キヤノンメディカルシステムズが「画論 26th The Best Image」を開催

2018-12-18

キヤノンメディカルシステムズ

CT


約400名のユーザーが集まった「画論 26th The Best Image」

約400名のユーザーが集まった
「画論 26th The Best Image」

キヤノンメディカルシステムズ(株)は2018年12月16日(日),「画論 26th The Best Image」を東京国際フォーラム(東京都千代田区)にて開催した。画論は,同社ユーザーから応募された臨床画像を,診断・治療に必要な画像のクオリティはもとより,被検者へのメリット,撮影・処理技術の工夫など,臨床価値を総合的に判断し,“最良のイメージ“を選定する試みで,今回で26回目となる。同日午前には厳正な二次審査を通過した上位入賞画像のディスカッションが行われ,最終審査を経て表彰式が行われた。今回は,CT,MR,超音波の3部門に447件の応募があり,最終選考となるディスカッションには57件が進んだ。

CTは,1〜160列部門,1〜160列(心血管)部門,Aquilion ONE部門,Aquilion ONE(心血管)部門の4部門で20件が入賞。MRは,1.5テスラ以下(脳神経)部門,1.5テスラ以下部門,3テスラ(脳神経)部門,3テスラ部門,Clinical Update賞の4部門・1賞で20件が入賞。超音波は,血管部門,心臓部門,乳腺・甲状腺・表在部門,腹部部門,運動器・リウマチ部門の5部門で17件が入賞した。入賞画像のディスカッションを経て,最優秀賞,優秀賞,テクニカル賞が決定される。なお,MR部門に設けれたClinical Update賞は,過去の画論での入賞画像を参考として,同様の撮像条件で新たに撮像した結果,より臨床的価値が高いと認められた画像に与えられる賞で,Clinical Update賞への限定応募のため,優秀賞・最優秀賞の選考対象とはならない。

CT部門のディスカッション会場

CT部門のディスカッション会場

MR部門のディスカッション会場

MR部門のディスカッション会場

   
超音波部門のディスカッション会場

超音波部門のディスカッション会場

 

 

午後に行われた特別講演は,CT/MR,超音波に分かれて2会場で行われた。
CT/MR講演は,「AIとモダリティの融合による新たな進化」と題して,大阪大学大学院医学研究科放射線統合医学講座放射線医学教室教授の富山憲幸氏を座長として行われた。

CTでは,広島大学大学院医歯薬保健学研究科放射線診断学研究室教授の粟井和夫氏が「Deep LearningがもたらすCT画質のquantum leap」を講演した。粟井氏は,キヤノンメディカルシステムズとともに開発,検証を行ってきたDeep Learning Reconstruction(DLR,「AiCE」の名称で製品化)について,概略と臨床応用例,物理特性を解説した。DLRは,AIの手法の一つであるDeep Convolutional Neural Network(DCNN)を用いて画質の改善を図る。DLRの教師データには,キヤノンメディカルシステムズのMBIR(FIRST)を強化したアルゴリズムを適用してノイズ除去を行った画像を使用,学習データとしてはさまざまな線量,ノイズの画像,ファントムデータなど10万patchを使用した。DLRの処理時間としては,Aquilion ONE/GENESIS Editionで秒間21枚(71.2T FLOPS)と高い処理速度になっている(なおAIDR 3Dは23枚,FIRST2.8枚)。また,DLRの臨床評価として,心臓,腹部,低線量肺がん検診,高精細CT(Aquilion Precision)についてHybrid IR(AIDR 3D)やMBIRの画像と比較し,DLRが高い画質改善効果を持つことを紹介した。物理特性についてはノイズ特性,高コントラスト分解能(空間分解能),低コントラスト分解能(検出能)の検討結果を説明し,DLRは低線量から標準線量で最も高画質となる画像再構成であると述べた。粟井氏は,DLRは強力なノイズ低減を可能とするにもかかわらず,高い空間分解能を維持でき,今後,画像再構成の標準オプションとなっていく可能性があると示唆して講演を締めくくった。

