ローコード開発によるDX事例が集結した「Claris カンファレンス 2024」が開催
2024-11-19
医療関連のセッションも多数設けられた
Clarisカンファレンス2024
Claris FileMakerやClaris Connectのユーザーが集う「Claris カンファレンス 2024」が,2024年11月13日(水)〜15日(金)の3日間,虎ノ門ヒルズフォーラム(東京都港区)で開催された。ローコード開発プラットフォームとして実績を持つFileMakerや,それらと連携してワークフローを自動化するサービスであるClaris Connectなどの開発のヒントや成功事例を紹介する多彩なセッション,Clarisパートナーによる展示会,FileMakerなどの困りごとの相談を受け付けるClaris Barなど多彩なイベントが設けられた。13日に行われたキーノートセッションでは,プロダクトマーケティングおよびエバンジェリズム担当ディレクターのアンドリュー・ルケイツ氏が,「日本はClaris社にとってもFileMakerにとっても重要な市場だ」と述べ,小田急電鉄(株)などで拡大する内製化システムによるDXへの取り組みを紹介した。
医療ヘルスケアの領域では,メディカルセッションとしてランチョンを含めて7つのセッションが設けられた。
M-1「医療現場のシステム担当者が教える内製開発の極意〜独りよがりのアプリにしないために〜」では,松波メディカルソリューション(株)チーフ・エンジニアの深澤真吾氏が講演した。岐阜県羽島郡笠松町の松波総合病院は,iPhone800台を導入し,FileMakerプラットフォームで構築した診療支援システム「Clinical Support System(CSS)」と電子カルテと連携した運用を行っている。深澤氏は,病院システムの内製開発を担当する中で,多くのカスタムAppの制作依頼がある一方で,使われないものも数多くあり,“独りよがり”のカスタムAppにしないためには,現場のニーズを把握し本当に困っている課題を解決できるアプリを開発すること,既製品があるものはつくらない,そしてアプリによる効率化だけでなくその先の業務改善を見極めることが重要だと述べた。
M-2「アジャイル開発と歩んだバイオバンク事業の10年:国立長寿医療研究センターの医療DX成功秘話」では,同センターバイオバンクの渡辺 浩氏と山下小百合氏が講演した。バイオバンクでは,2012年から生体試料の保管や関連する臨床情報の統合的な管理を行うバイオバンク情報管理システム(BIS)をFileMakerプラットフォームで構築している。渡辺氏は,10年以上安定稼働を続ける理由として,モジュール型の構成,そしてアジャイル開発を挙げ,FileMakerプラットフォームの採用がこれを実現したことを紹介した。同センターでは,パートナー(ジュッポーワークス)とデータ管理室などのスタッフを中心にした内部の開発体制を取っており,この両輪によって外部の環境の変化や内部の要望に柔軟に対応している。山下氏からは,内製化によってスタッフが構築しているバイオバンクのデータ活用のための「業務用カタログ作成アプリ」の概要が報告された。
M-3「国が推し進める医療標準化『医療DX』とHL7 FHIRへの対応」では,(株)エムシスの代表取締役である秋山幸久氏が講演した。2024年の診療報酬改定で医療DX推進体制整備加算」が新設され,施設基準としてオンライン資格確認,電子処方箋,電子カルテ情報共有サービスなどを利用できる体制の構築が挙げられている。秋山氏は,電子カルテ情報共有サービスで必要となる3文書(健康診断結果報告書,診療情報提供書,退院時サマリ)6情報(傷病名,感染症,薬剤禁忌,アレルギー,検査,処方)とHL7 FHIRへの対応について,FileMakerでの診療情報提供書作成を例に解説し,併せてデータ連携ツールである「AD_Connector」についても紹介した。
