JSMRM 2021とASMRM 2021が合同開催
2021-9-16
JSMRM 2021とASMRM 2021が合同開催
JSMRM 2021(第49回日本磁気共鳴医学会大会)・ASMRM 2021(The 3rd Annual Scientific Meeting of Asian Society of Magnetic Resonance in Medicine)が2021年9月10日(金)〜12日(日)の3日間,パシフィコ横浜ノース(神奈川県横浜市)で開催された。現地開催とオンラインのハイブリッド形式として,会期中のライブ配信に加え,9月21日(火)〜10月20日(水)には一部を除きオンデマンド配信される。また,ポスター発表はオンラインのみで行われた。両大会の大会長は黒田 輝氏(東海大学情報理工学部情報科学科)が務め,テーマには「Eternal Brilliance of MR——MR永遠の輝き」が掲げられた。JSMRM 2021では,主なプログラムとして,特別講演が3題,シンポジウムが16セッション,ASMRM/JSMRM-KSMRM Joint Symposiumなどが設けられた。また,大会初の試みとして,パルスシーケンスの設計のハンズオンセミナーが実施された。このほか,9月11日には,ISMRM JPC 2021(第6回国際磁気共鳴医学会・日本チャプター学術集会)も同時開催された。なお,今回は新しい試みとして,2会場で機械同時翻訳による字幕表示が行われた。
大会2日目の9月11日に行われたJSMRM 2021の特別講演2では,押尾晃一氏(順天堂大学医学部放射線診断学講座)が「パルスシーケンス開発の本質」をテーマに講演した。座長は大会長の黒田氏が務めた。押尾氏は,MRIについてハード・ソフトウエアの技術が成熟していると述べた上で,ユーザーもパルスシーケンスの知識を持つことが求められており,技術を継承していくことが大事だとして,自身が取り組んできた開発の歩みを紹介した。そして,パルスシーケンスはプログラミングであり,オブジェクト指向のプログラミングの成功例から学ぶべきことなどを説明。今後,MRIは科学研究の対象から使いこなす道具となり,ブラックボックスからオープン化していくとして,次世代の人材育成に取り組むこと,研究者や技術者がそれぞれの専門性を生かし分担して開発することが重要だと述べた。
同じく,9月11日に設けられたシンポジウム9「MRI vs. CT」では,工藤與亮氏(北海道大学大学院医学研究院画像診断学教室)と吉浦 敬氏(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科放射線診断治療学分野)が座長を務め,3名が発表した。最初に登壇した宇野 隆氏(千葉大学大学院医学研究院画像診断・放射線腫瘍学)は,「1.5T-MRリニアックによる放射線治療」と題して,千葉大学医学部附属病院で稼働に向けて準備が進んでいるエレクタ(株)のMRリニアックシステム「Elekta Unity」について報告した。宇野氏は,MRリニアックシステムでの放射線治療により,CTベースの放射線治療と比較して,画質,リアルタイム,被ばく,侵襲性の面でメリットがあると説明,高精度放射線治療のパラダイムシフトになると述べた。「放射線治療に向けたMRI画像から仮想CT画像生成」をテーマに発表した角谷倫之氏(東北大学病院放射線治療科)は,MR画像が電子密度情報を持たないことを踏まえ,ボクセルごとにMR信号値をHU値に変換して作成する仮想CT画像や,ディープラーニングの一つであるGANを用いた仮想CT画像生成などの解説を行った。この後,片平和博氏(熊本中央病院放射線科)が,「CT like imagingの臨床的有用性」をテーマに発表した。片平氏は,3D multi FFE法での撮像をベースとしたCTライクイメージの画像を供覧し,従来のMRIでは描出が困難だった骨折線の描出が可能になるなど,そのメリットを紹介した。
9月11日には,シンポジウム12「脳から始まる次世代MRI」も行われた。座長は,青木茂樹氏(順天堂大学医学部放射線診断学講座)と東 美菜子氏(宮崎大学医学部病態解析医学講座放射線医学分野)が務めた。最初に,藤田翔平氏(順天堂大学医学部放射線診断学講座)が「MR fingerprintingの最近の動向」と題して発表した。藤田氏は,MR fingerprintingについて,短時間でT1やT2などのパラメータを取得でき,安定して定量値を得ることができる技術だと説明。脳腫瘍やてんかん,パーキンソン病の症例画像を示したほか,2021年5月に開催されたISMRM 2021におけるMR fingerprintingのトピックとして,さらなる高速化やシーケンスデザインの最適化,低磁場への応用などを紹介した。