GEヘルスケア・ジャパンが,AIやデータ利活用ソリューション提供などの成長戦略を示す
——「2021年成長戦略発表会」を開催
2021-4-26
プレシジョン・ヘルスの実現に向けた事業戦略を
アピールする多田荘一郎代表取締役兼CEO
GEヘルスケア・ジャパン(株)は,コロナ禍での医療の課題を解決するために,人工知能(AI)の開発や,データ利活用のためのソリューションの提供を強化していく。2021年4月22日(木)に開催された成長戦略発表会において,代表取締役社長兼CEOの多田荘一郎氏が,厳しい状況に置かれている医療を支えていく姿勢を示した。
同社は,4月16日〜18日に行われた2021国際医用画像総合展でも,MRIの新プラットフォーム“AIR IQ Edition”などを発表したが,さらに,超音波診断装置でも新製品の開発を進めているという。日本国内では,ポケット型超音波診断装置「Vscan」が約7700台の累計販売台数を記録するなど高評価を受けているが,新型の装置では,さらなる小型化と高画質化を進め,全身領域の検査に対応するという。これにより,在宅医療やへき地医療などの場で,質の高い医療を効率的に提供できるようになる。
また,「Edison」ブランドで知られるAIについては,「撮像前〜撮像(UPSTREAM)」と「撮像後〜読影・所見(DOWNSTREAM)」,それぞれで開発,実装を進めており,2021年にはAIR IQ Editionの一つとして,ディープラーニングを用いた画像再構成技術“AIR Recon DL”を発表した。AIR Recon DLを適用することで,ノイズの低減や解像度の向上を実現し,それを生かして撮像時間の短縮化も図れる。また,CTの画像再構成技術も,ディープラーニングを用いた“TrueFidelity Image-GSI”がディアルエナジーCTで使用できるようになった。一方,DOWNSTREAMとしては,検査内容によって使用するAIソフトウエアを自動的に設定する“Edison AI Orchestrator”の提供を準備している。Edison AI Orchestratorでは,自社だけでなくパートナー企業のAIソフトウエアにも対応する予定であり,(株)東陽テクニカ,エルピクセル(株)との連携を進めている。
さらに,同社では,医療機関が抱える課題を解決するために,リアルタイムにデータの分析が可能なソリューションを提供し始めた。滋賀県の草津総合病院では,電子カルテをはじめとした医療情報システムのデータを集約して,リアルタイムに入退院・病床管理を行える「コマンドセンター」が稼働。病院経営に役立てている。
プレゼンテーションの中で多田氏は,日本の高齢者人口がピークを迎える2040年までの環境変化や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により,多くの課題に直面している医療の現状を取り上げた上で,医療機関にはリアルタイムにデータを集め,それに基づく迅速な意思決定,行動変容が求められていると指摘。持続可能な医療提供体制のための取り組みが重要だと述べた。そして,同社が推進するプレシジョン・ヘルスの実現に向けて,その基盤となるプラットフォームを整え,医療機関や大学,企業とのパートナーシップを進めると強調した。
なお,多田氏のプレセンテーションに先立ち,社会福祉法人恩賜財団済生会熊本病院院長の中尾浩一氏が,「デジタル技術と医療のかたち—済生会熊本病院のアウトリーチ—」をテーマに,講演を行った。中尾氏は,従来に医療はアナログであったが,デジタルトランスフォーメーション(DX)が進んだとし,医療DXは“技術”と“組織文化”の変革であると述べた。その上で,同院がデジタル技術を活用して取り組んだ医療の“モジュール化”について説明した。モジュール化の一つがクリニカルパスの推進である。同院では,「NECV(Novel Electronic Clinical Pathway Viewer)」と呼ばれるツールを開発し,データを分析して,クリニカルパスの標準化や改善を図っているという。このほか,中尾氏は,JCI(Joint Commission International)の活用や,地域医療連携における戦略的業務提携といった取り組みについても解説した。
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