保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS),創立25周年の記念イベントを開催
2020-1-31
25周年を記念した特別講演,
シンポジウムなどを開催
一般社団法人保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)の創立25周年記念イベントが,2020年1月28日(火),帝国ホテル東京(東京都千代田区)で開催された。JAHISは,1994年に“日本保健医療情報システム工業会”として172社で設立,1998年に“福祉”を加え現在の名称に改称,2010年には一般社団法人化した。現在は,382社(2019年末現在)が参画し,売上合計は6000億円を超えるまでに成長した。創立25周年記念イベントでは,第1部「25周年記念講演」,第2部「25周年記念シンポジウム」,会場を移して第3部「25周年記念賀詞交換会」が行われた。
「25周年記念講演」では会長講演として岩本敏男氏(NTTデータ相談役)が,「テクノロジーがもたらす変革と新たな社会」を講演した。岩本氏は,冒頭で6600万年前の恐竜絶滅のビデオを流し,現在はかつてアルビン・トフラーが予言した情報通信革命の時代にあり,さらにその三大要素技術(CPU,ストレージ,ネットワーク)が指数関数的に進化する大変革の時代にあると現状を分析した。その中で“data”が大きなカギを握るが,岩本氏は情報の3階層として“data”,“information”,“intelligence”を挙げ,膨大なdataから意味を付加して分析や評価の対象となるのがinformation,さらに意思決定の源泉となるのがintelligenceだとした。従来は,intelligenceを生むのは人間の専売特許だったが,AI(Artificial Intelligence)の進化で人間が判断しなくても自律的な社会が到来することになる。岩本氏は,AIなど先進技術の発展には常に光と影があり,最先端技術を生かすためのルールづくりを進めていくことがJAHISの役割だと述べた。
続いて特別講演として,東国原英夫氏(元宮崎県知事/元衆議院議員)が登壇し,「人生100年時代を生き抜く人間力」を講演した。
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第2部の「25周年記念シンポジウム」では,山本隆一氏(医療情報システム開発センター理事長)をモデレーターとして,パネルディスカッション「ヘルスケアICTの今後の展望とJAHISへの期待」が行われた。パネリストとして,行政から江崎禎英氏(経済産業省,厚生労働省,内閣官房健康・医療戦略室次長),ユーザーを代表して楠岡英雄氏(国立病院機構理事長),学会から中島直樹氏(日本医療情報学会代表理事),JAHISから高橋弘明氏(運営会議議長)が登壇した。
江崎氏は,人生100年時代に対応するべく現在改訂を進めている“健康・医療戦略”の概要を説明し,感染症から生活習慣病へと変化した疾患の性質に対応するために,今後は,1) 病気にならない(予防や管理によって健康な状態を維持し続ける),2) 重症化させない(早いタイミングで対応する),3) 切り離さない(社会とのつながりを維持し続ける)ための体制づくりを進めていくことがポイントだと説明した。その実現には,公的保険だけでなく保険外サービスも含めたマーケットの拡大が重要で,医療や介護,ヘルスケア(健康)といった領域ごとに蓄積されたデータを横断的に活用するための基盤づくりでJAHISの貢献を期待したいと述べた。
楠岡氏は,まず,医療情報システムの現状を整理し,電子カルテなどの病院情報システムからDPCデータやNDB(National Database)が蓄積され,地域医療連携システム,経営分析システム,DWHや研究利用のためのデータベースやネットワークが構築され,次世代医療基盤法に基づくビッグデータの運用もスタートしたことを紹介した。これからの医療介護福祉の中核となる地域包括ケアシステムの展開では,それを支えるデータ連携の強化が必要であり,JAHISには有機的な活用が可能な仕組みづくりに貢献してほしいと期待した。さらに,日本では臨床研究・治験における“リアルワールドデータ”の利活用が遅れていることから,楠岡氏はその推進にもJAHISの貢献を期待した。
中島氏は,最初にヘルスケアICTの今後の展望として,データ駆動型医学医療の推進やプレシジョン・メディシンへの進化,遠隔医療やIoTを利用したPHRの普及など,高精度化と領域の拡大が同時に進む“医療デジタルトランスフォーメーション(MDX)”が起こっていくとした。その中でのアカデミア(学会)の役割として中島氏は,1) 個別管理と集団管理の科学的な調和,2) 患者主体の医療へ,3) Learning Health System(LHS)の導入を進めることの重要性を強調した。JAHISへの期待として,日本のMDXに魂を吹き込むためにもパートナーとして協力し合い,特に保健医療福祉領域の情報連携については主体的に取り組んでほしいと期待した。
最後に登壇した高橋氏は,25周年を機に発刊した「2030ビジョン」の内容を中心に,“健康・医療・総合データ利活用基盤の全体像”やデータ循環型社会を実現するための考え方など,JAHISがめざす将来像を提示した。
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第3部として「25周年記念賀詞交換会」が行われた。最初に岩本会長が挨拶し,JAHISがここまで成長できたのもOBも含めて関係各位の支援の賜物だと述べた上で,「デジタルトランスフォーメーション(DX)がそれぞれの産業で起こっている。DXは,“ビジネストランスフォーメーション by デジタル”と考えると理解しやすいが,このデジタルは“CAMBRIC”と分解できる。クラウド(C),AI,モビリティ(M),ビッグデータ(B),ロボティクス(R),IoT,サイバーセキュリティ(C)の頭文字で,これらを踏まえてリアルワールドとサイバー空間をいかに連携していくか,関係各位と連携しながら日本の“Society5.0”を実現できるように活動していきたい」と述べた。そのほか,来賓として横倉義武氏(日本医師会会長),鈴木英二郎氏(厚生労働省政策統括官)が祝辞を述べた。続いて,来賓を含めて壇上で樽酒による鏡開きが行われ,盛大に25周年を祝った。
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●問い合わせ先
一般社団法人保健医療福祉情報システム工業会
総務部
TEL 03-3506-8010
https://www.jahis.jp/