第1回日本生物診断研究会が開催
2019-5-27
「〜生物診断の夜明け〜」をテーマに約100人が参加
一般社団法人日本生物診断研究会(JSBD)は2019年5月16日(木),TKP東京駅大手町カンファレンスセンター(東京都千代田区)において第1回目の研究会を開催した。JSBDは,「生物による診断技術を活用し,人類の健康と福祉に貢献する」ことを目的に,2018年8月に発足した。瀬戸泰之氏(東京大学大学院医学系研究科消化管外科学)が代表理事を務める。第1回目の研究会は,瀬戸氏が会長となり,「〜生物診断の夜明け〜」をテーマに掲げ,「第1回研究会に寄せて」2演題,一般口演3演題,特別講演2演題でプログラムが構成された。
最初の「第1回研究会に寄せて」では,まず瀬戸氏が「がん診断における課題と展望」と題して発表した。瀬戸氏は,最初にJSBDの設立の経緯などを説明。そして,日本のがん死が増加傾向にある一方で,現在の診断技術には限界があり早期発見・診断が困難であると述べた。その上で,早期発見・診断を可能にする技術として,線虫を用いた検査法「N-NOSE」の可能性に期待を示した。
次いで,N-NOSEを開発した広津崇亮氏〔(株)HIROTSUバイオサイエンス〕が「生物センサー:線虫」をテーマに,N-NOSEについて解説した。N-NOSEは,尿中のがんの匂いに反応するという線虫の性質を利用した検査法で,HIROTSUバイオサイエンスは2018年7月に,日立製作所と共同実験室を開設し,2020年の実用化に向けて,現在研究を進めている。広津氏は,線虫の特徴を説明した上で,生物センサーによるがんの検出について,感度が高く,安価で,安定性・客観性があることがメリットだと述べた。
|
|
この後,五十嵐 隆氏(国立成育医療研究センター)と小野けい子氏(放送大学)が座長を務め,一般口演が行われた。最初に,丸山正二氏(結核予防会新山手病院)が「消化器がんにおける線虫がん検査『N-NOSE』の検討」をテーマに発表した。本発表では,胃がんなどの消化器がん21症例にN-NOSEを実施し,95.2%の感度を得られたことが報告された。続いて,灘野成人氏(四国がんセンター)が,「尿検体を用いた線虫によるがんスクリーニング(N-NOSE)に関する臨床研究」と題して発表した。灘野氏は,167例に対して施行したN-NOSEについて,ステージ別,がん種別に報告し,感度は87.4%であったと述べた。また,3番目に魚住隆行氏(HIROTSUバイオサイエンス)が,「線虫がん検査N-NOSEの最新研究と新規技術開発」をテーマに発表した。魚住氏は,基礎研究におけるN-NOSEの有用性について説明したほか,自動解析や専用試薬,ビッグデータ解析など今後の技術開発の方向性を解説した。
次に,特別講演1,2が行われた。特別講演1は,江里口正純氏(結核予防会新山手病院)が司会を務め,江口英利氏(大阪大学大学院医学系研究科外科学講座消化器外科学)が,「膵癌の早期診断と集学的治療—残された最難治癌の克服を目指して—」をテーマに講演した。江口氏は,膵がんは,がん死亡者数で第4位であり,5年生存率も8%という低い水準であるとし,早期診断の重要性に言及。N-NOSEへの期待を示した。続く,特別講演2では,栗田 啓氏(四国がんセンター)が司会を務め,良沢昭銘氏(埼玉医科大学国際医療センター消化器内科内視鏡検査治療センター)が,「膵癌に対する内視鏡診断」と題して講演した。良沢氏は,膵がんの早期診断に期待されている検査法である超音波内視鏡について解説を行った。
低侵襲にがんの早期診断を可能にするN-NOSEは,新聞などで取り上げられ,社会的な認知度も高くなっており,当日は約100人の参加があった。最後には,JSBDの理事を務める髙本眞一氏(社会福祉法人賛育会特別顧問)が挨拶し,盛況のうちに閉会した。
●問い合わせ先
一般社団法人日本生物診断研究会
事務局(株式会社HIROTSUバイオサイエンス内)
https://www.j-sbd.org