日本医師会ORCA管理機構が「2018年度第2回ORCAカンファレンス」を開催
2019-2-13
日医標準レセプトソフトは1万7759施設が導入
医事会計ソフトウエアの「日医標準レセプトソフト」などを手がける日本医師会ORCA管理機構(株)は,2019年1月30日(水),日医会館大講堂(東京都文京区)において,「2018年度第2回ORCAカンファレンス」を開催した。公益社団法人日本医師会では,医療機関向けのレセプトソフトウエアを開発,提供し,ICT化を支援するORCAプロジェクトの活動を2000年から行ってきた。同社はその事業を引き続く形で,2015年12月に設立。現在は,日医標準レセプトソフト以外にも,パッケージ製品として,意見書・指示書作成の「医見書」や介護請求の「給管鳥」,訪問看護専用請求支援の「訪看鳥」などを提供している。さらに,日医標準レセプトソフトのクラウド版である「日レセクラウド」,特定健康診査用の「日特クラウド」のほか,「給管帳クラウド」といったサービスを「ORCAMOクラウド」として展開。これら以外にも医療機関のICT人材を育成するための「プログラミング講座」や「メディカルICT…養成講座」なども開催している。今回のカンファレンスでは,医療機関の関係者,メーカー・ディーラーの担当者向けに,同社の取り組みやソフトウエア,クラウドサービスの情報提供を行う機会として設けられた。
カンファレンスでは,同社代表取締役会長で,日本医師会常任理事の石川広己氏が開会の挨拶を行った。石川氏は,医療分野では人工知能(AI)やIoT,ブロックチェーンが注目を集めていると述べた上で,2020年度から始まるマイナンバーカードによるオンライン資格確認について言及。さらに,現在,実証事業が行われている全国保険医療情報ネットワークや医師資格証における日本医師会の取り組みを紹介した。また,石川氏は,ORCAMOクラウドの普及に向けて,参加者に協力を呼びかけた。
|
この後,同社代表取締役社長の上野智明氏が,同社の現状と今後についてプレゼンテーションを行った。上野氏は,日医標準レセプトソフトの普及状況について報告し,2019年1月の時点で,1万7759施設が導入していると述べた。シェアは19.9%で,レセプトコンピュータの中では2位となっており,全ユーザーによる年間レセプト請求額は2兆円を超えるという。さらに,上野氏は,日医標準レセプトソフトの今後10年間の戦略として,医事・介護の会計処理エンジンとして組み込めるようにして,「だれでも,どこからでも使用できる保険請求の基盤」をめざすと説明した。このほか,日レセクラウドや給管帳クラウドなどのORCAMOクラウド,日医標準レセプトソフトや給管鳥と連携する電子カルテなどのICT製品を紹介するWebサイト「メディカタログ 」,紹介状作成プログラム「MI_CAN」など地域医療連携をサポートする製品群を紹介した。
|
続いて,ORCAMOクラウドの拡大策の説明が行われた。先に,同社営業企画部の福田知弘氏が登壇し,日レセクラウドの現状と拡大策を報告した。同社の調査では,電子カルテ導入施設における日レセクラウドの利用者は増加しているという。福田氏は,日レセクラウドの拡大策として,(1)シングルサインオン,(2)TLS1.2対応,(3)Claim-ProxyおよびPG_Bouncerのオプション,(4)ORCAMOクラウドとメディカタログの相互連携,に取り組むと述べた。また,福田氏は,オンサイト保守とコールセンター業務によるユーザーサポートについても紹介した。次いで,同社営業企画部の中井貴士氏が給管帳クラウドの販売促進について報告した。中井氏は,まず給管帳クラウドのサービス概要や利用の流れを解説した。給管帳クラウドは,オンプレミス版の給管鳥と訪看鳥を統合したサービスで,新たに介護アセスメント機能も提供している。中井氏は今後の展開として,改元への対応やオンライン請求対策などを説明した。この後,情報提供として,同社開発部部長の西川好信氏が登壇。消費税対応として特別に行われる2019年度の診療報酬改定の概要などを解説した。
休憩を挟んだ後には,2つの講演が行われた。先に,「医師をエンパワーする電子カルテ×AI」と題して,Ubie(株)代表取締役兼医師の阿部吉倫氏が講演した。阿部氏の講演では,医師の業務負担を軽減し,診療を効率化する手段としての人工知能(AI)の活用が取り上げられた。同社が提供するAI問診票「Ubie」を用いることで,速やかに診断が行えた事例として,目々澤醫院と日本海総合病院の取り組みを紹介した。また,2番目の講演では,メディキャスト(株)アナリストの山口 聡氏が,「医業経営の課題」をテーマに,今後の医療政策とその対策を解説した。山口氏は,2020年以降予定される医師の偏在対策としての新規開業に対する規制,在宅医療対応のあり方,働き方改革などに焦点を当てた。その上で,診療所は,地域包括ケアシステムにおけるかかりつけ医になるか,専門診療所としてかかりつけ医と連携するか,といった対策が求められると説明した。さらに,山口氏は,かかりつけ医となる診療所は効率化への取り組みが不可欠であると言及した。
|
|
カンファレンス当日,翌31日には,日医標準レセプトソフトなどと連携する製品の展示も行われた。日本医師会ORCA管理機構を含め55社が出展(内訳は電子カルテ24社,予約・受付関連8社,画像・検査関連4社,介護・遠隔関連5社,その他周辺13社)。展示会場内は,多くの参加者で賑わっていた。
|
●問い合わせ先
日本医師会ORCA管理機構株式会社
TEL 03-5981-9681
https://www.orcamo.co.jp