フィリップス,COVID-19感染拡大で注目される遠隔集中治療患者管理プログラム(eICU)を国内に本格導入

2020-9-2

フィリップス・ジャパン


「eICUプログラム」のビデオオンラインシステム

「eICUプログラム」の
ビデオオンラインシステム

(株)フィリップス・ジャパンは2020年9月1日(火),新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大であらためて注目されている遠隔集中治療ソリューション「eICUプログラム」の日本市場への本格導入を発表し,同日,オンライン記者発表会を開催した。発表会には,代表取締役社長の堤 浩幸氏,コネクテッドケア事業部長の田口 賢氏が登壇し,同社の取り組みとeICUプログラムについて紹介するとともに,国内で先行的にeICUの実証研究を行っている昭和大学医学部集中治療医学講座教授の小谷 透氏が,「eICUによる感染拡大の防止と感染症対策の強化への有効性」について報告した。

堤 浩幸 氏(代表取締役社長)

堤 浩幸 氏(代表取締役社長)

小谷 透 氏(昭和大学)

小谷 透 氏(昭和大学)

   
田口 賢 氏(コネクテッドケア事業部長)

田口 賢 氏(コネクテッドケア事業部長)

 

 

発表会の冒頭,挨拶に立った堤氏は,フィリップスが健康な生活からホームケアまでを一気通貫に情報で結ぶヘルスケアソリューションで,社会医療課題の解決をめざしていることを説明した上で,そのソリューションの一つであるeICUを紹介した。eICUにより,集中治療現場の課題である重篤患者の急増や医療従事者(集中治療専門医)の不足,医療の質の格差,新型コロナウイルス感染拡大への不安などを解決できると述べた堤氏は,eICUは医療従事者にプラスになる新たな価値創造の一歩であり,デジタル・トランスフォーメーションによりイノベーションを推進するフィリップスの今後の活動に期待してほしいと呼びかけた。

今回,国内販売が開始される遠隔集中治療ソリューション「eICUプログラム」は,支援センターと医療機関のICU,CCU,ERの病床をネットワークでつなぎ,集中治療の現場を遠隔で支援するソリューションである。海外では,米国を中心に15年以上前から導入され,550施設,625万人以上の患者の集中治療管理に活用されてきた。eICUプログラムを利用することで,死亡率の低下や在室日数の短縮,コスト削減などの効果が確認されている。日本国内では,2018年4月から昭和大学病院と昭和大学江東豊洲病院で実証研究として運用されてきたが,2020年7月に薬機法認証を取得したことを受け,9月より日本市場での販売を開始する。

eICUプログラムで中核となるのが,ソフトウエア“eCareManager”である。eCareManagerは,遠隔でつながった集中治療病床の電子カルテや生体情報モニター,人工呼吸器などのデータを収集し,CDS(clinical decision support:臨床意思決定支援)アプリケーションで解析することで,多数の患者の情報を一元的に把握することができる。この情報を基に,支援センターの医師と看護師がベッドサイドスタッフを遠隔支援する。集中治療医1名,看護師3名,医療事務作業補助者1名のチームで,最大150床のベッドを支援することができる。
eCareManagerのCDSアプリケーションには,患者の重症度と緊急度を自動表示する”Automated Acuity”,必要な患者情報を1画面で把握できる”Patient Profile”,経時的に変化する患者の状態を変化に合わせて通知する”Sentry Smart Alerts”,ICU退室後48時間以内に死亡,または再入室するリスクを予測する”Discharge Readiness Score”などがある。
ICU現場には,高精細カメラやモニタ,スピーカーフォン,支援センターを呼び出せる”eLertボタン”などが設置され,オンラインビデオシステムにより,支援センターからは映像情報による患者や機器の状態把握や,双方向音声によるコンサルテーション,バーチャル回診などを行うことができる。これらを活用することで,集中治療現場に対してより早期に,効率的・効果的な介入が可能になることに加え,集約されたデータを基にしたレポーティングソリューションにより臨床的アウトカムを評価し,運用改善に役立てることもできる。

発表会で小谷氏は,昭和大学2病院に導入しているeICUプログラムの運用状況と,COVID-19感染拡大下における有用性について報告した。昭和大学では,2病院50床の集中治療病床を支援センターとつなぎ,eICUを運用してきた。このたびのCOVID-19感染拡大を受け,昭和大学病院は集中治療室を増床するなどして患者増加に対応するとともに,eICUを活用することで院内感染の防止や,チーム医療を展開するスタッフの安全・安心の確保を図っている。小谷氏は,「eICUでは,ビデオシステムにより患者の見守りや病状説明支援,ビデオラウンドによる確認業務支援などが可能で,スタッフの入室が制限される中でも業務の質を維持することができ,コロナ下における特殊な環境で非常に役立っている」と述べた。また,eICUにより現場で生じる問題の約半分を解決可能で,教育や現場の安心感につながること,さらに1回あたり5分未満の短時間でリアルタイムに現場の困りごとを解消できる点が,eICUの強みだと指摘した。
昭和大学での2年間の実績では,運用開始から現在までに入室時重症度(APACHE Ⅳスコア)は約10ポイント上昇しているが,実死亡率がAPACHE予測死亡率の約半分に改善している。小谷氏は,「5分未満の細かい介入を繰り返すことで,標準医療の向上が図られ,リスクの芽を小さいうちに摘んでいくことが,患者,医療の安心安全につながっている」と考察した。また,eICUにより入院患者の急変時にもICUベッドを活用することができ,院内死亡率も改善していることを報告した。小谷氏は最後に,「入室時重症度が上がったことでICU滞在日数は増加しているが,eCareManagerで状況がリアルタイムにわかるため,次に解決すべき目標を把握できる。これまで日常では実感しにくかった課題がわかることは,自分たちの医療の質を見直し,未来の医療の質の向上につながることを意味しており,eICUに大きな希望をもっている」と締めくくった。

集中治療現場の課題解決に資する遠隔集中治療ソリューション「eICUプログラム」

集中治療現場の課題解決に資する遠隔集中治療ソリューション「eICUプログラム」

 

昭和大学でのeICUの成果

昭和大学でのeICUの成果

 

※画像はすべてフィリップス・ジャパン提供

 

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(株)フィリップス・ジャパン
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