GEヘルスケア・ジャパンがデータ活用や人工知能をテーマにしたセミナーを開催
2019-8-28
今回が2回目となるワークフロー変革セミナー
GEヘルスケア・ジャパン(株)は2019年8月24日(土),ブリーゼプラザ小ホール(大阪府大阪市)において,「第2回 医療現場のワークフロー変革セミナー 2019」を開催した。本セミナーは,医療機関の情報化・データ活用などを担うリーダー向けに開催しており,昨年に続く開催となる。今回は,「オープンプラットフォームとデータ活用」がテーマに掲げられた。このテーマの下に,「政策動向」「データ活用」「人工知能」の3セッションに分けてプログラムが構成された。
最初の政策動向セッションでは,最初に「GEヘルスケアが目指すデジタル戦略」と題して,同社執行役員エンタープライス・デジタル・ソリューションズ(EDS)本部本部長の三井俊男氏が講演した。三井氏は,同社のビジョンとして,プレシジョンヘルスの実現に向け,“Data & Intelligence”をキーワードにしたソリューションを提供していくと述べ,人工知能(AI)技術を開発するプラットフォームである“Edison”を紹介した。Amazon Web Service(AWS)を利用したEdison Platform(Edison AI Services)上で開発を行い,ユーザへの提供は、“Edison Applications”と呼ぶ ソフトウエア単体として,あるいは“Edison Smart Devices”と呼ぶ画像診断装置に搭載した形で行われる。三井氏は,AIの開発については医療機関と共同で行っていると述べた上で,データは生き物であるとし,専門家(医療従事者)が育てることで価値のあるものになると強調した。さらに,三井氏は,このようなAIの開発・提供をオープンな環境で進めていくと述べた。
次いで登壇した,厚生労働省大臣官房厚生科学課研究企画官の黒羽真吾氏は,「厚生労働省の医療におけるAI/データ利活用について」と題して講演した。黒羽氏は,厚生労働省のAI施策について解説し,「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」とその後に開催された「保健医療分野AI開発加速コンソーシアム」の内容を報告。さらに,国立研究開発法人日本医療研究開発機構の研究事業として日本医学放射線学会などが進めている医用画像のデータベース構築についても解説した。続いて,国立研究開発法人国立国際医療研究センター国府台病院放射線科診療科長の待鳥詔洋氏が,「日本医学放射線学会が目指すICT医療改革〜Japan Safe Radiology〜」をテーマに講演した。待鳥氏は,コンビニエンスストアのPOSを例に挙げて,データ活用の重要性を指摘。その上で,画像診断装置の高度化に伴いデータ量が増大化する一方,医師などのマンパワー不足が進んでいる中で,放射線診療も効率化するシステムが必要だと述べた。その上で,日本医学放射線学会が取り組んでいる,安全性や効率性を向上させる活動である“Japan Safe Radiology”について説明。さらにその一環として進めている画像診断ナショナルデータベース“J-MID(Japan Medical Image Database)”の解説をした。
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次に行われたデータ活用セッションでは,まず大原記念倉敷中央医療機構倉敷中央病院医療技術部門放射線技術部の福永正明氏が,「PACS環境の再構築と発展,そして,次世代への準備」をテーマに講演した。倉敷中央病院では2007年にPACSを導入しフィルムレス化されたが,その後,別システムで運用していた心臓病センターにGEヘルスケア・ジャパンのPACSを導入。統合PACSとして運用を開始した。ただし,両PACSのビューワをそれぞれ継続してしようしていたため,読影業務などに不便を生じていた。そこで,2018年12月からは「Universal Viewer」へと統合した。福永氏はこうした経緯について報告したほか,VNAによる画像データの統合管理についても解説し,システム構築の時の留意点などを説明した。さらに,福永氏は,VNAをベースにした地域共同利用型PACSの構築について解説したほか,次世代への準備として,(株)アルムの「Join」を用いた急性期脳卒中診療における画像参照,コミュニケーションを紹介した。
続いて,GEヘルスケア・ジャパンEDS本部チーフデジタルストラテジストの大越 厚氏が,「次世代の画像データ活用 マルチベンダーで目指すオープンコネクト施策」と題してプレゼンテーションを行った。大越氏は,同社のVNAによるオープンな医用画像配信について説明し,DICOMwebを用いたマルチベンダーシステムでの高速画像転送などを解説した。さらに,より高速な画像配信を実現する「OCDB(Open Connect Database )」を紹介。診療科などのユーザーのニーズに応じて,自由にビューワを選択できる環境を提案した。この大越氏のプレゼンテーションに続いて,「オープンコネクトツール ライブデモ」と称して,(株)ファインデックス,(株)ジェイマックシステム,京都プロメド(株),PSP(株),横河医療ソリューションズ(株),富士通(株)による,OCDB環境での画像ビューワ・電子カルテのデモンストレーションが行われた。このデモンストレーションでは,VNAのサーバからOCDBによりCT画像・胸部X線写真を高速に読み込み,自社ビューワ・カルテ上で展開して各種画像処理を行うことで,効率的な読影・参照環境が構築可能なことを各社がアピールした。
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第3部となる人工知能セッションでは,まずインテル(株)インダストリー事業本部の清水由香氏が,「インテルのAIへの取り組み」と題して講演した。清水氏は,今後進んでいく個別化医療において,AIはデータの洞察,医師のサポート,創薬の時間短縮に役立つと述べ,ディープラーニングの活用について具体例を挙げて説明した。さらに,GEヘルスケアとの協業の事例として,移動型X線撮影装置「Optima XR240amx」に搭載されるEdisonのアプリケーション“Critical Care Suite”(薬機法未承認)による気胸検出の高速化技術を紹介した。
次に,GEヘルスケア・ジャパンEDS本部アジアパシフィックコマーシャルソリューションリードの中西克爾氏が,「GEが取り組む,AI活用プラットフォームEdison AI Servicesについて」をテーマに講演した。中西氏は,Edison Platform(Edison AI Services)でのAI技術開発とユーザーに提供されるEdison Applications,Edison Smart Devicesについて解説を行った。その上で,Edison Platformの2つのサービスとして,AIをつくる「AI Workbench Service」と,AIを使う「AI Inferencing Service」を紹介。さらに,AIを用いた診療のワークフローを効率化,自動化する「Edison AI Workflow Orchestration」についても説明した。
人工知能セッションの最後には,特別講演として東京大学名誉教授/INIAD(東洋大学情報連携学部)学部長の坂村 健氏が,「AIとIoTで変わる医療と社会」と題して講演した。坂村氏は,AIやIoTの技術の進歩によって開発環境も劇的に進歩したとして,オープンな開発環境が広がっていると言及。さらに,このような環境による「オープンイノベーション」で新技術が次々と登場していると述べた。また,坂村氏は,社会では最新のAIをクラウドなどオープンな環境で利用できる時代になりつつあると説明した。一方で,坂村氏は,日本の医療のICTやIoT,AI活用の遅れを指摘。オープンなシステムや診療データなどのオープンな利用環境が求められると述べた。
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ライブデモ参加企業
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●問い合わせ先
GEヘルスケア・ジャパン(株)
GEヘルスケアセミナー事務局
E-mail eds_2019@seminar.jp
www.gehealthcare.co.jp