地域包括ケアにおけるICT・ロボット活用を考える第2回FTIC研究会が開催
2019-5-27
地域包括ケアシステムにおける
ICT・ロボットの活用について情報交流
「地域包括ケアのための未来型テクノロジー研究会〔Future Technologies for Integrated Care Research Network(FTIC)」は2019年5月17日(金),TKP東京駅八重洲カンファレンスセンター(東京都中央区)において,第2回となる研究会を開催した。同研究会は,地域包括ケアシステムにおけるICT・ロボット活用に向けて研究者や技術者,臨床家などの情報交流の場として2018年11月に発足。11月29日には第1回研究会を開催した。今回は,第一部「地域包括ケアとテクノロジー」,第二部「介護ロボット,次世代型テクノロジーへのチャレンジ」の2部構成でプログラムが組まれた。
副理事長を務める田島誠一氏(YWCAヒューマンサービスサポートセンター理事長)の開会挨拶に続き,増山 茂氏(東京医科大学教授)が座長を務めて第一部「地域包括ケアとテクノロジー」が行われた。最初の演者として,田口 勲氏(厚生労働省老健局高齢者支援課課長補佐)が「介護職員と介護サービス利用者のための介護現場の革新」をテーマに発表した。田口氏は,日本の人口動態について説明した上で,超高齢社会と生産年齢人口の減少が進む中で深刻化する人手不足などの介護の問題の解決策として,介護ロボットなどのテクノロジーの活用を挙げた。その上で,厚生労働省が取り組むICT・ロボット普及のための施策を紹介した。次いで,兪文偉(千葉大学フロンティア医工学センター教授)が,「認知症ケアにおけるアシスティブ・テクノロジー(AT)やAIとの協働の可能性」をテーマに発表した。兪氏は,「認知症介護CHIBAモデル」として,尿意検出,服薬管理の研究事例を解説した。3番目には,植松一郎氏(東京都歯科医師会ICT対策室長)が,「地域包括ケアにおける歯科医療とテクノロジー活用」と題して,自施設におけるICTを活用した診療について,「コネクテッド」「シェア」「サービス」のキーワードごとに説明した。
続く第二部「介護ロボット,次世代型テクノロジーへのチャレンジ」では,坂田信裕氏(獨協医科大学教授)が座長を務め,4演題の発表が行われた。まず,坂田氏が「次世代型テクノロジー導入・展開に必要な人材とリテラシーとは?」をテーマに発表した。坂田氏は,人工知能(AI)やロボットなどの新技術についての知識や利用能力を「テクノロジーリテラシー」と位置づけて,その重要性に言及した。そして,日本医療研究開発機構(AMED)の「平成28年度ロボット介護機器開発・導入促進事業(基準策定・評価事業)『ロボット介護機器開発に関する調査』」の結果を踏まえて,介護ロボットを用いた高齢者支援においては,サービス提供者(ロボット提供者)と一般ユーザー(被介護者)の間に入る中間ユーザー(介護スタッフ,家族)がキーパーソンになるとの考え方を示した。2番目には,尾林和子氏(日本福祉大学教授)が,「介護現場の情報発信,テクノロジー導入の結果と効果…2018老健協総研による検証研究より」と題して発表した。尾林氏は,見守りシステムやコミュニケーションロボットの導入効果測定結果について説明した。また,石渡康子氏(東京都認知症介護指導者)が認知症介護現場からの報告として,コミュニケーションロボット導入経験について発表した。さらに,二瓶美里氏(東京大学大学院新領域創成科学研究科人間環境学専攻講師)が,「次世代テクノロジーによる日常生活支援の可能性—現実と理想—」と題して発表した。二瓶氏は,手動車いすの自動ブレーキ装置の開発・評価を例に挙げて,開発から導入に至るまでの課題や,導入後の評価における問題点を整理し,スムーズな導入ができるような機器開発の必要性を訴えた。次いで,小舘尚文氏(アイルランド国立大学ダブリン校准教授)が「介護ロボットの社会実装モデルに関する国際共同研究〜人・ロボット共創型医療・介護包括システムの構築に向けて」と題して,ドイツやアイルランドにおける介護ロボットの活用について報告した。
すべての発表終了後には,本田幸夫氏(大阪工業大学教授)の指定発言が行われた。さらに,五島清国氏(テクノエイド協会)が閉会の挨拶をして盛況のうちに閉会となった。
●問い合わせ先
地域包括ケアのための未来型テクノロジー研究会(FTIC)
事務局(一般社団法人ユニバーサルアクセシビリティ評価機構事務局内)
https://fticweb.blogspot.com