MRは,「画像診断と機械学習 そしてDeep Learning ReconstructionによるMRI画像にあたえるインパクト」を,熊本大学大学院生命科学研究部放射線診断学分野教授の山下康行氏が講演した。山下氏は,最初に機械学習,人工ニューロン(perceptron),ニューラルネットワーク,そしてディープラーニングについて概説し,機械学習は統計学を使って未来を予測するもので,なかでもディープラーニングは複雑な分布を示すほとんどの関数をシミュレートできる強力なAIのツールであるとした。その上で,AIの登場が画像診断医の業務を奪うのではないかと懸念されたが,AIは検査依頼から読影,レポート作成,臨床科への報告まで画像診断の至るところに関与でき,画像診断に親和性が高いと考えられると述べた。次いで,キヤノンメディカルシステムズが開発中の,AIを用いたMR画像の画像改善技術であるDeep Learning Reconstruction(DLR,W.I.P.)について説明した。MRIでは,時間をかければ高精細な画像が得られるが,常に撮像時間とトレードオフの関係にありジレンマになっていた。DLRは,raw data上でのディープラーニングを利用したノイズ除去技術であり,ノイズの少ない画像を教師画像としてトレーニングを行うことで画質改善を可能にする。山下氏は,17分弱で撮像した頭部のSTIR画像について,DLRでは1分45秒の撮像時間でほぼ同等な画像が得られることを示し,拡散強調画像やテンソル画像,NODDIなどでのDLRの効果を説明した。そして,DLRはさまざまなシーケンスで利用でき,MRIの画質改善や撮像時間の短縮,さらに高分解能画像の画質向上や定量解析に寄与することも期待されるとまとめた。

座長:富山憲幸 氏(大阪大学)

座長:富山憲幸 氏
(大阪大学)

粟井和夫 氏(広島大学)

粟井和夫 氏
(広島大学)

山下康行 氏(熊本大学)

山下康行 氏
(熊本大学)

 

超音波講演は,奈良県立医科大学附属病院総合画像診断センター センター長・病院教授の平井都始子氏が座長を務め,「時代を先駆ける! 超音波画像診断の新たな進化」をテーマに行われた。講演に先立ち,同社超音波開発部主幹の嶺 喜隆氏が,「キヤノンメディカルシステムズが提供する超音波装置の最新技術」と題して技術紹介を行った。心臓の壁運動評価や肝組織性状評価のためのさまざまな機能が紹介されたほか,超高分解能を実現する技術として,33MHzの超・超高周波リニア型プローブの原理が概説され,きわめて高い描出能が得られていることが実際の画像で示された。
続いて,北播磨総合医療センター脳神経内科部長/脳卒中・神経センター副センター長の濵口浩敏氏が,「Aplio iシリーズでみる 血管エコーの世界」と題して講演した。同社超音波診断装置の血管エコー評価のための工夫点や,「Aplio iシリーズ」に搭載されているさまざまなタイプの最先端の超音波プローブについて,多数の症例画像を提示して紹介。従来のプローブよりも病変が明瞭に描出できるほか,装置の条件設定の変更やSMIなどの機能を併用することで今まで以上に詳細な病態評価が可能になったとし,症例によっては診断や治療方針が変更になる可能性が示唆された。また,同院で稼働する複数の同社製超音波診断装置の使い分けについても概説し,適切な場所に配置してこそ,それぞれの装置の真価が発揮されるとまとめた。

座長:平井都始子 氏(奈良県立医科大学附属病院)

座長:平井都始子 氏
(奈良県立医科大学附属病院)

嶺 喜隆 氏(超音波開発部)

嶺 喜隆 氏
(超音波開発部)

濵口浩敏 氏(北播磨総合医療センター)

濵口浩敏 氏
(北播磨総合医療センター)

 

特別講演終了後の表彰式では,各部門の最優秀賞発表と審査員による講評,そして同社代表取締役社長の瀧口登志夫氏から表彰が行われた。最後に挨拶に立った瀧口社長は,画像の臨床的な価値は,その時々の臨床ニーズや技術に基づいて常に変化しているとし,形態画像から機能画像へと発展する中,臨床現場におけるユーザーの日々の努力に呼応して,同社としてもさらに進化していく必要があると述べた。さらに,世界で初めてディープラーニングを使った画像再構成をCTに搭載し,今後MRへも拡大していくことで,臨床価値をさらに高める開発に尽力していくとし,ユーザーの知恵をさらに有効活用するためのツールとしてAIを開発していくとの方向性を示した。

瀧口登志夫 氏(代表取締役社長)

瀧口登志夫 氏
(代表取締役社長)

   

 

表彰式の様子

表彰式の様子

 
   
CT部門審査員。右から興梠征典 氏(産業医科大学),粟井和夫 氏(広島大学),吉岡邦浩 氏(岩手医科大学),陣崎雅弘 氏(慶應義塾大学),辻岡勝美 氏(藤田医科大学),中屋良宏 氏(静岡がんセンター),山口隆義 氏(華岡青洲記念心臓血管クリニック)