M-4「我々はなぜ Claris FileMaker 利用を断念したのか〜先人の例に学ぶか『うまくいかない』を回避するポイント〜」について,(株)DBPowers代表取締役の有賀啓之氏と社会福祉法人楡の会クリニックこころの相談室室長の岡部善也氏が登壇した。札幌市で医療と福祉を合体した施設で障害者支援を行っている楡の会では,複数の事業所にまたがる利用者のさまざまな情報を統合的に参照可能なシステムを,岡部氏がExcelを使ってカスタムアプリとして作成し利用していた。さらなる利便性の向上を図るべく,利用者の情報を一元管理しレイアウトの変更も柔軟に可能なFileMakerへの置き換えを進めたが,結果として開発体制や費用対効果などの点で断念した経緯を説明した。岡部氏は,経営層の理解と予算確保(ライセンス数),開発体制(岡部氏一人だけ),対象とする業務範囲の実際の現場のニーズとの食い違い(そこまでの情報共有が望まれていなかった)などが断念するポイントとなったと述べた。
M-6「iPadで誰も取り残さない医療を実現する。」では,東京都中野区と杉並区で3つの調剤薬局を運営する株式会社なごみ薬局の代表取締役である渡邊 輝氏が登壇した。「患者さんを心から元気にしたい」という理念の下,その理念の実現のためにFileMakerとiPadを使って,調剤業務のみならず在庫管理,財務,労務管理からリスクマネジメントまでのシステムを独自に開発してきた。渡邊氏は,コンピュータが実現することは距離と時間を超越することで生産性を改善することだと述べ,店舗間や在宅患者との距離,店舗内の人と人との距離(FaceTimeやオンラインでの会議やコミュニケーション,オンラインでのリアルタイムの在庫情報の共有など),時間ではQRコードの読み込みや保管場所の検索,在庫の自動計算などによって削減を図ってきたことを紹介した。
M-5「医療機関の業務効率化:FileMakerによる遠隔医療データの全自動処理と診断補助機能・来院時行動助言機能」では,豊橋ハートセンターの色川桂輔氏が植込み型心臓電気デバイス(CIEDs)および睡眠領域における持続陽圧呼吸療法(CPAP)の遠隔モニタリングデータの全自動処理について講演した。色川氏は,メーカーごとに異なるサイトに保存されているCIEDsの遠隔モニタリングデータを一括で取得し,診療データを抽出してローカルに保存するシステム(REVOLVER)を開発した。これをさらに進めて,データの評価,判別をシステム側で行い,その重要性を「鑑別」「忘罪 / 要確」「許容」「喚起」「提案」の5つに大別して提示することで,医療スタッフの確認の負担を軽減する診断補助機能まで開発したことを報告した。色川氏は,これによってCIEDsやCPAPの遠隔モニタリングの業務が効率化できたと述べた。
TXP Medical(株)のランチョンセミナー(L-8)として行われた「Claris FileMaker がもたらす救急医療DX」では,同社代表取締役で医師の園生智弘 氏が座長を務め,TXP MedicalのNEXT Stage ER(NSER)を導入する済生会横浜市東部病院救命救急センターの風巻 拓氏と信州大学医学部附属病院高度救命救急センターの上條 泰氏が,NSERと電子カルテの連携やドクターヘリでの情報収集の活用事例を報告した。
展示会にはパートナー企業を中心に20社が出展した。出展社は次の通り。(株)イエスウィキャン,(株)寿商会,(株)ジェネコム,(株)テクニカル・ユニオン,SB C&S(株),(株)サポータス,Vonage Japan(同),サイバートラスト(株),スターティアレイズ(株),(株)スプラッシュ,(株)DBPowers,(株)Too,パットシステムソリューションズ(有),(株)アイ・アンド・シー,(株)イメージワン,(株)ウィズダム,(株)国際協力データサービス,(株)ジュッポーワークス,(株)バルーンヘルプ,Beezwax Datatools, Inc.。医療関連では,イメージワンが,レセプト請求ファイルと会計データを一元管理して経営指標を見える化する医療経営管理システム「ONE Viewer」を展示した。
●問い合わせ先
Claris Engage Japan 事務局
(株式会社FIELD MANAGEMENT EXPAND内)
E-mail claris_conference_japan@claris.com