フィリップス,国際調査レポート日本版の発行を記念し災害時医療をテーマにプレスセミナーを開催
2025-10-8

FHI 2025日本版発行を記念し,
災害時医療をテーマにプレスセミナーを開催
(株)フィリップス・ジャパンは,世界の医療従事者・患者を対象に実施した意識調査レポート「Future Health Index 2025 - Building trust in healthcare AI - Perspectives from patients and professionals」(以下,FHI 2025)の日本版を2025年7月に発行し,これを記念して9月30日(火)にフィリップス・ジャパン本社(東京都港区)にてプレスセミナーを開催した(後援:オランダ王国大使館,一般社団法人電子情報技術産業協会)。
フィリップスでは,医療のデジタル化やAIの社会実装に関する課題と可能性を継続的にリサーチし,提言をまとめたFuture Health Indexを毎年発行している。2025年はヘルスケアAIに対する信頼の構築をテーマに,世界16か国の医療従事者1900人以上と患者1万6000人以上を対象に調査が実施された。プレスセミナーでは,フィリップス・ジャパン代表取締役社長のジャスパー・アスエラス・ウェステリンク氏がFHI 2025のダイジェストを報告するとともに,「災害時にも止まらない医療を」をテーマに,フィリップ製品の貢献を紹介するプレゼンテーションと2題の講演,パネルディスカッションが行われた。
はじめにウェステリンク氏が挨拶に立ち,フィリップスの概要とFHI 2025のダイジェストを紹介した。フィリップスでは,日本の医療課題である高齢化や労働力不足,医療費増大などを,AIやデジタル技術で解決することをめざしている。FHI 2025では,日本の医療従事者・患者合わせて1000人以上に調査を実施した。調査では,日本の医療従事者の多くが,患者データが不完全・アクセス困難により診療時間が圧迫され,事務作業の負担により患者と接する時間を増やせていないと回答している一方で,AIの導入が適切な医療の迅速な提供や運用効率の向上につながると期待していることが明らかとなった。ただし,医療従事者の60%がAIによって患者の転帰が改善すると考えているのに対して,患者は33%と低く,世界平均の59%を大きく下回っていることも報告された。そして,患者がAIに対する信頼を築くには,医療従事者からの説明がカギとなるとの結果が得られたことを受け,ウェステリンク氏は,「医療従事者が患者に説明する時間を確保する必要がある。そのためにフィリップスではあらゆるステークホルダーとの協力を推進しており,コラボレーションを図ることでAIを真に活用し,より多くの人々により良いヘルスケアを提供できると考えている」と述べた。
また,プレシジョン・ダイアグノシス事業部長の門原 寛氏は,「Philips製品の災害医療への貢献」として,災害発生時の救護所や医療施設,地域において貢献できるソリューションを紹介した。その一つとして取り上げたBlueSealマグネット搭載MRIは,ヘリウム密閉型,軽量化,クエンチ配管不要などにより,上層階への設置による浸水被害の低減,災害時の再起動の迅速化などに貢献することを説明した。また,グローバルではトレーラーに搭載したMobile MRIとしても運用されており,被災地などへ検査室自体を運びMR検査を提供できる可能性を示した。

ジャスパー・アスエラス・ウェステリンク 氏
(代表取締役社長)

門原 寛 氏(プレシジョン・ダイアグノシス事業部)
医療現場からの報告では2名が登壇し,災害時医療の経験や対策についての講演が行われた。最初に,日本赤十字社医療事業推進本部参事官 兼 事業局救護・福祉部主幹の植田信策氏が「災害時医療について」として,Anticipatory(予測型行動)の実践/社会実装について講演した。植田氏は,石巻赤十字病院勤務時に東日本大震災を経験しており,その際の経験も踏まえて災害耐性に優れた地域医療の共創に取り組んでいる。災害関連死を防ぐための避難所の設置目標「TKB48」(トイレ,キッチン,ベッドを48時間以内に設置)を提唱し,現在はその取り組みに対する交付金も整備されている。植田氏は,医療機関が平時から連携し地域医療の標準化を図ることや,変化する医療ニーズに対応することが,災害耐性を高めるために重要であると述べた。さらに,日本赤十字社の戦略や,医療機器を止めないための企業との連携の必要性を紹介した上で,すべてのシステムを動かすのは人間であると述べ,そのためのツールとしてAIやデジタルを活用することも重要であると締めくくった。
また,春日井市民病院院長の成瀬友彦氏は,同院のBCP対策を紹介した。同院は地域中核災害拠点病院として,南海トラフ地震を想定したBCP対策を進めている。ライフラインの整備や,BlueSealマグネット搭載MRIの採用,防災意識向上のための講義や災害訓練を実施するほか,災害発生時には情報の集約や分析,共有の遅れが初動の遅れや判断ミスにつながることから,災害対応DXを進めている。発災時には被害や傷病者情報,職員の状況をGoogleフォームやLINEを使って集約,データベース化し,見やすい形に加工して共有する仕組みを構築した。さらに,情報の緊急度と重要度の評価,対応策の提案などを行うAI解析機能を実装し,これら災害対応DXの効果を災害訓練で確認していることを紹介した。成瀬氏は,DXとはデジタル機器やAIを導入することではなく,組織全体の変革を指すことを強調し,同院でも引き続きDXに取り組んでいくと述べた。
最後に,同社公共政策部長の岩田 潤氏の進行のもと登壇者によるパネルディスカッションが行われ,災害時の地域医療における人員確保や,病院や企業の垣根を越えた情報共有の重要性などについて意見が交わされた。

植田信策 氏(日本赤十字社)

成瀬友彦 氏(春日井市民病院)

登壇者と駐日オランダ王国特命全権大使ヒルス ベスホー・プルッフ氏(左から3番目)のフォトセッション
●問い合わせ先
(株)フィリップス・ジャパン
TEL 0120-556-494
www.philips.co.jp/healthcare