江和彦氏が挨拶に立った。大江氏は,新設された寄付講座の研究テーマとして,(1)AI技術を基盤とする「健康医療介護コミュニケーション支援システム」,(2)次世代ネットワーク情報技術を基盤とする「情報中心の非対面医療サービスシステム」,(3)AI医療の個別技術の開発とビッグデータ・知識創成の3つを挙げた。

大江和彦 氏(東京大学)

大江和彦 氏
(東京大学)

   

 

次いで,講座長である河添氏が,「AIとICTが変える医療」をテーマに講演した。河添氏はまず,エキスパートシステムや電子カルテシステム,オーダリングシステム,CADなど,医療分野におけるAIとICTの歩みついて説明。医療分野でのAI研究が進む中で,日常診療から得られるデータだけでは,AIの開発が期待できないと述べた。その上で,AIの開発には目的を持った良質なデータが必要であり,臨床に有用なデータは人手による入力でしか得られないと指摘。流通するデータをAI開発にとって価値のあるものにしなければならないと述べた。

この後,講演2として,聖マリアンナ医科大学大学院医学研究科医療情報処理技術応用研究分野(医療AI/ICTイノベーション)教授の小林泰之氏が登壇。「人工知能による次世代医療:放射線科医の立場から」と題して講演した。小林氏は,日本は国民皆保険が崩壊の危機にあり,AIとICTで医療にイノベーションを創出し,次世代医療を支えていかなければならないと述べた。その上で,AIの活用により医学が飛躍的に進歩し,医師の働き方も変わることで,「人を癒やす」という原点に立ち返ることができると言及。さらに,画像診断領域でのAI技術について解説し,放射線科医は画像情報を中心にあらゆる情報を統合して判断するデータサイエンティストの役割を果たすと述べた。講演のまとめとして小林氏は,AI時代の放射線科医には,医療全体への幅広い知識,AIとICTの基礎知識,CT・MRI・情報システムに関する最新知識,患者中心の医療の視点が求められると強調した。

小林泰之 氏(聖マリアンナ医科大学)

小林泰之 氏
(聖マリアンナ医科大学)

   

 

3番目に登壇した東京大学次世代知能科学研究センターセンター長の國吉康夫氏は,「次世代知能科学と医療への貢献可能性」をテーマに講演した。國吉氏は,同センターの活動について取り上げ,最先端のAI開発,動的実世界知能や人間的知能といった次世代AI研究,社会とAIのかかわりに関する研究などを説明した。さらに,中山英樹研究室などが取り組んでいるGANを用いたMR画像の生成に関する研究などを解説したほか,人材育成のための活動についても紹介した。

國吉康夫 氏(東京大学)

國吉康夫 氏
(東京大学)

   

 

医療AI開発学講座では,今後医療AIの研究者支援を行っていくほか,人材育成にも取り組んでいく。さらに,診療科や学部の枠を超え,共同研究にも力を入れるとしている。

 

●問い合わせ先
東京大学大学院医学系研究科
医療AI開発学講座
TEL 03-5800-9077
E-mail aih-office@m.u-tokyo.ac.jp

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