FileMaker カンファレンス 2018
FileMakerプラットフォームでの医療ITシステムの構築をユーザー自らが講演
2018-11-20
「学ぶことは、創造のはじまり イノベーションは、
あなたから」が今回のメッセージ
ファイルメーカーカンファレンス2018が,2018年11月7日(水)〜9日(金)の3日間,虎ノ門ヒルズフォーラム(東京都港区)で開催された。カンファレンスでは,同社社長のビル・エプリング氏によるオープニングセッションや米国本社FileMaker,incの担当者による基調講演のほか,ユーザー導入事例を紹介するビジネスセッション,作成方法や技術動向を解説するテクニカルセッションなど50を超えるセッション,パートナー企業による展示,ワークショップなど多彩なプログラムが設けられた。
カンファレンス3日目の9日には,恒例となった日本ユーザーメード医療IT研究会(J-SUMMITS)との共催によるメディカルトラックが行われた。メディカルトラックでは,8つのセッション,ランチョンとスイーツのプログラムが行われたが,その中からピックアップして紹介する。
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「M-5:超急性期領域におけるFileMakerプラットフォームを用いたシステム開発とその未来」では,日立総合病院救急集中治療科の医師で,TXP Medical(株)の代表取締役を兼務する園生智弘氏が登壇し,自らFileMakerプラットフォームで開発した「Next Stage ERシステム」について概要を紹介した。Next Stage ERシステムは,救急外来における情報共有と効率的なカルテ記載のためのツールとして開発された。園生氏は,従来の救急医療ではカルテ記載が負担になっており,記録をしても後利用できないという二重のハンデがあったと述べ,Next Stage ERシステムではフリーテキストを独自のテキスト解析とコーディングによって自動的に標準形式に変換して保存する仕組みを開発し実装した。これによって,カルテの記載がそのまま研究などのデータ利活用が可能な形式で保存できる。園生氏は,入力や参照系のフロント部分と言語変換のスクリプトなどはFileMakerプラットフォームで開発しているが,救急など急性期領域のサイクルの早い要望にも迅速に対応でき,トライアンドエラーが容易に行えることがメリットだと述べた。また,医療言語処理技術については,TXP MedicalとしてきりんカルテシステムなどとのSOAPの自動振り分けの共同開発や戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の研究助成事業に採択されるなど,幅広く事業を展開していることを紹介した。
「M-6:FileMaker プラットフォームで推進するAST抗微生物剤適正使用」では,中国労災病院感染対策室の小西央郎氏が院内での抗菌薬適正使用チームの業務を支援するためにFileMakerプラットフォームで構築したシステムの運用を紹介した。薬剤耐性(Antimicrobial Resistance:AMR)は全世界的な脅威となっており,世界保健機関(WHO)は2015年に世界行動計画「薬剤耐性に関するグローバル・アクション・プラン」を採択した。日本でも2018年の診療報酬改定で抗菌薬適正使用支援加算が追加され,医療機関には感染予防と適正な抗生剤の使用が求められている。同院では,以前から院内感染対策のためのシステムをFileMakerプラットフォームで構築してきたが,今回,抗微生物剤の適正使用(Antimicrobial Stewardship:AMS)を支援するチーム(AST)向けの機能を追加した。特定抗菌薬を処方する際に電子カルテ上で抗菌薬届出を電子的に行う仕組みを採用し,それをトリガーとして患者のリストアップ,評価のために検査結果や体温などのデータを電子カルテから抽出し,そのデータを基に感染症対策室でレポートを作成して,主治医にフィードバックしている。小西氏は,これらの運用に加え,新たに取り組んだFileMakerと電子カルテシステムのODBC接続のTIPSや,AppleScriptの活用方法などを解説した。
「M-8:当院におけるIoTネットワークの活用〜FileMakerプラットフォームで“つなぎ”“見守る”未来への挑戦〜」を講演した松波総合病院の深澤真吾氏は,新しい無線通信技術LPWA(Low Power, Wide Area)のソリューションである「Sigfoxネットワーク(Sigfox)」とFileMakerプラットフォームで構築した同院でのIoT(Internet of Things)の取り組みを紹介した。Sigfoxは,920MHz帯を利用し,低消費電力(約1年持続)で長距離伝送(数km)が可能なIoT端末で,温度,湿度,照度,ドアの開閉などのデータを取得して伝送できる。データはSigfoxのサーバに転送され,そのデータをFileMaker data APIで取り込み,スクリプトを使って処理が可能になっている。今回は,温度・湿度を取得して送信するシステムを構築し,異常を検知したらパトライトで警告し,SNSで通知を送信できるようにした。深澤氏は,Sigfoxによる構築のメリットとしてカバー域が広く,手軽に構築でき,バッテリーが長持ちすることを挙げ,デメリットとして送信できる情報量が少ないこと,電波が弱く遮蔽物に弱いことを挙げた。深澤氏は,FileMakerプラットフォームを利用する最大のメリットとして,iOS12のショートカット.appなどを使って容易に構築できることを挙げ,今後,必要性が高まる患者見守りシステムの構築に,院内・在宅を問わず活用できるのではないかと述べた。
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ショウケース会場では,カスタムAppを手掛けるシステムベンダーのほか,クラウドやホスティングなどのサービス,スキャナ,プラインタのハードウエアまで38社が出展した。また,ファイルメーカー社による恒例の“FileMaker Bar”や,iOSのFileMaker Goのアプリを直接触れるコーナーなども用意され,多くの来場者でにぎわっていた。
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●問い合わせ先
(株)ペッププランニング内
FileMaker カンファレンス 事務局
TEL 045-680-2125
E-mail:fmc@filemaker.com