インテュイティブサージカル,第5世代となる「ダビンチ 5 サージカルシステム」を発表
—力覚フィードバックや高解像度3Dビジョンによりアウトカムや手術効率を向上
2025-6-13

フラッグシップモデルとなる
第5世代の「ダビンチ 5 サージカルシステム」
インテュイティブサージカル(同)は2025年6月9日(月),手術支援ロボット「ダビンチサージカルシステム」の第5世代となる最新モデル「ダビンチ 5 サージカルシステム」(以下,ダビンチ5)を発表し,同社東京トレーニングセンター(東京都江東区)にてメディア説明会を開催した。説明会では,同社社長の滝沢一浩氏によるプレゼンテーション,ダビンチ5の製品紹介,そしてテキサス大学MDアンダーソンがんセンター腫瘍外科の生駒成彦氏による講演とデモンストレーションが行われた。

滝沢一浩 社長

生駒成彦 氏(MDアンダーソンがんセンター)
インテュイティブサージカルは1995年に米国で設立,低侵襲治療によるアウトカムの向上をめざし,ロボットを用いて内視鏡手術をサポートするダビンチサージカルシステムを開発・提供してきた。日本においては,2000年に治験を目的とした初症例が行われてから今年で25年の節目となる。国内では2009年に薬事承認を受け,現在までに800台以上の導入実績があり,36の術式が保険適用され,2850の論文が報告されている。
今回新たに発表されたダビンチ5は,治療成績の向上,ワークフローの効率化,最先端のデータハンドリングを実現する最先端のフラッグシップモデルとして,標準モデルの「ダビンチXi」やシングルポートシステム「ダビンチSP」などをラインアップするポートフォリオに加わった。ダビンチ5ではさまざまな新技術の搭載や機能強化が図られており,アウトカム向上に寄与する手術感覚を高める技術として,力覚情報をハンドコントローラへ伝える「Force Feedback」や,より視認性が向上した3Dビジョン,術中に最適な視野と快適性が得られるエルゴノミクスの向上などを実現している。Force Feedbackは力覚センサーを搭載したインストュルメントを使用することで,組織を押す力・引く力を術者が感知でき,米国の臨床試験では組織にかかる力を最大43%低減することが報告されている。また,手術ワークフローを改善するため,新たに気腹装置を統合し,コンソールのヘッドインメニューから気腹圧や電気メスの出力などを術者自身で変更できるようになった。術者の自律性向上による手術時間短縮が期待でき,米国では1000例以上の症例数を持つ医師でも,ダビンチXi使用時と比べてコンソールタイムを25%以上削減できたとのデータも示されている。このほか,遠隔地からのリモート症例見学が可能な「Telepresence」や客観的な手術データを取得できる「Case Insights」,3Dシミュレータ「SimNow 2」で構成される「My Intuitive+」が提供される。国内では2025年7月より納入を開始する予定。
説明会で事業概要や展望についてプレゼンテーションを行った滝沢社長は,国内における最新の取り組みも紹介した。2025年4月には順天堂大学医学部附属順天堂医院と日本初の「Total Program Observation Site」の立ち上げについて基本合意し,同院におけるダビンチ手術プログラムのさらなる推進とともに,ほかの医療機関や医療従事者がダビンチ手術プログラムを直接的かつ包括的に学ぶ機会の提供が行われる。また,近年,サーティフィケーション取得を希望する医師が急増していることから,トレーニング需要に対応するため,未来医療国際拠点「中之島クロス」(大阪市北区)に国内4番目となるトレーニングセンターを新設する。
生駒氏は,「ヘルスケアシステムにおけるダビンチの役割と期待」と題して,医療課題の解決に向けてダビンチが果たす役割や,臨床での使用経験を踏まえダビンチ5によりもたらされる価値について講演した。近年注目されているValue-based Health Care(バリューに基づく医療)のアプローチでは患者に寄り添ったバリューの提供が重要だと述べた生駒氏は,患者本位のバリューやコストに着目した研究を紹介。ロボット手術では,胃切除や膵切除の合併症を軽減して入院コストを削減できることや,患者にとっても通院費や治療による収入減などトータルコストを抑えられることが報告されているという。さらに,病院にとっては利益だけでなく,患者満足度向上や研修医・外科医を集めるといった点でも大きなバリューを生んでいると述べた。
MDアンダーソンがんセンターでは2025年5月にダビンチ5を導入し,生駒氏はこれまでに10症例を執刀している。生駒氏は手技で実感したメリットとして,解像度の向上に加え電気メス使用時には排煙装置により視野を確保できることや,鉗子交換時には鉗子が挿入される位置が画面上に表示され,そのとおりに鉗子が挿入されるため,スムーズかつ安全に操作できることなどを挙げた。そして,このような細かな改善の積み重ねが手術時間の短縮につながっていると述べ,膵頭部十二指腸切除術においては,ダビンチXiで執刀した直近症例(6症例)と比べ,ダビンチ5(4症例)では手術時間を約1時間半短縮でき,特に難易度の高い工程の時間が顕著に短縮していることを紹介した。
また,Case Insights やSimNow 2の有用性についても言及し,Force Feedbackなどとあわせて教育に活用することで,実際に手術を行う前に高いレベルでトレーニングができ,手術時間の短縮,合併症軽減による医療コストの削減,患者の早期社会復帰の支援につながるだろうと述べた。

ダビンチ5の新たな機能を中心にデモンストレーションで紹介

力覚情報を術者に伝える「Force Feedback」は3段階で調整可能

気腹圧や電気メスの出力などを術者自身でコントロールでき,手術ワークフローを改善

鉗子が挿入される位置が画面上に表示され,スムーズで安全な手技を支援

エルゴノミクスが向上したコンソール
●問い合わせ先
インテュイティブサージカル合同会社
www.intuitive.com/ja-jp