最先端CT技術の未来を共有する第1回「Rise Up CT Conference」が開催
2020-1-22
AIなど最先端のCT技術を討議
第1回「Rise Up CT Conference」が,2020年1月18日(土),国立がん研究センター(東京都中央区)内の研究棟1階大会議室を会場に開催された。「Rise Up CT Conference」は,2010年から10回開催されたADCT研究会が“発展的閉会”して新たに発足した研究会である。ADCT研究会から引き続き代表世話人を務める井田義宏氏(藤田医科大学病院)は開会の挨拶で,「近年のCTには,ADCTだけでなくさまざまな先端技術が利用されている。それらを網羅して最先端技術を学び,情報交換する場としてこの研究会を立ち上げた。“Rise up”には“立ち上がる”などの意味があるが,最先端技術を取り入れ,いっそう奮起して立ち上り,未来に向かってさらに前進する会にしたいとの思いを込めた」と新しい研究会の趣旨を述べた。
第1回のプログラムでは,共催のキヤノンメディカルシステムズのADCT(Aquilion ONE),超高精細CT(Aquilion Precision),Deep Learning Reconstruction(AiCE),Spectral Imaging Systemの4つの技術を取り上げ,各セッションではキヤノンメディカルシステムズの最新技術のキーノート講演と臨床現場からの講演が行われた。
また,Rise up Lecture(特別講演)では,小林泰之氏(聖マリアンナ医科大学)が登壇し,「これからのAI時代を生きる診療放射線技師の方々に対するメッセージ」と題して講演した。小林氏は,AI技術やICT,ロボットなど最新テクノロジーの動向を紹介し,AI時代には指数関数的進化を前提とした考え方が必要であり,従来からの思い込み(常識)にとらわれずに柔軟にチャレンジすることが必要だと述べた。
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【ADCT:Aquilion ONE】では,片岡由美氏(藤田医科大学病院)と瓜倉厚志氏(静岡県立静岡がんセンター)が座長を務め,石田和史氏(川崎幸病院)と益田翔太氏(慶應義塾大学)が講演した。石田氏は,「脳卒中最前線 CT Firstでめざす D2P 30min !! 〜CTのみで治療適応を判断する」と題して,川崎幸病院で取り組んでいるCTを用いた急性期脳梗塞の治療適応判断について,Aquilion ONEでの撮影プロトコールや再構成時間を短くする工夫,Vitreaのサマリーマップを用いたペナンブラの評価の有用性などについて紹介した。「IVRにおけるGENESIS Editionの活用」を講演した益田氏は,同院で2019年2月から稼働したAquilion ONE / GENESIS Editionを採用したAngio CTの使用経験を報告した。CTにはAiCEが搭載されており,AIDR 3Dと変わらないスピードで処理できることからIVRにおける4DCT撮影などに活用していること,また低管電圧撮影による造影剤の低減,CT透視における被ばく低減などの効果について報告した。
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【超高精細CT:Aquilion Precision】では,辻岡勝美氏(藤田医科大学)と鷲塚冬記氏(東邦大学医療センター大森病院)を座長として,石原敏裕氏(国立がん研究センター中央病院)が「超高精細CT研究会報告」を行った。石原氏は,自身が代表幹事を務める超高精細CT研究会について,その活動の経緯を振り返りつつ,これまで3回の研究会で取り上げられた超高精細CTの特性や課題,臨床的な評価について報告した。
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【Deep Learning Reconstruction:AiCE】のセッションでは,石原氏と南島一也氏(慶応義塾大学病院)が座長を務め,香月伸介氏(福岡整形外科病院)と茅野伸吾氏(東北大学病院)が講演を行った。「AiCEが変える整形外科領域のCT検査」を講演した香月氏は,2019年9月から稼働したAquilion ONE /NATURE Editionでの主にAiCE boneを用いた物理評価,物理視覚評価の結果と臨床画像を提示し,整形外科領域における有用性について概説した。AiCE boneではワンストップでの画像処理が可能になり,ワークフローがシンプルになったこと,ノイズ除去の能力が高く,線量を低減した撮影が可能でCTでの4D検査の可能性が広がることを示唆した。
茅野氏は,「慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対する超高精細CTによるDeep Learning Reconstructionの活用」を講演し,慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の病態と,超高精細CTとDLR(AiCE)がCTEPHの確定診断にもたらす新たな可能性について概説した。
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最後のセッション【Spectral Imaging System】では,井田氏と宮前裕太氏(国立がん研究センター中央病院)を座長として,西丸英治氏(広島大学病院),清水裕太氏(杏林大学医学部付属病院)が講演した。「Deep learning技術を用いたSpectral imagingの画像特性と臨床応用について」を講演した西丸氏は,Spectral imagingについて画像特性の検証結果を紹介し,同院で撮影されている肝臓ダイナミック検査と骨転移の臨床例について報告した。続いて「Spectral CTの精度と臨床における初期経験」を講演した清水氏は,Spectral CTと2回転方式のdual energy CT(DECT)の実効原子番号と電子密度の計測精度の検討,Spectral CTの70keVの仮想単色X線画像とsingle energy CTの120kVp画像との画質比較などの結果を報告した。
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●問い合わせ先
藤田医科大学病院放射線部CT室
TEL 0562-93-2748