日本放射線腫瘍学会(JASTRO)が第34回学術大会に先立ちオンラインプレスセミナーを開催
学術大会のポイントやコロナ禍における放射線治療のメリットを解説
2021-9-17
第34回学術大会のトピックスなどが紹介された
日本放射線腫瘍学会(JASTRO)は,2021年11月にオンライン開催予定の第34回学術大会のポイントや,コロナ禍における放射線治療のメリットなどを解説するオンラインプレスセミナーを2021年9月15日(水)開催した。
プレスセミナーでは,理事長の茂松直之氏(慶應義塾大学医学部放射線科学教室教授)が挨拶に立ち,放射線治療の現状とJASTROの活動について紹介した。茂松氏は,前立腺がん治療を例に近年の放射線治療における革新的な進歩について解説したほか,JASTRO会員数が最近の18年間で倍増し,認定施設の均てん化も進んでいることなどを報告した。
次に,第34回学術大会のテーマやポイントについて,大会長を務める根本建二氏(山形大学理事・副学長)が解説した。第34回学術大会は,「為せば成る! 放射線腫瘍学の新たな展開に向けて」をテーマに,2021年11月12日(金)〜14日(日)にオンライン(ライブ配信)で開催され,11月15日(月)〜2022年1月15日(土)にオンデマンドで配信される。一般演題470演題,シンポジウム・パネルディスカッション22セッション,教育講演10演題,海外の演者を含む招待講演10演題などが予定されているほか,学術大会に先立つ10月23日(土)に,市民公開講座「コロナ時代の最先端がん放射線治療−短期・低侵襲放射線治療の最前線−」が開催される。
根本氏は,今回の学術大会で注目のトピックスとして粒子線治療や超高線量率放射線照射(FLASH)を挙げ,特にFLASHについては,超高線量率(>40Gy/秒)の照射により腫瘍周囲の正常組織へのダメージが大幅に軽減することから,将来,ゲームチェンジャーとなり得る技術ではないかと述べ,シンポジウムでの発表に期待を示した。また,そのほかのトピックスとして,COVID-19パンデミック下の放射線治療に関するシンポジウムや,仙台医療センターウイルスセンター長の西村秀一氏による特別講演を予定するほか,放射線治療との併用で効果を上げている免疫チェックポイント阻害剤や治療における意思決定などについて議論する場が設けられている。さらに,東京電力福島第一発電所事故から10年が経過したのを機に,事故当時,放射線のプロとして放射線治療医や診療放射線技師がどのように対応したのかを振り返るシンポジウムなどが開催予定であることが紹介された。
続いて,広報委員会副委員長の中川恵一氏(東京大学医学部附属病院放射線科総合放射線腫瘍学講座特任教授)が「コロナに強い放射線治療」と題して講演を行った。中川氏は,コロナ禍でがんの外科手術件数が減少する中,通院回数が少なくてすむことなどから,東京大学医学部附属病院などでは放射線治療の件数が増加していることを紹介した。一方,JASTROが健康成人を対象に2021年5月に行ったインターネット調査では,放射線治療に関する正しい知識がいまだ不十分なことが示され,さらに「(治療の)イメージがつかなくて怖い」とする回答が増加していたことを挙げ,広報活動の必要性を指摘した。また,乳がん患者を対象に行った調査では,放射線治療に誤ったイメージを持つ人が多い半面,放射線治療を実際に受けると「治療前に思っていたより楽だった」と感じる人が4割超との結果が得られたとした。さらに,中学・高校の学習指導要領に「がん教育」が明記されるなど,子どもに対するがん教育が進みつつある中,JASTROは学校でのがん教育用教材としてアニメーションを制作,高校への配布を予定していることなどが紹介された。
最後に,専務理事の宇野 隆氏(千葉大学大学院医学研究院副研究院長/画像診断・放射線腫瘍学)が,「新しい放射線治療について」と題して講演を行った。宇野氏は,まず2021年6月に実施した第5回JASTRO COVID-19全国実態調査結果(238施設)の一部を報告した。その結果から,放射線治療開始の延期などはほとんど見られないものの,装置購入予定や定期点検・修理への影響が継続していること,また寡分割照射が依然として積極的に採用されていることが明らかになったとした。さらに,COVID-19感染発生状況については,2021年3月以降,職員の感染は少ないものの,患者の感染は増減を繰り返していることが示されたとした。新しい放射線治療については,遠隔転移に対する高精度放射線治療や4D-CT Planning,光学的患者モニタリングシステムなどを紹介。加えて,放射線治療技術・装置の進歩におけるキーワードとして「動き・変形への対応」を挙げ,適応放射線治療(ART)や即時適応放射線治療(on-line ART)などが有望な治療法になるとの期待を示した。
●問い合わせ先
公益社団法人日本放射線腫瘍学会事務局
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第34回学術大会 http://www.congre.co.jp/jastro2021/