日立製作所が「Hi Advanced MRセミナー in Japan HITACHI 3T MRI × AI 未来への挑戦」を開催
2019-1-15
東京会場の様子
(株)日立製作所は2019年1月12日(土),「Hi Advanced MRセミナー in Japan HITACHI 3T MRI × AI 未来への挑戦」を開催した。上野イーストタワー(東京都台東区)の本会場で行われたセミナーの様子は,札幌,仙台,名古屋,大阪,広島,福岡に設けられたサテライト会場にライブ配信され,事前の申し込みで合計616名が登録した。Hi Advanced MRセミナーは2014年に第1回を開催し,年1回の頻度で開催されてきたが,全国規模での開催は今回が初めてとなる。
開催直前の2019年1月9日には3T MRI「TRILLIUM OVAL」の新シリーズとなる「TRILLIUM OVAL Cattleya」が販売開始となり,セミナーではQSMなど TRILLIUM OVAL Cattleyaに搭載された新しい技術・機能のほか,2019〜2020年の実装に向けて研究が進められている技術の進捗状況も報告された。
冒頭,執行役常務ヘルスケアビジネスユニットCEOの渡部眞也氏が開会の挨拶に立った。渡部氏は,日立はMRIを注力分野と位置づけており,3T MRIは2013年に上市後,国内9施設と臨床研究に取り組んできたと述べた。そして,その成果が結実した新製品のTRILLIUM OVAL Cattleyaでは,臨床現場にさらなる臨床価値を提供できるだろうと自信をのぞかせた。また,もう一つのテーマであるAIについては,日立が得意とする領域であり,医療現場におけるAIのフロントランナーをめざすと意気込みを語った。
セミナーに先立ち,2題の技術講演が行われた。まず,「日立New 3T MRIについて」と題して発表したヘルスケアビジネスユニットの瀧澤将宏氏は,楕円傾斜磁場コイルや4ch-4port照射といった日立独自の技術や,豊富なコイルラインアップ,各種撮像技術を紹介した上で,さらなる進化を遂げたTRILLIUM OVAL Cattleyaについて,SPEED,QUALITY,COMFORTの3つの開発コンセプトに沿って特長を紹介した。続いて,ヘルスケアビジネスユニット主管技師長の尾藤良孝氏が「日立AIの最新技術とその展望」をテーマに発表した。日立は,「DI(Diagnostic Imaging)×AI(Artificial Intelligence)」をコンセプトに,画像診断の質と効率の向上を支援するAI応用の研究開発に取り組んでおり,撮像の高速化・高画質化や定量化,読影支援など,多彩な技術の開発状況が報告された。
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2部構成で行われたセミナーでは,日立3T MRIの臨床研究に取り組んできた施設から5名が演者として登壇し,臨床的有用性や研究の最新状況について報告した。
第一部では,座長を広島大学大学院医歯薬保健学研究科放射線診断学研究室教授の粟井和夫氏が務め,3題が発表された。
1題目に,名古屋市立大学病院診療技術部放射線技術科の菅 博人氏が,「4ch-4port RF送信技術と新たな短時間撮像技術の進歩」と題して報告した。名古屋市立大学病院は,2014年にTRILLIUM OVALの国内臨床一号機を導入し,日常臨床に活用してきた。菅氏は,日立3T MRIでは,4ch-4port照射技術に加え,部位ごとに適したRF照射を可能とする新技術“Regional RF shim”により,さらなる画質向上が期待できると述べ,同院で行った画質改善の検討結果を報告した。また,画像処理技術“Iterative Noise Reduction”による2D画像の高速撮像について検証結果を紹介し,安定した定量値の画像を短時間で取得できる可能性を紹介した。
続いて,東京医科歯科大学医学部附属病院放射線診断科の北詰良雄氏が,「MR enterocolonographyにおける日立3T MRI TRILLIUM OVALの有用性」と題して発表した。同院は2015年に導入したTRILLIUM OVALを用いて,クローン病を対象に小腸と大腸の評価を行うMR enterocolonographyを年間150件以上実施している。北詰氏は,検査,撮像,読影の方法を解説した上で,同院で検討を行っている視覚のみの評価による簡便なMRIスコアについて紹介した。そして,TRILLIUM OVALの特徴である広範囲撮像と良好な脂肪抑制は,MR enterocolonographyにおいて高い有用性を発揮すると締めくくった。
3題目に,広島大学大学院医歯薬保健学研究科先端生体機能画像開発共同研究講座准教授の中村優子氏が登壇し,「腹部領域における3T MRI TRILLIUM OVALの臨床的有用性」を報告した。広島大学では,2017年6月にTRILLIUM OVALを導入し,主に上腹部領域をターゲットとした共同研究を行っている。中村氏は,TRILLIUM OVALでは安定した腹部撮像が可能であることを,臨床画像を示して紹介した。また,IVIMや脂肪定量など新技術の可能性を示すとともに,同院で研究を進める肝細胞造影相のモーションアーチファクト抑制に有用なPseudo-random trajectoryについて解説した。
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休憩を挟んで行われた第二部では,岩手医科大学医歯薬総合研究所所長の佐々木真理氏が座長を務め,2題の講演が行われた。
まず,北海道大学病院放射線診断科診療教授の工藤與亮氏が,「QSM解析で広がる新しい診断の世界」と題して発表した。工藤氏は,QSMの基礎と臨床応用を解説した上で,QSMによる認知症診断や腹部QSM(肝臓への適用)について報告した。AMEDの医療機器開発プロジェクトとして取り組む認知症診断については,日立の3T MRIでは脳表補正を行ったQSM解析が可能であることから,QSMとVBM(voxel based morphometry)のハイブリッド撮像により,海馬容積と側頭葉皮質の磁化率を評価することで診断精度が向上する可能性を示し,多施設研究の進捗状況を報告した。
最後の演題として,徳島大学大学院医歯薬学研究部放射線医学分野教授の原田雅史氏が,「形態画像と機能画像の臨床診断における調和-3D QPMの応用を通して-」を講演した。原田氏は,日立の3T MRIで研究を進める3D QPM(quantitative parameter mapping)について概説した上で,多発性硬化症やてんかんなど症例を供覧し,QPMの臨床的有用性や課題について言及した。そして,MRI検査は,現在は検査の情報量と検査時間などがトレードオフの関係にあるが,3D QPMの実用化により簡便かつ包括的・網羅的に行えるようになると述べるとともに,AIが解析技術の基盤となりうるだろうと期待を示した。
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●問い合わせ先
(株)日立製作所 Hi Advanced MRセミナー事務局
TEL 03-6284-3779
http://www.hitachi.co.jp/healthcare