アマゾン ウェブ サービスなど,ブロックチェーンを用いた治験モニタリングでドラッグラグ,ドラッグロスの解消をめざす

2022-11-14

ヘルスケアIT

医療DX


世界初の事例となるブロックチェーンを用いた治験モニタリングが稼働(写真右から,宇佐見 潮氏,上野太郎氏,小沼淳一氏,遠山仁啓氏)

世界初の事例となるブロックチェーンを用いた
治験モニタリングが稼働
(写真右から,宇佐見 潮氏,上野太郎氏,
小沼淳一氏,遠山仁啓氏)

アマゾン ウェブ サービス(同)は,日本におけるヘルスケア分野のデジタルトランスフォーメーション(DX)に向け,事業展開を強化している。2022年11月8日(火)には本社(東京都目黒区)において,ヘルスケア分野における最新事例の記者説明会を開催。同社が提供するクラウド「Amazon Web Services(AWS)」のブロックチェーンサービス「Amazon Managed Blockchain」を用いて,世界初の治験モニタリングのプラットフォームが本格的に稼働したことを紹介した。

この治験モニタリングのプラットフォームは,(株)サスメドが手がける。同社の臨床試験システム「SUSMEDシステム」にAmazon Managed Blockchainを採用し,治験モニタリングの効率化を支援する。従来の治験では,治験コーディネーターによるワークシート作成・データ転記作業や,モニターによる症例報告書の原資料との照合作業に時間を要しており,これがドラッグラグ,ドラッグロスの要因の一つと考えられている。SUSMEDシステムでは,Amazon Managed Blockchainを用いて高いセキュリティを実現しており,データの改ざんを防止して真正性を確保した上で,これらの業務を大幅に削減して効率化。上市までの時間の短縮化できる。製薬企業はコスト削減が可能となるほか,医薬品開発業務受託企業にとっては対応できる治験の数が増え,データ品質の改善も図れるというメリットがある。

Amazon Managed Blockchainにより真正性を確保し,治験モニタリングを効率化(サスメド資料)

Amazon Managed Blockchainにより真正性を確保し,治験モニタリングを効率化(サスメド資料)

 

SUSMEDシステムを採用して治験モニタリングの効率化に取り組んでいるのが,アキュリスファーマ(株)だ。同社は,神経・精神疾患領域に特化した製薬企業として2021年に設立されたスタートアップ。2022年6月にサスメドとブロックチェーンを用いた治験モニタリングの契約を締結し,新薬の開発を進めている。

記者説明会には,アマゾン ウェブ サービス執行役員パブリックセクター統括本部長の宇佐見 潮氏,同社事業開発部シニア事業開発マネージャーの遠山仁啓氏,サスメド代表取締役の上野太郎氏,アキュリスファーマ臨床開発部部長の小沼淳一氏が出席した。最初に登壇した宇佐見氏は,ヘルスケア分野における同社の取り組みについてプレゼンテーションを行った。宇佐見氏は,セキュリティ対策やプライバシー保護の重要性,データの価値の最大化,個別化医療といったヘルスケア分野の課題に言及した上で,デジタル化とクラウドの利活用を加速させ,ステークホルダーとともに患者や市民へより良い医療,ヘルスケア体験を提供したいと述べた。また,遠山氏からは,ヘルスケア分野における同社のこれまでの実績が紹介された。記者説明会前日の11月7日には,藤田医科大学がAWS上にPHR(Personal health Record)基盤を構築したことが発表されるなど,大学やナショナルセンター,地域中核病院,医療機器メーカーがAWSの採用を進めている。遠山氏はこの背景にあるAWSの技術的アドバンテージを説明した。

宇佐見 潮 氏 (アマゾン ウェブ サービス執行役員パブリックセクター統括本部長)

宇佐見 潮 氏
(アマゾン ウェブ サービス執行役員パブリックセクター統括本部長)

 

遠山仁啓 氏 (アマゾン ウェブ サービス事業開発部シニア事業開発マネージャー)

遠山仁啓 氏
(アマゾン ウェブ サービス事業開発部シニア事業開発マネージャー)

 

アマゾン ウェブ サービスのヘルスケア分野の取り組み(アマゾン ウェブ サービス資料)

アマゾン ウェブ サービスのヘルスケア分野の取り組み(アマゾン ウェブ サービス資料)

 

一方,SUSMEDシステムにAWSを採用した上野氏は,治験など臨床試験の開発費が高騰しているという課題を指摘した上で,耐改ざん性,耐障害性,プロセスの効率性,記録の透明性を確保できるブロックチェーンにより,時間とコストを削減して効率化が図れることを強調した。さらに,アキュリスファーマの小沼氏は,治験モニタリングにブロックチェーン技術を採り入れる医薬品開発の効率性が向上し,ドラッグロスの解消に寄与できると述べた。

上野太郎 氏 (サスメド代表取締役)

上野太郎 氏
(サスメド代表取締役)

 

小沼淳一 氏 (アキュリスファーマ臨床開発部部長)

小沼淳一 氏
(アキュリスファーマ臨床開発部部長)

 

日本では,政府がDXによる医療の効率化や質の向上を図るための基盤整備を進めることとしており,ヘルスケア分野でのデジタル技術の研究開発,利活用は重要な成長戦略となっている。今回紹介された事例のように,クラウドやブロックチェーン技術は,ヘルスケア分野のDXを加速させるカギを握っていると言えるだろう。

 

●問い合わせ先
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
https://aws.amazon.com/jp/

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