第2回「Rise Up CT Conference」がWebで開催
2021-5-31
オンラインで開催された
第2回「Rise Up CT Conference」
第2回「Rise Up CT Conference」が,2021年5月8日(土)にWebで開催された。“ADCT研究会”のあとを引き継いで発足したRise Up CT Conferenceは,2020年に第1回を国立がん研究センターで開催したが,今年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大に配慮しWeb(YouTube-Live)配信での開催となった。冒頭に挨拶した代表理事の井田義宏氏(藤田医科大学病院)は,「Rise Up CT Conferenceは,日々進化する撮影や装置の技術を共有してより良い医療を患者に届けることを目的としている。医療技術と医療機器の開発は両輪である。装置やソフトウエアの開発だけが進んでも,使う側の診療放射線技師や放射線科医がそれを有効に使いこなせなければ,医療の発展,患者の利益にはつながらない。今回のキヤノンメディカルシステムズの最新技術と,それを日常臨床で活用している先生方からの情報発信が有益なものとなることを確信している」と述べた。
プログラムは,ADCTと高精細CTの2つのセッション,画論からのトピックス,Rise up Lectureが設けられた。総合司会は,日比野友也氏(社会医療法人大雄会)が務めた。最初にキヤノンメディカルシステムズより,「CT装置最新情報提供」として,4月17日からハイブリッド開催された国際医用画像総合展(ITEM2021)におけるCTの展示内容と,JRC共催ランチョンセミナー「Area Detector CTのさらなる技術革新〜質的診断・定量評価への挑戦」の講演概要について説明があった。
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【エリアディテクターCTセッション】は,“Spectral Scan”をテーマに,宮下宗治氏(耳鼻咽喉科麻生病院)を座長として,山口隆義氏(華岡青洲記念病院)と石井郁也氏(国立がん研究センター中央病院)が講演した。「心臓領域におけるVolume spectral scanへの期待」と題して講演した山口氏は,“Spectral scan”による心臓撮影について,320列CT2台体制で月間450件の冠動脈CTを行う華岡青洲記念病院での経験を概説した。同院では,心臓CTについてSMILIE(Subtraction Myocardial Image for LIE)などを用いてワンストップの検査を行っているが,Spectral Scanでの石灰化評価,CTFFR,プラーク解析のほか,遅延造影による心筋性状評価,ヨードマップによるECV解析など,DECTによる心臓CTの精度向上の可能性を示した。
石井氏は,「Cancer Centerにおける造影剤低減時の選択“Spectral Scan or Low kVp Scan”」を講演した。造影剤低減のための撮影法の選択として,DECTのSpectral ScanとAiCEを適用したLow kVp Scanについて,画質や物理特性を比較した検証結果を紹介した。Spectral Scanの仮想単色X線画像(VMI)では,70keVで20%の造影剤量の低減が可能だが,同院では造影剤量のさらなる低減を追究し80kVpのLow-kVp Scanを選択して40%の低減を実現している。石井氏は,物理特性を正しく理解して検証した上で撮影法を選択することが重要だとコメントした。
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【高精細CTセッション】は,石原敏裕氏(国立がん研究センター中央病院)が座長を務め,瓜倉厚志氏(静岡がんセンター)と宮前裕太氏(国立がん研究センター中央病院)が登壇した。
「Single energy CTによるヨード画像と造影能増強技術」を講演した瓜倉氏は,非剛体位置合わせを用いた精度の高いサブトラクションが可能なキヤノンメディカルシステムズの“SURESubtraction”を用いたIodine(ヨード)画像について,肝ラジオ波焼灼療法の効果判定に用いた症例などで概説した。DECTのヨード画像では画像ノイズの影響でヨード定量精度が低下する。特に低線量の場合にはSURESubtractionのほうが高いヨード定量性を実現できる。瓜倉氏は,Aquilion PrecisionでSURESubtractionを利用することで詳細な解剖を反映したコントラスト情報を提供でき,画像診断精度の向上や治療方針の決定に寄与できるのではと述べた。
宮前氏は,「どこまで欲張れる? 新たなDeep Learning based Reconstructionの挑戦」と題して講演した。高精細CTでは,従来CTと比較して2倍の空間分解能が得られる一方で線量増加が報告されている。宮前氏は,Aquilion ONE/PRISM Edition(MDCT)のAIDR3Dと,Aquilion Precision(U-HRCT)のAiCE Body,新たに追加されたAiCEのBody Sharpでの検証結果を紹介し,U-HRCTとAiCE Body Sharpの組み合わせでは,従来CTと同等の撮影線量で,高い解像特性と低コントラスト病変の検出能の向上が期待できることを報告した。
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“画論からのトピックス”は,2020年12月20日に行われた「画論 28th The Best Image」のCTの受賞演題からトピックスを紹介した。座長は,辻岡勝美氏(藤田医科大学)が務めた。
最初に,Aquilion ONE部門のテクニカル賞を受賞した「児頭骨盤不均衡」を森川敬斗氏(舞鶴共済病院)が解説した。森川氏は,CTによる超低線量骨盤計測について報告し,AiCEを用いることでX線撮影よりも67%低減できると述べた。続いて,Aquilion ONE(心血管)部門最優秀賞を受賞した「造影CTによる左心耳閉鎖術(LAAC)の術前評価〜Sheath fusion」について,細田直樹氏(三井記念病院)が講演した。細田氏は,腹臥位撮影,Volume Rendering,Sheath Fusion ImagingなどCTでの左心耳計測のテクニックを紹介した。
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最後に,Rise up Lectureとして「Angio CTを活用した腹部領域のIVR:The sky is the limit」と題して,菅原俊祐氏(国立がん研究センター中央病院)が講演した。座長は,井田代表理事が務めた。菅原氏は,日本で開発されたAngio-CTシステムと,それを用いた腹部領域のIVRの手技について概説した。がん研究センター中央病院では,CTに90cmの開口径を持つ「Aquilion LB」をセットしたAngio-CTを導入している。菅原氏は,血管系IVRとして肝がんに対する化学動脈塞栓療法(TACE),出血に対する塞栓術(TAE),リンパ管IVR,非血管系IVRとしてラジオ波焼灼療法(RFA),マイクロ波凝固療法(MWA),凍結治療などのアブレーション,生検についてIVRが有効だった症例を具体的に示して説明した。Angio-CTを活用することで,より正確で,安全,効果的なIVRを提供することができ,治療適応の拡大,治療効果の最大化が期待できるとまとめた。
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閉会の挨拶を述べた辻岡氏は,「今回は300人近い視聴があった。各セッションやRise up Lectureでは,患者さんの役に立ち,今後の検査や治療に勇気が持てる講演をいただいた。CTの技術は進歩をし続けており,Rise Up CT Conferenceはその進歩を楽しめるカンファレンスとして続けていきたい」と締めくくった。
●問い合わせ先
Rise up CT Conference事務局
TEL 0562-93-2748
E-mail riseup@fujita-hu.ac.jp