CT部門審査員。右から興梠征典 氏(産業医科大学),粟井和夫 氏(広島大学),吉岡邦浩 氏(岩手医科大学),陣崎雅弘 氏(慶應義塾大学),辻岡勝美 氏(藤田医科大学),中屋良宏 氏(静岡がんセンター),山口隆義 氏(華岡青洲記念心臓血管クリニック)

MR部門審査員。右から阿部 修 氏(東京大学),伊東克能 氏(山口大学),楫 靖 氏(獨協医科大学),小林邦典 氏(杏林大学),小野 敦 氏(川崎医療福祉大学),和田博文 氏(済生会熊本病院)

MR部門審査員。右から阿部 修 氏(東京大学),伊東克能 氏(山口大学),楫 靖 氏(獨協医科大学),小林邦典 氏(杏林大学),小野 敦 氏(川崎医療福祉大学),和田博文 氏(済生会熊本病院)

   
超音波部門審査員。右から伊藤 浩 氏(岡山大学),瀬尾由広 氏(筑波大学),松尾 汎 氏(松尾クリニックほか),濵口浩敏 氏(北播磨総合医療センター),畠 二郎 氏(川崎医科大学)

超音波部門審査員。右から伊藤 浩 氏(岡山大学),瀬尾由広 氏(筑波大学),松尾 汎 氏(松尾クリニックほか),濵口浩敏 氏(北播磨総合医療センター),畠 二郎 氏(川崎医科大学)

超音波部門審査員。右から岡庭信司 氏(飯田市立病院),小川眞広 氏(日本大学病院),平井都始子 氏(奈良県立医科大学附属病院),何森亜由美 氏(高松平和病院),高橋 周 氏(東あおば整形外科)

超音波部門審査員。右から岡庭信司 氏(飯田市立病院),小川眞広 氏(日本大学病院),平井都始子 氏(奈良県立医科大学附属病院),何森亜由美 氏(高松平和病院),高橋 周 氏(東あおば整形外科)

 

【受賞施設】

〈CT部門〉

●1〜160列部門

【最優秀賞】
岩手医科大学附属病院
「精索静脈瘤」

【テクニカル賞】
札幌医科大学附属病院
「末梢性肺動脈瘤」
一般財団法人大原記念財団 大原綜合病院
「巨大下顎腫瘍」

【優秀賞】
医療法人社団武蔵野会 TMGあさか医療センター
「TACE後のHCCに対するSURESubtraction Iodine Mappingの有用性」
社会医療法人杏嶺会 一宮西病院
「肺血栓塞栓症」

●1〜160列(心血管)部門
【最優秀賞】
平塚市民病院
「ステントグラフト内挿術後 vasa vasorumを介したtypeII endoleak」

【優秀賞】
医療法人沖縄徳洲会 湘南鎌倉総合病院
「TAA(胸部大動脈瘤)[造影剤使用量17mlで大動脈CTA]」

●Aquilion ONE部門

【最優秀賞】
岩手医科大学附属病院循環器医療センター
「右上肢AVM」

【テクニカル賞】
一般財団法人大原記念財団 大原綜合病院
「右上葉肺癌」
公益社団法人地域医療振興協会 横須賀市立市民病院
「下垂体腫瘍の疑い」

【優秀賞】
新潟市民病院
「短腓骨筋腱縦断裂または筋腱脱臼を疑った立位ストレス低線量CT」
独立行政法人労働者健康安全機構 富山労災病院
「腰椎椎弓根スクリューのルースニング評価」
地方独立行政法人 佐世保市総合医療センター
「息止め不可患者の腹部volume scan撮影の有用性」

●Aquilion ONE(心血管)部門

【最優秀賞】
医療法人春林会 華岡青洲記念心臓血管クリニック
「たこつぼ型心筋症」
京都府立医科大学附属病院
「主要大動脈肺動脈側副血行路」

【テクニカル賞】
医療法人春林会 華岡青洲記念心臓血管クリニック
「狭心症疑い」
順天堂大学医学部附属順天堂医院
「心房中隔欠損症」

【優秀賞】
社会医療法人財団石心会 川崎幸病院
「腹部アンギオで損傷部同定が困難であったグラフト損傷例の4D-CTA」
日本赤十字社 和歌山医療センター
「胸部大動脈瘤ステント留置後endoleak」
社会医療法人財団池友会 福岡和白病院
「不全穿通枝同定における4D-CTV」