次いで登壇した東氏は,「中枢神経領域のSynthetic MRI」をテーマに発表した。東氏は,Synthetic MRIについて,約6分の撮像時間でT1,T2,プトロン密度などの画像を取得できる技術であると説明。画質が課題であるFLAIRについても,ディープラーニングにより改善が図られていると報告した。3番目に登壇した工藤氏は,「定量的磁化率マッピング(QSM):脳から全身へ」をテーマに発表した。QSMは脳神経領域での応用が進んでいるが,ほかの領域でも適応が広がっている。工藤氏は,体幹部や頸動脈,心臓,運動器などの症例画像を提示し,QSMの今後の発展に期待を示した。続いて,田岡俊昭氏(名古屋大学大学院医学系研究科革新的生体可視化技術開発産学協同研究講座)が登壇し,「拡散画像の定量性と撮像法」と題して発表した。田岡氏は,拡散画像の定量性について説明を行った上で,DTI-ALPS法による脳間質腔の水動態の描出について症例画像を交えて解説した。また,シンポジウム12の最後に発表した高橋昌哉氏〔順天堂大学医学部放射線診断学講座/ゲルベ・ジャパン(株)医療情報〕は,「CEST信号の定量と解釈」をテーマに,APTイメージングなどの撮像技術を解説した。
大会最終日の9月12日には,MRI検査への造詣が深い診療放射線技師の撮像テクニックを共有する恒例企画として,シンポジウム14「MR conditionalデバイスのMR検査〜匠の技〜」が開かれた。小野 敦氏(川崎医療福祉大学大学院医療技術学研究科医療技術学専攻診療放射線技術学)と高橋順士氏(虎の門病院放射線部)が座長を務め,5名が条件付きデバイス装着患者への検査のノウハウを発表した。最初に,鍛治尚利氏(日本医科大学付属病院放射線科)は,「条件付きMRI対応デバイス植込み患者の頭部MRI検査」をテーマに発表した。鍛治氏は,デバイス装着患者の検査において,吸収比率(SAR)を低減させるために,T1強調画像では同時励起法を用いてパラメータを設定,T2強調画像ではRADAR法を併用するといった工夫を解説した。2番目に発表した鈴木秀郷氏(虎の門病院放射線部)は,「早い,簡単,でもよく分かる!頭部MRAと心臓MRI」と題して,事前準備と頭部・心臓領域での撮像の要点を説明した。鈴木氏はあらゆる患者に対応できるように代替シーケンスを準備しておくことが重要と述べたほか,頭部領域の検査については圧縮センシング(CS)とsegmentを併用したMRAを紹介。心臓領域の検査に関しては,CS-CINEでの撮像時間の短縮,motion correctionを応用したシーケンスによる画質向上などを説明した。続いて,小見正太郎氏(北里大学病院放射線部)が,「MR conditionalデバイスを使用している患者のMRI:GE社MRI装置を用いた頭部および腹部の検査について」と題して発表した。小見氏は,デバイス装着患者の検査のポイントについて,SARとB1+rmsへの理解が重要だと述べたほか,腹部の場合は1.5T装置で実施する方がよいといったことを挙げた。次に,「MR conditional デバイス挿入患者における当院の取り組み」をテーマに,高橋沙奈江氏(杏林大学医学部付属病院放射線部)が発表した。高橋氏は,頭部領域・下肢動脈における撮像のポイントについて,SARにかかわるパラメータや,パラメータによって変化するコントラストなどを説明。MRI対応デバイスが増えている状況を踏まえて,撮像条件の厳しいデバイスを想定したプロトコールづくりが大事だと述べた。最後に登壇した坂井上之氏(東千葉メディカルセンター放射線部)は,「頭部と整形外科領域のMRI検査」と題して,検査での注意点などを解説した。坂井氏は,施設で取り扱うデバイスを把握するだけでなく,他院で処置されたデバイスも想定する必要があると述べたほか,やけど対策などを紹介した。
すべてのプログラム終了後には,合同閉会式が行われた。なお,3日間では,1700名余りの登録があり,現地参加者は300名を超えた。また,初の試みであった機械同時翻訳が実用的という評価を得たほか,記念品のレゴMRIが大変好評だった。次回,JSMRM 2022(第50回日本磁気共鳴医学会大会)は,2022年9月9日(金)〜11日(日)の3日間,名古屋国際会議場(愛知県名古屋市)を会場に行われる。「MR unlimited; Towards 100」をテーマに,長縄慎二氏(名古屋大学大学院医学系研究科総合医学専攻高次医用科学講座量子医学分野)が大会長を務める。
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一般社団法人日本磁気共鳴医学会
TEL 03-6721-5388
E-mail 2021yokohama@jsmrm.jp
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