第4回超高精細CT研究会がハイブリッドで開催
2020-12-14
超高精細CT「Aquilion Precision」の検査・診断技術の向上が目的
キヤノンメディカルシステムズ(株)の超高精細CT「Aquilion Precision」の検査・診断技術の向上を目的とした第4回超高精細CT研究会が,2020年12月12日(土),国立がん研究センター中央病院を会場に,Web配信を行うハイブリッド形式で開催された。開会に当たって挨拶した代表幹事の石原敏裕氏(国立がん研究センター中央病院)は,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックにより,Web配信を行うこととなったが,場所にとらわれず多くの方が参加できるのがメリットだと述べた。そして,2017年4月にAquilion Precisionが日本で発売されてから4年近くが経ち,検査・診断における多くの知見が得られており,今回の研究会を通じて,明日からの診療に役立ててほしいとまとめた。なお,キヤノンメディカルシステムズのほか,アミン(株)と(株)根本杏林堂が共催した。
キヤノンメディカルシステムズからの情報提供に続き,一般演題が行われた。座長は,鈴木雅裕氏(大原綜合病院)が務めた。最初に,辻岡勝美氏(藤田医科大学)が,「超高精細CTとSEMARによるメタルアーチファクト低減」と題して発表した。辻岡氏は,キヤノンメディカルシステムズの金属アーチファクト低減技術である“SEMAR”と超高精細CTを組み合わせたファントム実験における,アーチファクト低減と金属周囲のCT値の精度について結果を報告。SEMARによる金属アーチファクト低減効果に加え,超高精細CTのHRモード,SHRモードによるアンダーシュートの軽減によって,金属周囲のCT値が高精度で得られたと説明した。次いで,瓜倉厚志氏(静岡県立静岡がんセンター)が,「超高精細CTの焦点サイズと面内位置に依存した解像特性評価」をテーマに発表した。瓜倉氏は,CTの回転中心から離れた位置の解像特性について,NRモードとSHRモード,SHRモードにディープラーニング応用画像再構成技術“AiCE”を適用した結果を報告した。そして,超高精細CTでは,回転中心から離れた位置での解像特性の低下が顕著であるが,AiCEにより,空間分解能を改善できたと報告した。一般演題の最後は,鈴木氏が「スクリーニング大腸CTにおける超高精細 CTの有用性」をテーマに発表した。鈴木氏は,スクリーニング大腸CTの需要が伸びているものの,平坦型病変や大腸鋸歯状病変の検出能が低い,タギング能により残渣との判別が困難であるといった課題を指摘。この課題解決のために,超高精細CTのNRモード,SHRモードで撮影し,所見の比較検討を行った経験を紹介した。結果について鈴木氏は,超高精細CTでは平坦型病変や過形成性ポリープの検出能が向上し,回盲弁などの構造物やポリープなどの内部性状を観察でき,簡便かつ高精度なスクリーニング大腸CTを施行できると述べた。
続いて,基調講演(技術講演)が行われた。石原氏が座長を務め,茅野伸吾氏(東北大学病院)が「超高精細CTを使用した頭部CT angiographyでみえてきた『〇〇mmの血管との出会い』」をテーマに講演した。茅野氏は,超高精細CTにおける120kVと140kVの2つの実効エネルギーによるファントム実験の物理評価結果を示し,120kVの方がNPS,system performance,figure of meritが優れていると報告した。同院では,この結果に基づいて120kVでのTBT法による頭部CTAを施行している。茅野氏は,0.83±0.57mmという微細な前交通動脈穿通枝の描出について,320列CTとの比較結果を提示し,超高精細CTの方が有利であると述べた。さらに,超高精細CTによる髄質動脈の描出についても症例を供覧。超高精細CTでは微細血管の描出能が向上し,非侵襲的に評価できるようになり,術前のオリエンテーションなどに有用であると講演をまとめた。
この後,根本杏林堂の情報提供に続き,特別講演1へと進んだ。座長を長澤宏文氏(国立がん研究センター中央病院)が務め,岩澤多恵氏(神奈川県立循環器呼吸器病センター)が,「Aquilion Precisionの胸部領域における臨床有用性」と題して講演した。同センターでは,2018年10月から超高精細CTが稼働している。これまでの使用経験を踏まえて岩澤氏は,従来CTと比較して末梢気管支の描出能に優れているとし,間質性肺炎における気管支拡張の描出などについて症例画像を供覧した。また,超高精細CTは,Reidの二次小葉の描出にも優れ,びまん性肺疾患の診断にも有用だと,症例を交えて説明した。このほかにも岩澤氏は,COVID-19肺炎や特発性肺線維症の症例も提示し,超高精細CTは微細な末梢構造を把握でき有用であるとまとめた。
さらに,アミンの情報提供を挟み,中屋良宏氏(東洋公衆衛生学院)が座長を務め,特別講演2が行われた。曽根美雪氏(国立がん研究センター中央病院)が登壇し,「腹部超高精細CTにおけるノイズ低減への挑戦,そしてその先へ」をテーマに,AiCEによるノイズと被ばくを低減した超高精細CTの腹部イメージングを取り上げた。曽根氏は,腹部CTにおける低コントラスト領域の課題は,ノイズと低被ばくに集約されると述べた上で,FBP法およびキヤノンメディカルシステムズの“AIDR”と“FIRST”によるノイズ低減について,高コントラスト領域は大きな効果を得られるが,低コントラスト領域は目立つと画像を示して解説。AIDRやFIRSTといったIR法では,低コントラスト領域で空間分解能の低下や,ノイズテクスチャの変化により,画質の担保と被ばく低減が困難であり,さらにFIRSTは再構成に時間を要すると述べた。その上で曽根氏は,最新の画像再構成技術であるAiCEについて言及し,ノイズを低減し,低コントラスト分解能が優れており,再構成時間も比較的短いといったメリットを挙げた。そして,腹部領域における低コントラスト病変として,乏血性肝転移,膵がんの超高精細CT画像をマルチスライスCT画像と比較して提示した。さらに,膵がんの神経叢浸潤,小径膵がんの症例画像を供覧し,早期診断への寄与など,超高精細CTの有用性を示した。このほか,曽根氏は,現在開発中のAiCEの新たなパラメータであるBody Sharpについても画像を提示した。
●問い合わせ先
超高精細CT研究会
http://u-hrctkennkyuukai.kenkyuukai.jp/special/?id=29365