〈MR部門〉

●1.5テスラ以下部門

【最優秀賞】
自治医科大学附属さいたま医療センター
「椎骨動脈解離疑い」

【テクニカル賞】
公益財団法人小倉医療協会 三萩野病院
「肩関節領域における1minute T2map」

【優秀賞】
医療法人社団千栄会 高瀬クリニック
「超音波で発見された右冠動脈由来の巨大腫瘤」
医療法人顕正会 蓮田病院
「右足部腫脹」
自治医科大学附属さいたま医療センター
「血管腫を併発した多発奇形(ブラッドアクセス挿入血管の検索)」
草加市立病院
「発作性斜頸における頭頚部動脈の評価」
医療法人社団 CVIC 心臓画像クリニック飯田橋
「心アミロイドーシス」
一般財団法人津山慈風会 津山中央病院
「クローン病におけるDirect Coronal Computed DWI」
医療法人社団大谷会 島の病院おおたに
「腎静脈Time-SLIP法」

●1.5テスラ以下(脳神経)部門

【最優秀賞】
社会福祉法人恩賜財団 済生会熊本病院
「脳動静脈奇形(AVM)」

【テクニカル賞】
医療法人暁会 安永脳神経外科
「左内頸動脈狭窄症におけるSTA-MCAバイパス術」

【優秀賞】
医療法人社団三喜会 横浜新緑総合病院
「動脈瘤血栓化」

●3テスラ部門

【最優秀賞】
自治医科大学附属さいたま医療センター
「脾動脈瘤」

【テクニカル賞】
福山市民病院
「食道がん術前検査における胸管撮像」

【優秀賞】
社会医療法人社団三思会 東名厚木病院
「前立腺癌 FASE DWI」
社会医療法人社団慈生会 等潤病院
「頸部腫瘍(アテローム)疑い」

●3テスラ(脳神経)部門

【最優秀賞】
社会医療法人社団慈生会 等潤病院
「左内頸動脈狭窄により左の脳血流速度が低下した一例」

【優秀賞】
藤田医科大学病院
「AVM」

●Clinical Update賞

JA新潟県厚生連 佐渡総合病院
「右椎骨動脈解離」
社会医療法人社団慈生会 等潤病院
「右内頸動脈狭窄」

〈超音波部門〉

●心臓部門

【最優秀賞】
岡山大学病院
「修正大血管転位:左室流出路形成術後の導管狭窄」

【優秀賞】
国立研究開発法人国立循環器病研究センター
「巨大心房中隔瘤を合併した心房中隔欠損(ASD)の一例」
九州大学病院
「Smart Fusion機能を用いて右鎖骨上窩アプローチにて超重症大動脈弁狭窄症と診断できた一例」
地方独立行政法人 筑後市立病院
「先天性大動脈縮窄症」

●血管部門

【最優秀賞】
東邦大学医療センター大橋病院
「左外腸骨静脈瘤」

【優秀賞】
一般財団法人厚生会 仙台厚生病院
「腸骨静脈圧迫症候群」
滋賀県立総合病院
「頸部動脈瘤」
関西電力病院
「下肢深部静脈血栓症(左膝窩静脈弁尖血栓)」

●腹部部門

【最優秀賞】
日本赤十字社 成田赤十字病院
「索状物性イレウス」

【優秀賞】
医療法人共生会 松園第二病院
「虫垂憩室症」
日本赤十字社 相模原赤十字病院
「S状結腸腫瘍手術待機中に発症した上腸間膜動脈閉塞症による腸管気腫」
飯田市立病院
「RFA治療後に生じた肝仮性動脈瘤」
北九州市立八幡病院
「診断から治療まで超音波検査を活用し完遂した小児腸重積症の一例」

●乳腺・甲状腺・表在部門

【最優秀賞】
社会医療法人禎心会 札幌禎心会病院
「下咽頭癌術後再発 放射線治療後皮膚潰瘍の一例」

【優秀賞】
東京医科大学八王子医療センター
「良性汗腺腫瘍(Poroid cell neoplasm)」
金沢医科大学病院
「左大腿部内に10年くらい前から認める3.5cm大の皮下腫瘤」

●運動器・リウマチ部門

【最優秀賞】
医療法人 豊田会 刈谷豊田総合病院
「特発性後骨間神経麻痺の症例」

 

●問い合わせ先
キヤノンメディカルシステムズ株式会社「画論 ザ・ベストイメージ」事務局
メールアドレス:thebestimage@medical.canon
TEL 03-6369-9400
受付時間:9時~17時(土・日・祝日・休業日を除く)
https://jp.medical.canon/

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