量研とアトックスが,認知症検査などを目的とした世界初のヘルメット型PET「Vrain」を発表
2022-1-20
世界初のヘルメット型PET「Vrain」
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(量研)と(株)アトックスは2022年1月18日(火),世界初となるヘルメット型検出器を採用したPET「Vrain」を発表した。同日には,量研(千葉市)において,記者発表会を開催。日本発の独創的な装置の特長を関係者がアピールした。
Vrainは頭部専用のPETで,アルツハイマー型認知症の前段階である軽度認知障害(MCI)をはじめ,脳腫瘍,てんかんなどの検査を想定している。半導体検出器を採用しており,世界最速レベルとなる245psのTOF時間分解能を誇る。検出器の配置を従来のリング状ではなく,放射線検出効率/検出器数に優れる半球状にレイアウトし,直径28cmのヘルメット型とした。これにより,従来の1/4〜1/5程度となる少ない検出器数で頭部を覆うことができ,コストを大幅に削減した。価格は従来装置の半分程度になるという。また,寝台の代わりにイスを使用したことで,着座した姿勢で検査できるようにするとともに,コンパクト化を図れ,一般的なPET/CTと比べ設置面積を1/5程度にできた。さらに,PET/CTではなくPETとしたことにより,低被ばくでの検査を可能にしている。販売先は大学病院などがメインとなる。
記者発表会では,量研から量子生命・医学部門部門長の中野隆史氏,量子生命・医学部門量子医科学研究所イメージング物理研究グループリーダーの山谷泰賀氏,量子生命・医学部門量子医科学研究所主幹研究員の高橋美和子氏,アトックスからは取締役社長の矢口敏和氏,専務取締役の上田 諭氏,事業開発部頭部PET開発室長の山下大地氏が出席した。
最初に挨拶した量研の中野氏は,量研の前身である放射線医学総合研究所では1979年に日本初のPETを開発したと説明。PETは欧米企業のシェアが高いものの量研は現在も開発を行っていると述べた。その上で,現状PETはがん検査が中心であるが,今後は認知症検査の需要が高まるとし,今後も社会実装をめざした研究を進めていくとまとめた。また,アトックスの矢口氏は,Vrainは2015年から量研と開発を行い,7年の歳月をかけて製品化したと述べた。そして,認知症の診断などへの応用が期待されることを踏まえ,Vrainにより社会に貢献したいと力を込めた。開発に取り組んだ山谷氏は,初期の試作機開発の映像を交えて,Vrainの技術的特長を説明。高橋氏がVrainで撮像した脳の画像を提示し,黒質や赤核など従来PETよりも微細な構造を描出できているとの評価結果を解説した。さらに,アトックスの山下氏は,導入施設へのサポート体制などを紹介した。
記者発表会の最後に中野氏は,Vrainは世界最高レベルの画質であり,脳機能など新たな知見をもたらす可能性があるとし,後追いではない独自,かつ世界最先端の装置であると述べた。さらに,中野氏は,アトックスとともに製品化の壁などリスクを乗り越えて製品化することができたと話し,国立研究開発法人としての成果であることを強調した。
●問い合わせ先
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構
経営企画部広報課
TEL 043-206-3026
E-mail:info@qst.go.jp
(株)アトックス 事業開発部 頭部PET開発室
TEL 03-6758-9004
E-mail:atox-pet@atox.co.jp
https://www.atox.co.jp/
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